現実の女を嫌う男と学校一の美女の話
巫有澄
第1話
俺の名前は
三次元に興味がない二次元オタクの高校生だ。
はじめに言っておくが…俺は現実の女が嫌いだ。大嫌いだ!
もちろん彼女はいない。
…いや、いるな。
画面の中に!
休日は毎日自分の部屋に引きこもって、ゲーム三昧している。
ちなみに今やっているのは恋愛シミュレーションゲーム。
別称、美少女ゲームだ。
最高だな!
二次元の女の子はいつだって俺の理想を叶えてくれる。
見た目が超絶かわいいのはもちろん、性格もマジ天使!
このゲームの女の子の全てが俺の嫁。
…それに比べて現実の女はクソだな!
天然ぶってたり、腹黒で猫被ってる奴ばっかりだし、ブス女のくせにぶりっ子してる奴とかイケメン好きの面食いばっかり。
あぁ…思い出しただけでイライラしてきた。
でも、俺がそれ以上に嫌いなのが現実の男だ。
男というのはあまりも汚らわしい生き物だ。
正直、視界に入るだけで吐き気がする。
口は悪いし、態度も悪い。
そのくせ、女に対しては異常に優しい。
男がよくやる、女の前でかっこつける癖とかマジやめてほしいね。
全然かっこよくないから。
むしろキモいから。
ていうか馬鹿だよね。
現実の女のなにがそんなにいいんだか。
…とまぁ、今の話で分かっただろうけど、俺は現実の人間が嫌いだ。大嫌いだ。
でも、俺が人間嫌いになったのは俺のせいじゃない。
他の人間どもが悪いんだ。
これは少し前の話になる。
ある日の休み時間、俺はいつも通り一人で漫画を読んでいた。
すると、俺の席にクラスの女どもがやってきて、その内の一人が俺にこう言った。
「え〜?オタクくんこんなの読んでんの〜?キッモ〜!現実見ろよバ〜カ!」
…は?
突然のことに理解が追いつかなかった。
もちろんコイツと話したことなど一度もない。
…そう。
コイツは俺を貶すためだけにわざわざ話しかけてきたのだ。
すると、他の女どももそれに乗っかって…。
「そんなんだからずっとキモい見た目してんだよお前!ホント気持ち悪ぃな!」
「The・陰キャって感じだもんね〜!キャハハハ!マジウケるわ〜!」
このことがきっかけで、俺は現実の女を嫌うようになった。
それからしばらく経ったある日のこと…。
クラスメイトの女が俺に話かけてきた。
「ねぇ、肝尾くん。ちょっといいかな?」
コイツは確か…学校一の美女でクラスのマドンナとか言われてる奴だったかな?
名前は…
…ま、俺にとってはどうでもいいけど。
「なんだよ…?」
「あのね…今日の掃除当番代わってくれないかな?私、どうしても外せない用事があるの!」
用事?
そんなこと言って、どうせ友達と遊びに行くとかだろ?
…ふざけんなよ。
なんでお前なんかのために俺が自分の時間を無駄にしなきゃいけないんだよ。
あぁ、そうか。俺はナメられてるのか。
だから俺に掃除押し付けてもどうってことないってか?
