16.最後の説得タイム

 拳太がハッキリと、いじめっ子はヤマトだと断言すると、ヤマトは泣きマネを続けながら言った。


「なんでそんなこというんだよぉ~。拳太お兄ちゃん、ひどいよぉ~」


 泣き続けるヤマトに、拳太は言った。


「すごい演技力だね。ゲームクリエイターよりも子役の方が向いているんじゃないの?」


 泣きわめくヤマトの表情に、ほんの少しだけ不快感が浮かんだ。

 ヤマトのクリエイターとしてのプライドは、拳太が思った以上に高いようだ。


(なら、そのプライドをとことん刺激してやる!)


 拳太はヤマトではなく、上空でニヤニヤと見下ろしている狐顔の自称神様に言った。


「ところでユグゥラ。このゲームってつまらないし、くだらないよね」

「そうかのう。ワシは十分楽しいがのう」

「それはお前の役割がゲームマスターだからだろう? プレイヤーのぼくらは全然楽しくないよ。ゲームマスターだけが楽しいゲームなんて、欠陥品もいいところじゃないか」


 拳太の言葉に、ユグゥラは笑う。


「ワシはワシが楽しければ満足じゃよ」

「でも、このゲームは欠陥品だ。クソゲーってやつだ」


 拳太がそう言った時、泣きマネを続けていたヤマトの目に、一瞬だがハッキリと怒りが浮かんだ。

 拳太はさらにたたみかけた。


「ねえ、ヤマトくん、キミはどう思う? このゲーム、クソゲーだとは思わない?」


 ヤマトは答えない。

 ゲームクリエイターとして、自分の作ったゲームがクソゲーだなどとは口が裂けても言いたくないのだろう。

 だが、このゲームは面白いなどと主張すれば、投票する3人にどう思われるかも理解しているはずだ。いちごはもちろん、昭博すらヤマトを怪しむだろう。

 だからだろう。彼は拳太の問いを露骨に無視した。


「ボクがいじめっ子だっていうなら教えてよ。一体、ボクが誰をいついじめたっていうのさ?」


 拳太は「うっ」と言葉に詰まった。

 たしかに、ヤマトがいつどこで誰をいじめたのかなど、拳太は知らない。


「そんなこと、ぼくに分かるわけないけど……」

「ほら見ろ!」

「だったらヤマトくんはぼくがいつ誰をいじめたっていうのさ?」


 拳太の苦し紛れの返答に、ヤマトは言った。


「今、ボクをいじめているじゃないか」

「それは話が違うじゃん」

「こうやって、いつも、小さな子をいじめているんだろ!?」


 ヤマトはここが攻めどころとでも思ったのだろうか。

 泣きマネはすでにやめていた。だからこそ、拳太も反撃できた。


「ヤマトくん、さっきまであんなに涙を流していたのに、いつの間にか元気だね。泣きマネはもうやめたのかい?」

「ボクだって死にたくないから。泣きたいけど、泣いている場合じゃないもん」


 そう言うと、ヤマトは再び涙を流し出した。

 言うべきことは言ったから、あとは泣きマネということか。


 拳太ももう、言うべきことはひとつしかない。

 拳太はタイマーをチラッと見た。


 残りタイムは『00:15』だ。

 今言えば、ヤマトが反論する時間は残されていない。

 最後に拳太は昭博、いちご、夏風を見回して言った。


「このゲームをデザインしたのは、ヤマトくんだ」


 その言葉に、昭博といちご、そして夏風すらも目を見開き驚いた様子を見せた。

 そして、タイマーは『00:00』となり、最後の投票タイムへと移った・

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