第2話 きっかけの男
中の中、中の上。今日のカラオケ合コンは外れだ。それに…
「三人とも可愛いなー」
中の中が、今にもブラウスのボタンが飛びそうな胸をチラチラ見ながら、ほざく。
高校一年生にしては発育が良い未来の胸。また大きくなって困っていると言っていた発言を思い出す。
中の中の気持ちも分からなくないが、視線が露骨過ぎて、未来が引いてるのが分かる。
「里奈ちゃん、スタイル良いね。何かスポーツしてるの?」
中の上も、短いスカートから出た里奈の足を、ガン見していた。
「何もしてない」
里奈は地元の雑誌に何度も載っていて、見られるのに慣れているのか、表情を変えずに素っ気なく答えていた。
人の目を見ながら喋りなさいと習いませんでしたかと、私は心の中で舌打ちをした。
市内上位の進学校で、数々のスポーツでも全国大会に出場する大鳥高校。楽しみにしていた合コンだったけど、コミュ力は今いちみたいだ。
幹事として、未来と里奈に申し訳なく思う。
ゆうはリモコンに手を伸ばし、女子3人で決めていた、合コン終了の歌を未来と里奈に見せる。
「OK-」
「歌いたーい」
二人の了承を得て送信ボタンを押す。
男子二人は女子の気も知らず、目を閉じ立ちながら気持ち良く歌唱している。
歌で女子が恋に落ちるとでも思っているのだろうかと呆れる。
場の空気を悪くしない為、手拍子をしながら笑顔をふりまく私達。
女子には長い、男子には短いであろう時間が流れ、合コン終了の歌がかかった。
今までで一番楽しく、踊りながら歌う私達。
サビに差し掛かった瞬間だった。
「遅くなって、ごめん!!」
勢いよくドアが開き私達の熱唱が廊下に流れた。
「え。めっちゃタイプ」
そして、私の心の声も。
「おせぇーぞ。剛」
中の上が剛と肩を組もうとするが、高身長の剛の肩にやっと手が届くて様は、かっこ悪かった。
「バスケの顧問なんやったん?」
剛はバスケしてるんや。高身長と急いで来て暑いの中、六人の中で唯一半袖姿の剛の逞しい二の腕に目が釘付けになった。
「夏の合宿の件でって、女子のグラスからやん!何飲む?俺持ってくるよ」
中の中と、中の上からは出てこなかった気づかいが剛にはあった。
でも、遅い。私は、未来と里奈を振り返り鞄を待とうととした。
「メロンジュース」
鞄を握ろうとした私の手を里奈が握る。
「未来はりんごジュースね。剛君一人じゃ、六人分ジュース待てないから、ゆうちゃん宜しくね」
未来の笑顔が聖母の様に眩しかった。
その後は、剛のトークと気づかいで盛り上がりをみせ、長かった数時間が数分のように感じ、カラオケボックスに備えられた電話が鳴った。
高校生の時間は、あっという間。
各々のが財布を取り出そうとすると、剛が手を制した。
「俺達が払うから、先に出て。後、お手洗いとか大丈夫?」
女子三人は目を合わせながら財布からお金を取り出す。
「いいって。俺が入って来た時さ。何か空気悪かったから、そのお詫び」
そう言って剛は、女子三人を扉の外へと押しやった。
「ゆうちゃん。剛君良い人だね」
未来はもてるのに、彼氏は作らないらしく、男子にも今は興味が無いらしい。楽しく遊べたら幸せという感覚を持っていた。
「高身長、程よい筋肉質な身体に肌も綺麗で、頭も良い。良い彼氏が見つかって良かったねゆう」
里奈は年上としか付き合わない恋愛感をもつ女子だった。
「いや。彼氏じゃないし。まだ連絡先も交換してないし」
二人のちゃちゃをかわしながら、駐輪場で男子達を待っていた。
元樹 @yyunsuke
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