第6話:再会
遥が帰路に着いた頃、健二もまた変わりゆく日々を振り返り、充実感を噛みしめていた。
田舎での生活は、都会の仕事一筋だった頃の自分からは想像もできないほど、心を穏やかにしてくれる。新たな仲間との交流や土に触れる日々が、彼にとってかけがえのないものになっていた。
ある夕暮れ、健二はふと思い立ち、これまでの思いを手紙に書き残すことにした。遥に直接会う時にはきっと話すだろうが、手紙にしておけば彼女に伝えたい言葉をひとつひとつ見つめ直せる気がしたのだ。
「遥へ
まず、今の僕がどれほど田舎での生活に救われているかを伝えたい。都会では味わえなかったこの穏やかさ、心にゆとりを持てる時間、そして自分と向き合う大切さを教えてくれる人たちとの出会いが、僕にとってどれだけかけがえのないものか。田村さんをはじめ、地域の人々が僕に与えてくれたものは言葉にし尽くせないくらい大きい。
遥、君があの時、自分を見つめ直すための旅に出たいと言った理由が、今ならよくわかるよ。僕も、この田舎の静けさと温かさに触れることで、少しずつ本当の自分に戻れたよ。
君と再び会える日が来たら、お互いに成長した姿で向き合えることを願っているよ。これからの僕たちの関係がどう変わっていくかはわからないけれど、今の僕は、もう一度君と新しい形でつながりを持つことができるように思っている。
健二」
健二は手紙を書き終えると、静かに目を閉じ、心の中で再会の時を思い描いた。ふたりがそれぞれ見つめ直した自分を抱え、どうやって歩み寄るのかはまだわからない。それでも、今の自分には遥と再び向き合う準備ができているという確信があった。
そしてその時、ふいに車のエンジン音が遠くから近づいてくるのが聞こえた。玄関に立つと、そこには遥がバッグを肩にかけ、まっすぐにこちらを見つめていた。
健二は静かに笑みを浮かべ、遥もまた微笑み返した。言葉を交わす前に、ふたりはただ互いの存在を確かめ合うように、その場で見つめ合っていた。
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