第2話
僕が住んでいた村はガウシア王国と呼ばれる王国の南端に位置する田舎村である。セーレンに向かうにはまず、ガウシア王国の北端、国境付近の町ギースから国境を越えなければならない。
「とはいえ、一人旅では何かと心細い...仲間がほしいな。二人は欲しい」
僕は旅の途中、小さな宿屋のある町、オルグラにたどり着いた。今夜はここで休もうと決め、宿に向かう途中、にぎやかな酒場が目に入った。中から笑い声と武器のぶつかり合う音が響いてくる。酒場を見ていると、グゥ〜と腹が鳴る。今夜はここで食事を取ろうと
僕はドアを開けて中に入った。すると、店の中央で派手な剣を振り回し、誰かと対戦している若い戦士が目に入った。彼は豪快に笑いながら相手を圧倒していた。僕はそれを横目に席につき、メニュー表を確認する。そして、目についたステーキの絵とビールの絵を指差し酒場のマスターに注文する
食事を待っている間、少し考え事をしていると突然、背後から鋭い声が飛んできた
「おい、危ないよ!」
その声と同時に、僕の背中を強い衝撃が襲った。僕は席から倒れる。周囲を確認すると、足元に若い戦士と乱闘していた男が倒れていた。若い戦士は酔っ払っていて気づいていない。僕は若い戦士に文句を言おうと立ち上がると、一人の女性が冷静な表情で、僕に近づいてきた。
「...やめときな。見たところあんた、まともに戦ったことないだろ? あいつはすぐに手を出すからね。だから今はその拳を納めてくれないかい?」
「…分かった。親切なんだな...君の名前は...?」
「リリー、弓使いさ。あんたの名前は?」
「僕はルシウス。旅人だ」
「へぇ...旅人ねぇ...何か目的があるのかい?」
「眠り姫という病気に犯されたシェリルという幼馴染を救うため、北の果てセーレンを目指している」
「眠り姫...そうかい。その幼馴染はどんな子なんだい?」
僕はリリーにシェリルのこと、そして「眠り姫」の病について、シェリルが眠り姫にかかってしまったこと、セーレンで眠り姫という病気が最初に発見されたので何か手がかりがあるのではとセーレンを目指しているのだと語った。僕が話している間、リリーは真剣に僕の話を聞いていた。
「なるほどね。じゃあ、そのシェリルを助けるために、北のセーレンに行くつもりってわけかい」
「そうだ。だけど、一人じゃ不安で…」
リリーは今までの人生を思い出していた
「俺は伝説の武器、セレスの神弓を見つけて世界一の弓使いになるんだ!」
そういった幼馴染についていった。しかし、十年後には幼馴染は弓を置いていた
「...俺はもう冒険者をやめる」
リリーは納得ができなかった
「なんでなのさ! 今まであんなに必死に...!」
「もう、疲れちまったのさ。......なぁ...教えてくれよ!
俺たちは一体いつになったら夢を叶えられるんだ...?」
幼馴染の目元はひどく窪み、大粒の涙を流していた。それからというもの、幼馴染は酒に溺れある日、姿を消した
(こんな人間が...まだいたとはねぇ)
リリーは顔を手で覆う。手から溢れた涙がポロポロと床に落ちていた
「...泣かせるじゃないかい。いいよ、一緒に行ってやるよ」
「本当か!? ありがたい」
「あんたはあたしが命を預けるに値する信用ある人間だと思うから一緒に行くんだ。もしその思いを裏切るようなら...」
「あぁ...そのときは君が僕を殺してくれ」
「ハッキリ言うね。...あんたみたいな純粋な瞳を久しぶりに見たよ。...嘘が下手なんだろうねぇ。でも、あたしはそんなやつが好きなんだ」
ルシウスは微笑んだ。
こうして、僕は弓使いのリリーという仲間を得た。翌朝、町の門の前に向かうとリリーが待っていた
「それじゃあ行くかい、ルシウス」
「ああ!」
朝日に照らされ、歩いて行く二人の影が重なった。
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