掌の中の闇
あああああ
取材記録・前編:とある女の話
これは、私が犯してしまった、ある罪についてのお話です。
女手ひとつで私を育ててくれた母が亡くなり、心機一転にと、一人暮らし向けの小さな部屋へ引っ越した頃のことでした。
引っ越す前の私は、家に帰るといつも、母のいない日々を実感させられるような空虚が押し寄せてくる、そんな寂しい感覚に悩まされていました。
それでも、これからは自分の力で立っていかなければと、小さな部屋で一人きりの生活を始めたのです。
母の遺影代わりに置いている小さな写真には、赤ん坊の頃の私を抱き抱えている母と、マジックで顔を塗りつぶされた父、そしてもう一人、父に抱き抱えられた赤ん坊が写っていました。詳しくは聞いていませんが、亡くなった母曰く彼女は父が引き取った私の妹……だそうです。
その写真に手を合わせてから出勤するのが日課でした。
当時、三十を少し過ぎたばかりの私は、小さな会社で事務のお仕事をしていました。給料はそんなに良くないのですけど、短大を出てからずっとそこで働いていたのです。
新しい住居で生活を始めて二ヶ月ほど経った頃、私の部署に新人が配属されました。
彼女は――そうですね。仮に〝ユミ〟と呼ぶことにしましょう――、
ユミは私と同年代で、好きなドラマや芸能人の話、学生時代のあるある話なんかも共通することが多く、割と早く意気投合していきました。仕事面では彼女は何をするにも私のあとにベッタリとついて、「先輩、先輩」と私のことを慕ってくれている、可愛い後輩といった感じです。
最初は微笑ましく感じていました。でも……、だんだんと彼女の行動を私は不気味に感じるようになってしまったのです。
きっかけはある休み明けの日のこと、出社した彼女に挨拶をされた私は、彼女の髪型の変化に気付きました。
「ユミ、髪型変えたんだ」
「はい! 先輩とお揃いですね」
「ふふ、そうね。似合ってるわよ」
嬉しそうに返事をするユミは、私と同じく三十を過ぎているというのに、まるで少女漫画のヒロインのように瞳をキラキラと輝かせて笑っていました。それだけなら私も何も思うことはなかったのです。
でも、私とのお揃いは髪型だけではとどまらなかったのです。
日を追うごとに彼女は、「スマホもお揃いですね」、「偶然、同じピアス見つけたんです」などと言って、まるで私の二号ちゃんを目指していますと言わんばかりに私の私物を真似していくようになりました。
……気味が悪いと思いませんか? というか、気持ち悪いと思いません?
他にも、ユミから距離を置こうと、会社から離れた場所で休憩をとっていても、いつの間にか私の近くに彼女が来ていたり、どこで嗅ぎつけたのか分かりませんが、私の通っているジムにも顔を出すようになったり。
だんだんと行動がエスカレートしていって、その頃にはもう、彼女のことを〝可愛い後輩〟だとはまったく思えなくなってしまっていました。
それにある日、同僚に言われたんです。
「ユミちゃんって新人の子、ほんとアンタにベッタリよね。なんか本物の姉妹みたい。髪型もそっくりだし」
イラっとしました。
あんな気味の悪い女と、生き別れて顔も合わせたことのない妹を同じにするなって。そう思ってしまいました。
でも私の事情なんてその同僚は何も知らないわけですから、その場で同僚に対して何かを言うなんてことは出来ませんでした。
