乗り換え
G3M
第1話 片付け
松本課長が「そろそろお開きにします」と宣言して、部署内のささやかな打ち上げを締めた。ぞろぞろと参加者が会議室を出ていくのを横目で見ながら、吉田明子は片づけを始めた。
明子の1年後輩の四谷正敏が少し離れた離れたテーブルでごみ袋に紙コップや紙皿を放り込んでいた。明子は残った食べ物がもったいないと思った。
「食べられるものを捨てたらもったいないよ。持って帰らない?」と明子は言った。正敏はちらりと明子のほうを見ると、「そうですね」とそっけない返事をして、半分以上残ったピザや開封していないポテトチップスの袋などをテーブルの端にまとめて置いた。
先輩の山川が会議室に戻ってきて、「早くしろ。今日は残業をつけないでくれ」と急かした。
「どうするの、これ?」と山川は残してある食べ物を指さして言った。
「捨てるのもったいないと思って」と明子。
「飲み物以外は持って帰れよ、じゃまだから」と山川。
「はい」と明子。
集めると、大きなレジ袋2つ分のスナック菓子と箱2つ分のピザがあった。
「どうする、これ?」と明子。
「ぼく、いりません」と正敏。「スナック菓子を食べないので。」
明子は困った顔をした。
「わたしのアパートまで運んでよ」と明子。
今度は正敏が困った顔をした。断れば角が立つ。「わかりました」と正敏はそっけなく言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます