第39話
「おや? コースアウトした遠山選手が再びレコードラインへと入りましたね」
竹友の声に、
「ええ、かなり急いでいますね。それもそのはずで、勝負はもうすぐで……?」
「あれ……凄いスピードです!! 遠山選手!! 起死回生か!!」
「どけー!! どけー!!」
遠山はストレート、コーナーなどを瞬く間にクリアしていく。その超絶的ドライビングテクニックは誰もが目を見張るものだった。
遠山は何台ものノウハウが駆使する大型トラックなどを、かわしながらスピードを上げていく。
栄養ドリンクなどではなかった……。
何を隠そう強力な下剤である。
遠山が死ぬほどの便意で狂戦士と化した。
「信じられません!! なんというドライビングテクニックなのでしょう!?」
竹友は幾度もCチームの車を追い抜いて行く遠山のガヤドルを見つめた。
「何が起きたのか解りませんが……あれは常人の域を超えていますね。きっと、日本の将来ために立ち上がったのではないですかね?」
斉藤はストップウオッチを見つめると、唖然とした。
「なんと!! 時速420キロも出ています!!」
「どけーーーー!!」
遠山は早くも6周目に入り、ノウハウのペンズオイルニスモ GT-Rと一騎打ちとなった。
相手のペンズオイルニスモ GT-Rも高度なドライビングテクニックを駆使して、遠山の車をブロックしてきた。
後続の遠山には冷静さは今は皆無だった。
「死ねーーーーー!!」
遠山はアクセルを振り絞り、ペンズオイルニスモ GT-Rに後続から派手な体当たりをした。
「これは、凄いっス!! 遠山選手!! 相手をクラッシュでコースアウトにした!!」
美人のアナウンサーは驚きの声を発した。
「うーん。確かに凄いんだけど? なんか変? ま、いっか……。頑張って遠山さん!!」
藤元は神社なんかでお祓いに使う棒を振り、空を飛んで死んでしまった流谷と津田沼のところへと向かった。
「遠山さん……。頑張って」
晴美さんは気を引き締めて、遠山のガヤドルを見つめた。
「どうなってる! なんだ! あの走りは?!」
興田は満川と作業班に向かって、叫んだ。
「解りません!! でも、このままだと負けます!!」
一番年配の作業服の男は、部下の元へ向かって、ノウハウのプログラムを強化するための手順を述べだした。
「興田くん!! 何が起きているんだ!!」
角竹も真っ青な道助の手を赤くなるほど両手で握って、興田に向かって叫んだ。
「解りません!! でも、なんとかします!!」
「相手を殺すんだ!!」
道助は満川に向かって、叫ぶ。
周囲の離れた観客たちの耳にその言葉が入り、真っ青になった顔をした者たちが現れた。
遠山は6周目に差し掛かった。
相手のペンズオイルニスモ GT-Rも同じく6周目だ。
遠山がコーナーに派手に突入した。
ペンズオイルニスモ GT-Rもスローイン・ファストアウト。
「ヒール・アンド・トゥー!! ヒール・アンド・トゥー!! フルスロットル!! 上級ドリフトもこなすし!! 敵は蹴散らし……便所――――!! 便所――――!!」
遠山は便意を紛らわせるために叫んでいた。
コントロールラインはもうすぐだ。
「あっーと、遠山選手ゴーーール!!」
竹友はマイクを握りしめ、絶叫した。
「Aチームの勝ちです!! 再び奈々川首相の勝利でーーーす!!」
応援席の観客たちはA区。B区。そして、C区の歓声が瞬く間に満たしていった。
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