第22話
夜道での走行中。
白い建物が見えてきた。
教会のようだ。
「あそこも壊す……」
僕がそういうと、ヨハが首を激しく振り、
「雷蔵様~~。あそこはダメです~~」
「え……?」
ヨハの拒否が僕には信じられなかった。そんな権限はないはず。
「霧島インダストリー社に~~行きましょうよ~~」
ヨハの声に僕はすぐさま反応した。
頷くと、体の痛みが激しくなった。
僕は今度は霧島インダストリー社の敷地に向かった。
僕は、復讐心に焦燥感を煽り立てられていた。
霧島インダストリー社が見えてきた。
180階のモダンな巨大な会社を見ると、僕は地下の駐車場へと向かった。大きな建物に入るためだ。
二人のゲートキーパーが僕の顔を見ると真っ青になった。
何かを叫んでいるが、僕はアンジェたちに合図した。マカロフが火を吹くと、ゲートキーパーの一人が倒れた。マルカのアサルトライフルでもう一人が撃たれた。
地下3階へとスピードを上げていると、警備の武装したノウハウの集団が均等に前方に列をなして現れた。ヨハがその中心に不可視高速作業でロケットランチャーを撃ち放つ。
大きな爆発音の後、ノウハウがバラバラとした破片と化し宙に舞う。けれども、無事な数体のノウハウたちが撃ってきた。
耳をつんざく銃声の後に、アンジェがアサルトライフルでノウハウを一掃した。僕は、マカロフでノウハウを一体ずつ片付けていくこともできないでいた。あっという間に、付近の高級車もアンジェたちがアサルトライフルでハチの巣にしていく。
煙と火炎の中。
車から降りると、迸る痛みを気にせず正面玄関へと走った。
殺風景な地下3階の駐車場にはノウハウの残骸とほとんどの廃車だけが残った。
まるで、電気でできた嵐のように、アンジェたちの超重量の弾丸が社内を破壊していく。ロケットランチャーやアサルトライフルは強力そのもので、ガラスが割れるどころか会社の壁や柱を粉砕してしまい。内部が黒炎を噴き出している。今の時間までいる社員は、受付の人たちしかいないが、その誰もが僕のマカロフの銃弾で床に沈んでいった。
警備会社のハンドガンを手にしたノウハウがわらわらと玄関先に集まってきていた。当然、マカロフではノウハウは倒せない。
ヨハのアサルトライフルとノウハウたちのハンドガンが撃ち合った。
アンジェたちは被弾しているが、びくともしない。けど、ノウハウは違う。アサルトライフルの弾はノウハウの体を楽に貫通する。それも、45口径のライフル弾だったためだ。ノウハウが全て倒れると、僕は未だ頭を激しく焼き尽くす熱せられた血管のためエレベーターへと歩いて行った。
エレベーター内。
継続的に激しい眩暈がしてきたが、僕は目に力を入れて開けていた。
河守が入社した時のことを思い出していた。
面接で僕も立ち会い。
質問を幾つかしていても、すぐに納得する回答が次から次にでてきて、人事部長も真っ青になって驚いていた。IQが140もあると言っていた。僕は凄いと思ったが、人事部長は頭が良すぎる人物を密かに嫌っていた。だから、僕がなんとか説得をしていると、そんな中、河守が僕を見て笑っていたんだ。
河守が入社してからは、彼女が笑わない日があまりないなと、思っていると、次第に僕が標的となっていった。
彼女は何故、僕にそんなことをしているのかと、周りの人々に聞いた時があった。やっぱり出世欲があったからでは。と、周囲の重役たちに言われた。あの時の僕の戸惑いは、一体なんだったのだろう? でも、僕は晴美さんのことを考えて、日々を過ごしていたんだ。
「雷蔵様~~。もうやめましょうよ~~」
隣のヨハが心配顔をしていた。
「敵は~~今のところ~霧島インダストリー社の興田 守様だけでは~~ないですか~~。そんなにボロボロになってまで~関係ない人を~~殺さなくても~~……」
「……ヨハ……?」
僕は驚いた。
そういえば、ヨハには感情のような心のようなものが、どことなくあるみたいだ。
「ヨハ……君は一体?」
高速エレベーターが180階で止まった。
「雷蔵様!!」
突然、大きな発砲音の後、アンジェが先に倒れた。
その次はヨハとマルカ。
僕は驚いて前方を見ると、対戦車用ライフルを構えたノウハウが5体佇んでいた。
その間に三人の男と一人の女がいた。大きなフロアで、外には深海に建つかのようなビルディングが見え、部屋の中央には会議用の20人使用のテーブルがあった。
「君が雷蔵さんだね……」
この男が興田 守……だろうか?
「社長。例の件での男です」
「ふむ……」
興田 守は50代の男で、高級なスーツの小柄な体躯で白髪が目立った。その隣には老人だがどこかはつらつとした感じの長身の男がいた。
霧島インダストリー社社長の角竹 徹郎(かくたけ てつろう)だ。確か今年で71になる老人だ。
「この計画には君が死ななければ、成り立たないようだね」
角竹が言った。
「そのようですわね……」
一人の女は満川 静香。秘書のようだ。
「エレクトリック・ダンスでなければ、この国は衰退するというのに……」
もう一人の男は解らない。若い男で年齢は20代だ。
「アンジェ、マルカ、ヨハ……」
僕は倒れたアンジェたちを見た。
三人とも腹部に透明な色の液体が大量に滲み出ている。腹部を撃たれたようだ。目を瞑って身動きしない。
「君だけ、ここへ来てくれ。君が死ぬ前に少しだけ話そう」
角竹がしわがれた声を振り絞った。
僕が赴くと、
「雷蔵さん。武器は置いておいて下さいね」
美人で20代前半の満川が武器を床に置けと言った。
僕はマカロフを床に捨てると、四人のいる大きいテーブル付近へと近づいた。
「最初に聞いてみるけど、エレクトリック・ダンスでなければこの国が成り立たないのは?」
僕はアンジェたちが心配だが、大きな運命の前に欠伸がでていた。
「ふふ……。簡単だよ」
角竹が呟いた。
知らない男が前に出て、いきなり僕の腹に一発拳を入れる。僕は血を吐いて倒れた。傷口が開きだしたことと体中の激痛のために眩暈がしたが、僕はゆっくりと起き上がった。
「話してやりなさい」
角竹が知らない男を宥めた。
興田が話し出した。
「エレクトリック・ダンスっていうのは、簡単に言うと政策だ。この若い男が考案した」
興田は一呼吸置くと、
「老人のリサイクルのようなものだよ。だが、そうでもしないとこの国は滅びる。当たり前だが、人間が人間を介護するのだから金がかかる。そこでノウハウが介護に介入するわけだが、前奈々川首相のノウハウを使った老人福祉は実は金がかかるのだよ……。現奈々川首相のノウハウにスリー・C・バックアップを用いた政策は論外。莫大な金がかかるんだ……。しかし、このC区やB区は日本の発展を日々、目指さなければならない」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます