ブラックヴァルハラ 10万
鷹山トシキ
第1話 マサカリ
秋田県の静かな山間の集落で、奇妙な事件が発生する。集落近くの野外キャンプ場で若い男性の遺体が発見されたのだ。遺体には外傷はなく、警察は一酸化炭素中毒かと考えたが、やがて検出されたのは硫化水素ガスだった。捜査にあたったのは秋田県警の組織犯罪対策部、特に武器密売を専門とする田熊刑事だった。田熊は、被害者が武器の闇取引に関わっていた可能性を探るため捜査を進める。
捜査を進めるうち、田熊は「マサカリ」と呼ばれる密売人の存在に行き当たる。マサカリは地元の裏社会で名を知られている武器屋で、密かに硫化水素の製造に関する知識も持っていると噂されていた。田熊はこの人物に興味を抱き、集落に出入りする人々を調べ始める。
一方で、被害者が事件直前にマサカリと接触していたことが確認された。彼が「山に行けば自由に呼吸ができる」という不思議なメッセージを残していたことも分かり、田熊は謎が深まるのを感じる。
捜査を進める中で、田熊はマサカリが取引している組織が、武器のみならず硫化水素ガスを使った暗殺技術をも裏で提供していることを突き止める。やがて、田熊は組織犯罪対策部と連携し、集落の奥深くに潜む秘密の実験場にたどり着く。そこでは、野外で毒ガスを用いた実験が行われており、マサカリと彼の組織が関与していることが判明する。
田熊は、自身の命の危険を覚悟しつつも、野外の実験場に踏み込む。そこにはマサカリとその配下が待ち構えていたが、最終的に田熊は彼らを逮捕することに成功する。事件は解決したものの、山間の集落で静かに行われていた闇取引と、そこに絡む組織の影が秋田の山奥に消えた。
この事件の捜査で田熊は、自然豊かな秋田の土地が、闇の取引と密売の舞台になり得るという、恐ろしい現実に直面することとなった。
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