アルスファルム断片集
夏越カレン
無限草
草たちは、無限という空間の中でしか生きることができない。仮に有限の要素が僅かでも入り込めば、この草たちはたちどころに枯れ、後には何も残らなくなる。
薬草師たちは、無限草を求めてアルスファルムの地を彷徨うことを命運と考えている。無限草は無限の空間で生きるが故に、不老不死の妙薬であると信じられているのだ。
しかし、人とは有限のものである。有限の存在が無限の存在である無限草に触れようとしても、草たちは逃れるかのように枯れてしまう。だから、薬草師たちの中でも、無限草の姿を見たことがある者はいない。その影を確かに見たと語る者は数あるが、それとて、無限草が枯れるという逃避行のために仕掛けた、狡猾な罠であるかもしれないのだ。
だが、不老不死の妙薬である無限草を求め続ける薬草師たちによって、無限草の存在は今も語り続けられている。それが妄想ではないのかと疑うことすら、許されてはいない。
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