エスカレートした原因は私にもある、とは思っています。
私はユミに対して「付きまといや真似はやめて」とキッパリ拒絶をすることをしませんでした。同じ職場で人間関係をこじらせて、彼女が急に辞めたり、仕事に悪い影響が出たりする方が困ると思ったからです。
私さえ我慢をしていれば良い。私さえ。
そう自分に言い聞かせながら、呪うように仕事を淡々とこなす。それだけの毎日でした。
そんな日々を繰り返して数ヶ月が経ったある休日の昼間に、滅多に鳴らない自宅のチャイムが鳴らされたんです。
インターフォンのモニターに映っていたのはユミでした。
嫌な予感がしつつ、彼女の用事を聞くことにしたんです。
その予感は的中していました。彼女は私が住んでいるアパート、それも私の部屋の二つとなりへ引っ越してきたのです。
吐き気がするかと思うくらい、背筋が寒くなるのを感じました。
「会社から近くて安いところを探してたら、たまたま先輩と同じアパートだったんですね! なんか、運命を感じますね」
カメラ越しにキャッキャと笑う彼女の声に、先の欠けたスコップで胸を抉られるような不快感を覚えました。――白々しい。
どうせユミのことですから、同僚や上司に聞き込んで調べ上げたのでしょう。彼女は社内での評判が良く、危険人物扱いされているわけではありませんでしたし。
それでも私は胃酸が込み上げてくるような感覚を抑え、平静を装いつつ「へえ、そうなんだ。じゃあこれからも宜しくね」と愛想笑い。それで精一杯でした。
それからというもの、同じ会社で働いているものですから、家に着く時間も余程のことがない限り一緒なので、時間をずらすために私は終業後にカフェで時間を潰したり、古本屋へ立ち寄ったり。
それでもユミは毎日毎日、アパートへ帰る私を待ち構えていて「お疲れ様です」と言いに来るのです。それも、日に日に私服まで私の趣味に合わせたようなものばかりになっていって。
あの子はなにがしたいのでしょうか。私になりたいのでしょうか。
休日にまでユミと顔など合わせたくないと思うようになった私は、週末をインターネットカフェやビジネスホテルなどで過ごすようになりました。
ユミが視界に映らない日は私にとって唯一の、心が休まる日でした。
でも、日曜日の夜は次の日のために家へ帰らなければなりません。月曜日の朝というわけでもないのに、いつも憂鬱でした。
事件が起きたのは、そんなある日曜日の夜のことでした。
インターネットカフェからアパートへ帰るとき、私はある違和感に気付きました。――開いていたのです。鍵が。私の部屋の。
キーを回しても、最初は上手く回らなくて「おかしいな」とは思ったのですが、ドアノブに手をかけるとそのまま回って……。
まさか、締め忘れていたのかと焦り、ドアを思い切り引っ張ったんです。
……そこには、ユミが立っていました。
彼女も最初は驚いた表情をしていて、少し呼吸を整えるとべらべらと喋り始めました。
「あの、先輩、違うんです。返事がないのに鍵が開いてたから……心配で!」
咄嗟に私は嘘だろうと判断しました。チャイムを鳴らして反応のなかった部屋のドアって、普通回します? おかしいですよね?
それに、直接拒否をしてないとはいえ、会話を減らされたり時間をずらされたりすると「自分は避けられているんだ」ってことは大体想像つくものだと思いませんか?
そんな相手の部屋に、勝手に上がり込みます?