「お断りだ。お前の仕事なんだから自分でやれ。そもそもなんで俺なんだ?」
「それは…」
ほらな。図星だ。
やっぱり俺のことナメてたんだな。
「じゃあな。もう俺に話しかけんなよ」
そのまま俺が帰ろうとすると、男どもが道を塞いできた。
「おい、お前。俺たちの愛莉ちゃんに何しやがった?」
「俺たちのアイドルを侮辱しといて、ただで済むと思うなよ?」
「テメェみたいなブス野郎の分際に話しかけて下さっただけでも光栄なのに、なんだその態度は!」
あぁ、やっぱりこうなるか。
本当に男どもは気持ち悪い。
もう俺の前から消えてくれ…。
その後、俺の学校生活がどうなったのかは言うまでもないが、こういった経験の積み重ねにより、俺は完全に現実を嫌うようになった。
「もうこんな時間か…。明日からまたクソみたいな日常が始まるのか…。あぁ、やだなぁ…」
今は日曜日の11時。
もうすぐ月曜日という魔の日がやってくる時間だ。
月曜日を恐れている人間は結構いるらしいが、俺のような人間嫌いの陰キャからすると、クソでしかない。
人間でギチギチの教室の中で一人ぼっちという状況は耐えられない。
さらに、女からはオタクだと馬鹿にされるし、男からは花宮を侮辱したなどと恨まれている。
あぁ…行きたくねぇ…。
なんて願いも虚しく、月曜日がやってきた。
俺は眠い目をこすりながら目を覚ます。
「チッ…。来んなよ月曜日なんか。てかもうこんな時間かよ。早く学校行かねぇとなぁ。あ、その前に今日の分のログボをもらっておこう」
俺は朝起きてすぐにソシャゲにログインする。
ちなみに俺が今ハマっているのは、猫耳美少女系ゲームだ。
「ご主人様♪おかえりだニャン♪」
「うっへへ〜♡ただいまぁ〜♡今日も超絶かわいいねぇ〜♡」(キモ顔)
このゲームにログインすると、メインヒロインの子であるアイリちゃんが毎回おかえりと言ってくれる。
この子は俺の生きがい。
あ、確か花宮の名前も愛莉だったっけ…。
好きな子と嫌いな奴の名前が同じって嫌だな。
オタクあるあるだけど、二次元の推しの名前が三次元の嫌いな奴と名前が被るっていうことがよくある。
そして、その度にめちゃくちゃショックを受ける。
嫌なこと思い出しちゃったけど、アイリちゃんのおかげでちょっとは元気出たかも。
よし、学校行くか…。
俺は家を出た。
「あー、このゲームまじで楽しいわー」
俺が歩きながらゲームの続きをしていると…。
「おい!携帯ばっか見てんじゃねぇ!前まで歩けや!」
どこの誰かも知らないおっさんが怒鳴ってきた。
誰だよテメェは…。
あぁ…こういう奴がいるから現実は嫌いなんだ…。
一気にやる気削がれた…。
そして、学校に着くと…。
「おい、肝尾拓だぞ。名前の通り、いかにもキモオタクって感じだな」
「うわっ…気持ち悪っ…。あんなのが愛莉ちゃんを侮辱したとかマジありえない…」
「よっ!The・陰キャくん!」
こんな風に、俺にとって悪口や罵倒は日常だ。
当たり前すぎてもう慣れた感じもするが、その度に現実が嫌になる。
そして、ふと横を見てみると…。
「「「花宮さん!好きです!俺と付き合って下さい!」」」
花宮が男3人から同時に告白されていた。
すると花宮は言った。
「ごめんなさい。私、気になる人がいるの」
「「「ガーン!」」」
男どもはあっけなくフラれた。
ざまあみろ。
…それにしても花宮に気になる人がいるのか。
ま、どうでもいいけど。
俺が教室に行こうとすると…。
「あ!肝尾くん!」
なんと花宮に話しかけられた。
コイツ、前のこと覚えてないの?
「愛莉ちゃん…なんで肝尾なんかに話しかけんの?」
「アイツ、前に愛莉のこと侮辱したじゃん」
「クソッ!なんであんな奴が俺たちのアイドルの愛莉ちゃんと…!」
「…何?」
「あのね…今日の放課後時間ある?もしあったら屋上に来てくれない?」
「えぇ…?俺早く帰りたいんだけど…」
「お願い!5分もかかんないから!」
「そう…?ならいいけど…」
「本当に?ありがとう!」
花宮の奴、急にどうしたんだ?
― 放課後 ―
俺は花宮に言われた通り、屋上へ向かう。
そこには花宮がいた。
「あ!肝尾くん!本当に来てくれたんだ!」
なんだコイツ…。
俺が来ないとでも思ってたのかよ…。
まぁ、本当は行きたくなかったけどさ…。
「…で、なんの用?」
「うん…。実はちょっと話があってね…」
クラスメイトの女子から屋上に呼び出される。
これはラブコメでよくある、告白とかの恋愛イベントのフラグである。
でも、俺は花宮に好かれる行為をした覚えはないから多分違うだろう。
なら、なんだろう?
そして、花宮は言った。
「あのね…肝尾くん。もしよかったら…私と付き合ってみない?」
「…はぁ!?」
嘘だろ!?
まさかの本当に告白だと!?
一体何が起きてるんだ!?
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