第20話 永田町の戦い

 密室での激闘の後、田熊はなんとか黒井の組織の計画を阻止し、脱出することに成功する。しかし、彼の追跡を振り切った黒井と美咲は、次なる段階に進むべく既に動き始めていた。その目的地は、永田町。日本の政界の中枢であるこの場所で、彼らは国家を揺るがす壮大なテロ計画を進めていた。


 数日後、田熊は「影の組織」の残党から極秘の情報を入手する。それは、黒井が新たに設立した組織が永田町の要人を狙ったテロを計画しているというもので、目的は日本の政治システムを混乱させ、自らの支配を強めることだった。黒井は、長年の裏社会での経験と暗殺の技術を駆使し、まるでチェスのように政界のキーパーソンを排除していく考えだったのだ。


 田熊は、警察や防衛省の協力を取りつけると共に、かつての仲間たちに声をかけ、黒井のテロ計画を阻止するため、永田町へと急行する。しかし、到着した時には既に黒井の手が回っており、街は緊迫した空気に包まれていた。重要な議員たちが次々と行方不明になり、テロ計画が徐々に現実のものとして動き出していたのだ。


 永田町の一角、厳重な警備が敷かれた場所に潜入した田熊は、再び黒井と美咲の姿を目にする。黒井は議会の要所を押さえ、まるで国全体を人質に取るような手口で脅迫を行っていた。田熊は、黒井が掲げる「新しい世界」の裏に、単なる支配欲と復讐心が潜んでいることを確信する。そして、彼がかつて信頼した仲間が、このような危険な人物に変わり果てたことに苦悩するが、同時に彼を止める決意を新たにする。


 美咲が田熊に向き直り、「田熊、これが私たちが目指す未来よ。あなたももう、過去の呪縛から解放されてもいい頃でしょう?」と語りかけるが、田熊は冷静に言い放つ。「俺にはお前たちのやり方は理解できない。過去がどれほど暗くても、それを乗り越えるのが俺の道だ」と。


 議会の廊下で、田熊と美咲は激しい銃撃戦を繰り広げるが、田熊は彼女の動きの癖や技を熟知しており、少しずつ優位に立っていく。一方で、黒井は議会の屋上で最後の準備を進め、重要な取引相手と通信しながら、テロの最終段階を見据えていた。


 最後の対峙が訪れる。田熊が黒井に迫ると、黒井は嘲笑を浮かべ、「田熊、お前にはわからないだろうが、この国を変えるのは、このような『革命』しかないのだ」と叫ぶ。田熊はそれに対し、「その方法では、結局お前も破滅を招くだけだ」と返し、二人は激しい戦いを繰り広げる。


 最終的に、田熊は黒井を制し、彼の企てたテロ計画を食い止めることに成功するが、黒井は決して信念を曲げることなく、冷ややかな目で田熊を見つめていた。「お前がいなければ、俺の計画は完璧だった…だが、それでも俺の意思は次の世代に引き継がれるだろう」と、謎めいた言葉を残し、息絶える。


 事件の全貌が明らかになると、永田町は再び平穏を取り戻す。しかし、田熊はかつての仲間と戦わねばならなかった痛みを胸に、静かにその場を後にするのだった。彼にとって、この戦いは単なる職務の遂行ではなく、かつての絆と信頼の残酷な終焉を意味していたのだ。


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