私はもう、堪えることができませんでした。
「もう私に関わらないで!」
アパート中に響くような大声が出てしまいました。――明日の仕事の準備なんてどうでもいい――私はユミの居る私の部屋から離れたい一心で、駆け出しました。
でも彼女は追いかけてきたのです。
一階へ降る階段前で追いつかれると、彼女は私の肩をつかみ、「先輩、誤解です。ちゃんと聞いて下さい」と、少しだけトーンを落とした声で話しかけてきました。
それに対して私は、彼女と同じように控えめのトーンで返します。
「なにが誤解なの! もういい、警察に行くから!」と。
別に警察まで行って
でも、彼女は諦めませんでした。
「お願いですから、話を聞いて下さい先輩!」
「そんなに話がしたかったら、警察署でいくらでもお話すれば良いわ!」
「先輩!」
彼女の握力が強まった時、危険を感じた私は「いいから離しなさい!」と言って、その手を思い切り振り払い……、彼女を突き飛ばしたのです。階段に向かって。
「キャっ……」
彼女の途切れた悲鳴が聞こえた瞬間、私の視界にはハイスピードカメラで捉えられた映像のようなコマ数で、頭から階段へ吸い込まれていく彼女が映っていました。
手を差し伸べようとしたのですが、もう遅かったのです。
鈍器を木に叩き付けるような鈍い音が何度も何度も響き、そのまま彼女は一階まで転げ落ちていきました。
階段の柵に引っかかった腕や足がぐにゃりと曲がる度に「痛い」「ああ」と猿のような甲高い悲鳴が上がっていたのですが、一階のコンクリート製の地面に着く頃には、もう沈黙していました。
彼女は、まるで壊れたマリオネットのように関節をあり得ない方向に折り曲げ、目と口を大きく開いたまま……階段の下で頭部から血を流して倒れていました。
それを見て私は、呼吸を確認する必要なんてないだろうと、そう思いました。
そうです。私は一人の人間の命を奪ってしまったのです。この手で。
――早く助けを呼ばないと。今なら間に合うかも知れない――。
――このままユミを何処かに隠してしまえば――。
交錯する二つの感情は私の中でしつこく絡み合い、
しかし勝ったのは後者。私は「彼女を何処かへ遺棄し、何事もなかったかのように生きる」と判断したのです。
何故、私を苦しめた女のために、人生が終わってしまいかねない判断をしなければならないのでしょうか。
助けなんて呼んで、彼女が万に一つでも息を吹き返せば何を言われるか分からない。
だったら、彼女を何処かに隠してしまえば……。
恐怖とパニックと不安からだったのでしょうか。すでに私の心は悪魔に支配されていました。
幸い、階段から私が車を停めているスペースまではそう遠くなく、ユミの体を引きずる音に気を付けて運ぶことは、そんなに苦ではありませんでした。
軽自動車の後部座席に無理矢理、彼女の体を押し込んだあと、彼女の血がついたコンクリートに花壇の土を撒き、廊下の隅にある掃除用具入れから取り出したデッキブラシでこすって、それをバケツに汲んだ水で流すと、案外きれいに痕跡を消すことが出来ました。
昔、職場の先輩から聞いたことがあったんです。油をこぼした時は、こうするとコンクリートやアスファルトにシミが出来にくいって。本当は砂とかのほうが良いみたいなんですけどね。
あと、血が乾いていなかったのも、きれいになった原因の一つかもしれません。
今振り返ると、おかしなものです。人の死体を隠そうとしているところだというのに、とんでもなく冷静で。
ミステリ小説の犯人が淡々と作業をこなしている時って、「よくもまあ、そんな冷静で居られますよね」って思うじゃないですか。
でも私、やってみて分かったんです。脳が感情にブレーキをかけて、黙々と作業するモードに切り替わるものなんだって。
心は完全に無だったわけではありません。ただ、罪悪感からくる後悔の感情というよりも、これが誰かに見つかってしまったらどうしよう、もしかすると、すでに誰かが見ているのでは? といった恐怖心からくる強迫観念のような。
話が逸れてしまいましたね。
アパートに残った目立つ痕跡を片付けた私は、車で数十分ほど走った先にある
その間も、彼女が息を吹き返すことはありませんでしたけど。……もし、そうなっていたら、私はどうしていたのでしょうね。
山道に着いた私は車を停めると、トランクに入れている小型のスコップを取り、土の柔らかそうなところを探して穴を掘り始めました。
なんでスコップなんか車に積んでいるのか……、ですか?
