第17話 セブルとハイツ
「セブル、ハイツ、二人に少しお願いがありますわ」
食事を終えて食後の紅茶を頂きながら二人に話しかける。
「何なりとお申し付け下さい」
セブルとハイツが立ち上がり畏まる。
「今日これからおきることは他言無用でお願いいたしますわ」
「これから起きることですか?」
「ええ、それから今後二人には私の協力者になってほしいと思いますわ」
二人はどう返せば良いのか困惑しているようだ。
「二人とも私からも頼むよ」
「リーザがそういうってことは、お前もロザリア様に協力しているのだな」
「そうなのか?」
「まあ、そういうことだよ」
リーザの答えに二人は納得したようだ。
「ロザリア様に協力をしたいとは思いますが、私達は団長であるグレイス様に仕える身です。それでもということでしょうか?」
「そうですわ。そこまで気負う必要はありませんわよ。ただお父様に黙っていればいいだけですわ」
「内容によってはご報告してもいいということでしょうか?」
「貴方がた二人がそう判断したのでしたら仕方ありませんわね」
その時は二人の記憶を消させてもらうしかないかしらね。失敗すると大変なことになるので余り使いたくない手なのですが、今はまだお父様とお母様には知られるわけにはいきませんからね。
「わかりました。よっぽど私達二人の手に負えないことでもない限りは協力させていただきます」
セブルとハイツは二人で少し相談をしてそういう答えが返ってきた。
「お願いしますわね。それでは早速見ていただこうと思いますわ。ティア良いですわよ」
私がティアに呼びかけると、ティアが顕現して部屋にいる人間に見えるようになった。
「ま、まさか、だ、大精霊様!」
「あの噂は本当だったのか」
「二人ともよろしくにゃ」
慄く二人に対してティアが軽く片手を上げて挨拶をしている。
「ふ、ふふふ」
「楽しそうですねロザリア様」
「うふふ、だってリーザとセブルの反応が全く同じだったのですもの。うふふ」
リリンが笑っている私を見てそう言ってきたので、以前ティアの姿を見せた時のリーザと同じ反応をしているセブルが面白くて笑ったと言っておく。一字一句違わず、それに浮かべている表情まで同じなのは本当に面白い。
「おい、セブル、私の真似をするんじゃないよ」
「どう考えても言いがかりだろ」
言い合いを始めるリーザとセブルだけど、どこか楽しそうだ。黙ってみているハイツもいつも通りといったように眺めている。この二人のやり取りはなんだか懐かしいわ。逃亡生活の時によく見た風景。一通り笑って落ち着いたところでティアの紹介をすることにする。
「この子はティアといいますわ。そして私はこの大精霊であるティアと契約をしておりますわ
「この事は団長はご存知なのですか?」
「どうかしらね? 薄々ティアの存在には気がついているかも知れないですわね。ただ、お父様のことですから、きっと余り深くはお考えになっておりませんわ」
「流石侯爵様といったところか」
「ただの脳筋なだけですわ」
「酷い言われようだな」
「どのように言い繕っても真実は変わりませんわ。お父様の事は今はいいですわ。そんなことよりも、そろそろリーザに調合をしてもらわないいけませんわ」
「ああ、準備はできている。魔力視も問題なさそうだからすぐに始めるとしようか」
「補助は致しますわ」
「ローザ様、お願いします」
リーザが材料一式を箱に入れて持つと、先に歩いていく。私はその後について行くと、リリンとセブルにハイツもついて来ようとする。
「三人にはここでまっていてもらえるかしら」
「危険はありませんか?」
「大丈夫よリリン。危険はないわ」
「わかりました。紅茶とお菓子を用意して待っていますね」
「お願いするわ。セブルとハイツは誰も中に入ってこないようにしてください」
「「ハッ、かしこまりました」」
二人は敬礼をしてその場に留まる。実際危険はないしそれほど時間がかかるものでもない。それこそ紅茶に使うお湯を沸かすくらいしかかからない。リーザの後についていくとそこには錬金術で使う大きな鍋が鎮座している。
「さて、作り方は他のものと同じでいいのだよね」
「ええそうですわ。まずは魔法で魔力水を入れて、順番に素材を入れていくだけですわ。作業としては難しいものではないですけど、今の私には混ぜ続けるには体がこれですから」
自らの胸に手をやって見せる。錬金術の厄介な所は魔法を使うと失敗するところにある。身体強化なども駄目なので、自らの身体能力と体力でなんとかしないといけない。流石の私も三歳児の体だと錬金術で、お母様の病気を治すための治療薬を作ることは出来ない。
リーザと再会できたのは本当に僥倖でした。もし出会うことが出来なければ、リリンをなんとか調きょ、こほん、リリンを育てて作ってもらうしか手がなかった。それ以外に錬金術の適性がありそうな人は、近くにいなかったので本当に良かった。
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