情熱~部下への恋

くまと呼ばれる

第1話 熱い想い

「別れてくれないか」

俺は、坂下恭介。

今、結婚5年目の妻に離婚を切り出している。

「なんで……」と、泣き崩れてしまった。当然だろう。

原因の一つは、俺の仕事への理解がないからだ。

システムエンジニアの俺は、帰りが遅いときもあれば、泊まる事もある。もちろん残業も。

今は、この様な事は減りつつあるが、ゼロにはならない。

そんな俺を『家庭を顧みて』と何度も詰る。

専業主婦の妻を養うために働いているのだ。流石につらくなってきた。

もう一つは……

「好きな人ができてしまったんだ。本当にすまない」

謝るしかない。こんな身勝手な理由で離婚しようとしているのだから。

「不倫なのね!信じられない!私と結婚してるのに!」

妻は俺を詰る。そんな妻に、

「不倫ではない。そのような関係にすらなっていない。俺が一方的に好きなんだ。きっと報われる事はないと思っている。この様な気持ちを抱えたまま、結婚を続ける事は出来ない」

俺は淡々と説明する。


そう、俺は10歳も年下の部下に恋をしてしまったのだから。

この気持ちが抑えきれない程。


妻とは、大学時代同じサークルに入っていたが、在学中は付き合う事はなく、同窓会で気が合ってそのまま結婚した。

もちろん好きだったから結婚したが、激しい恋ではない。

結婚にそんな激しい感情なんていらないと思っていた。


でも、今は違う。恋に身を焦がす、と言うのはこの事を言うのだと思った。

俺は狂ってしまったのだ。何もかも捨てたとしても、この恋だけ残ればいいと。

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