この辺りって、冬になると車が出られなくなるくらい大雪が降るじゃないですか。ですから、折りたたみ式のスコップを積んでいるんです。冬以外は降ろすっていうのも面倒ですし。
でも、穴を掘り始めて、数分経ったときに気が付いたんです。人間一人を埋める穴って、とてもじゃないですけど、簡単に掘れる気がしないって。
笑っちゃいますよね。ドラマやアニメなら、犯人は簡単に穴を掘って戻ってくるというのに。
そこで私は方針を変え、ユミの私物だけを見つからない場所へ埋め、ユミは河にでも投げ込んでしまおうって思ったのです。
本当は死体が見つからないのが一番なのですが、もし見つかっても身元がわからなければ問題ないだろうって。
穴掘りを中断した私は、ユミを近くにある大きな河の橋まで、車で運びました。〝大きな河〟と言っても、なにぶん田舎ですので、昼間もろくに人が通らない場所だってことは良く知っています。
死後硬直って言うんですかね。車に積んだときよりも、ユミの体は柔らかさを失いつつあって、とても運びづらくなっていました。
彼女の衣服――ポケットの中とかショルダーバッグとか――を漁って、脱がせそうなものは脱がし、あられもない姿で固まった彼女に、私は「さようなら」と一言だけ告げて、橋から突き落としました。
自分のことなのに、まるで映画のワンシーンを観ているかのような、そんな気持ちでした。あっさりと落ちていった彼女は当然、私に何も言わず。
真っ暗で何も見えませんでしたが、川の底で冷たい水が静かに彼女を包み込んでいるような、そんな気がしました。
今もユミはどこかで泳いでいるのかも知れませんね。結局死体は見つからなかったのですから。
そして私は、残った彼女の手荷物を処分するために、穴を掘っていた山道まで引き返しました。後ろに誰も乗っていない車内は、どこか寂しい気がしましたが、ユミを乗せていたときに比べて緊張感は薄まっていました。……少しだけ
穴の前に立ったところで、――出来心だったのかもしれません。彼女のスマートフォンの履歴やバッグの中身を少しだけ覗いてみることにしました。
スマートフォンのロックは不用心なことに、解除ボタンをタップするだけで簡単に外れました。
着信履歴や発信履歴はほとんど父親相手。意外と友達が少なかったのかも知れませんね。メッセンジャーアプリも、企業の公式アカウントからのお知らせくらいしか届いていませんでしたし。
でも、バッグに入っていたメモ帳を取ったとき、心臓を鋭い刃物で貫かれたかのような強い衝撃を受けました。
急に時間が止まるような錯覚。息をするのも忘れてしまいそうなほどの動揺。
はらりと落ちてきたんです。一枚の写真が。
私と私の母、そして父と……妹が写っている、私が持っている写真と同じものが。
それだけであれば、ユミが私の部屋から盗んできたのかも知れないと私は推測したのでしょう。
しかし、私の部屋にあるものとは違い父の顔はマジックで塗られておらず、それが正真正銘、彼女の所有物であると十分に納得できる決定的な証拠になっていたのです。
どうして彼女がそれを持っていたのでしょうか。
考えられる理由はただ一つでした。
そう、ユミは私の……生き別れの妹だったのです。
メモ帳の最後のページには、こう書いてありました。
〝いつかちゃんと、自分の口で言わなきゃ駄目だよね。でも、せっかくお姉ちゃんに会えたんだから、もっと、ずっと仲良くしてたい。関係を壊したくない〟
ユミは多分、私が自分の姉だって、どこかで気が付いていたんだ。だからあんなに慕っていてくれたんだ。
ユミは私の真似っ子をして遊んでいたんじゃない。私に気が付いてほしかったんだ。
ユミは私の部屋に忍び込んだんじゃない。本当に、本当に私のことが心配で、様子を見に来てくれていたんだ。
そんなあの子を私はあんなに気味悪がって、拒絶して、あんなに憎んで、あんなに、あんなに。
――――そんな愛すべきはずの妹を、殺してしまったんだ。この手で。
殺してしまった。殺してしまった。たった一人の妹を。
殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。殺してしまった。
すべてを悟った私は、自分がとんでもないことをしている事に、ようやく気が付いたのです。――いつのまにか大きな声で泣き叫んでいました。赤子が産声をあげるような、大きな、大きな声で。
そんな私の泣き声を聞いていたのは、握り締めて皺だらけになった写真と、ただ無表情で生い繁っている山の木々だけでした。
それからのことはあまり詳しく覚えていません。でも、どうにかして家に帰ったみたいです。
掘った穴をどうしたのか、彼女の荷物をどうしたのか。ポケットの中でくしゃくしゃになった、彼女の写真以外、今はどこにあるのかさえ分かりません。
それから夜が明けるまで、ずっと
「先輩、先輩……」
「お姉ちゃん、お姉ちゃん」
「どうしてなんですか? どうして橋から落としたんですか?」
「寒いよ……、冷たいよ。お姉ちゃん」
「「どうして殺したの?」」
月曜日は、結局眠れないまま会社へ行くことになりました。
「遅刻します」とだけ連絡して、ゆっくり、ゆっくりと。
私が会社に着くと、私以外は何も気に留めることもなく平然と仕事をしていました。夜中にあんな事件が起きていただなんて、知っているのは私だけなのですから当然なのですが。
でも、ふとおかしいことに気が付いたのです。
ユミが居なくなっているのに、どうして誰もそれを気に留めないのでしょうか。
そう思っていた矢先、上司が急に話しかけてきました。
「ああ、そういえば君はまだ聞いてなかったよね。ユミちゃんね、会社辞めちゃったんだよ。朝になって急に電話でね。『書類はあとで郵送します』って。なんだかなあ」
え?
