7.1度目の投票タイム いじめっ子は誰? 拳太の選択 

 拳太は鉛筆を握り、配られた投票用紙を見た。

 なんてことはない普通の白い紙だ。投票相手の名前を書くだけでいいらしい。


(誰だ? 誰がいじめっ子だ? 誰の名前を書けばいい?)


 わからない。

 さっきの話し合いタイムで聞いたことに、なにかヒントがあるのだろうか。

 誰の話が嘘っぽかったか?


(そんなの、判断しようがないよ。他のみんなはどうするんだろう?)


 拳太はそう考えつつ、他の4人の様子をうかがった。

 そして気がつく。4人の手元が見えない。まるで霧がかかっているみたいだ。

 ユグゥラが補足説明をした。


「カンニング防止のため、それぞれの手元は見えないようにさせてもらった。投票相手は自分の意思と判断で決定せよ」


 と、夏風といちごが腕を動かした。細かい動きは分からないが、誰かの名前を書いているようだ。


(2人は投票相手を決めたんだ)


 事実、夏風といちごは黙ったまま立ち上がり、投票箱に紙を入れた。

 拳太は2人に、どうやって投票相手を決めたのか聞いてみたくなった。

 しかし。


(声が出ない!?)


 慌てて口を押さえた拳太を見て、ユグゥラが言った。


「投票タイム中のプレイヤー同士の会話は禁止じゃ」


 プレイヤーたちをしゃべれなくするなど自称神様には簡単らしい。


(自分の意思で決めるしかないか)


 拳太はあらためて、話し合いタイムを思い出してみた。


(なにか……なにかないのか?)


 その時、拳太はひとつの発言を思い出した。


(そうだ。あの発言だけ他とは違う。そう考えたら、あの2人は除外できる。だとしたら残る候補は2人。どっちがいじめっ子なんだ?)


 拳太はその2人を何度も見くらべた。

 ユグゥラが言う。


「投票終了時間まで、あと2分じゃぞ」


 タイマーには『01:58』と表示されていた。


(もう時間がない)


 その時、ヤマトが立ち上がり、投票箱に紙を入れた。


(ヤマトくんも投票した)


 まだ投票していないのは拳太と昭博の2人だ。


(このまま投票しないわけにはいかない)


 投票権を放棄するのはもっとも不利な行為だ。

 これ以上迷えない。


(決めた。やっぱりあの人だ)


 拳太は決意し1人の名前を書いて、残り1分のところで投票した。

 昭博も小さくため息をつき、残り10秒時点で投票を終えた。

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