え?
……え?
「そんな、あり得ません!」
立ち上がって、大声で叫んでしまいました。でも続けて「だって私が殺しましたから」なんて当然、言えるはずもなく、ざわついたオフィス内を見渡したあと「すみません」、とだけ言って座り直しました。
隣の席の同僚は心配そうに
「あんた、ユミちゃんのことメチャクチャ可愛がってたもんね。ショックなのはみんな分かってるよ」
と、慰めの言葉を掛けてくれていましたが、私の心はそれどころではありませんでした。だって、夜中に確実に殺したはずの
バクバクと鳴る心臓を抑えながら、その日はずっと、上の空で仕事をしていました。
終業後、いち早くアパートへ戻った私は、一階に住んでいる大家さんにユミの部屋がどうなっているのか訊くことにしました。
しかし、大家さんから返ってきた返事はこうでした……。
「ああ、あの子ね。『来月分までの家賃とかは全部振り込んでおくから解約します』って、急に連絡がきたのよ。別にこっちは今月分だけでいいわよって言ったのに、『でもお世話になりましたから』って。本当に良い子よね。……それで、お昼の間に業者さんが来て、お部屋を片付けていたわよ。荷物は全部、段ボールにまとめてたみたい。やだわ、寂しくなっちゃうわねえ」
意味が分かりませんでした。
誰が会社に連絡したのでしょうか?
誰が大家さんに連絡して、お金を振り込んだのでしょうか?
でも、『
そして、私の車の後部座席には血痕がまだ残っていて、それを未だに、毛布で隠しているのですから。
後日、結局私は警察署へ行きました。自首をするために。
……でも、数日後には「もう来るな」と言われました。
理由は、聞き込みの結果ユミが死んでいるとはとても考えられないくらい、彼女を知る知人と連絡を取れていること、そして彼女自身と警察が連絡をとれたこと。
「警察じゃなくて、君が行くべきは病院なんだよ」
なんて言葉もかけられました。
まるで、ユミがまだどこかで生きていて、私のことをずっと見ているような。そんな寒気を感じるんです。今でも。
もしかしたらですけど、この話もどこかであの子が聞き耳を立てているのかも知れません。――もし、もしですよ? あなたの眼の前に〝ユミ〟と名乗る私とそっくりな女性が現れたら、そのときは私に連絡をしてくださいね。
約束ですよ。
これ以上、特にもう話すべきことは無いと思うのですが、どう思いましたか?
私は、警察の方がおっしゃった通り、おかしくなってしまったのでしょうか?
ちょっと、長くなってしまいましたね。私の話はこれでお終いです。これで、良い記事づくりのお手伝いにはなりましたでしょうか?
え?
最後に一つだけ、「お前は本当は誰なんだ」ですって?
おかしなことを訊くんですね。私は私ですよ。
それでは、失礼いたしますね。探偵さん。ああ、ライターさんでしたね、間違えました。ふふ、ごめんなさい。
では、またいつか何処かで。
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