minors

七夕真昼

第1話

初めてその人を見たのは、「絶対に近寄るな」と言われている街のすぐ傍だった。


歩いている通りから凛珠りずがふと視線を外した先は、世間から“アンダーグラウンド”と呼ばれている街の入り口となる、その路地裏。


見えたのは、倒れている男の人達と、それを面白がるように蹴る男の人達。すぐ傍、その道を曲がれば本当にすぐ傍なのに、まるで別世界の光景。


見ちゃいけないと分かっているのに、普段目にすることの無いその暴力的な光景から凛珠は目を離せなかった。


そんな凛珠に気づいたのはただ一人。気だるそうに立っているだけの、少年の名残りをわずかに残した男の子。



「見せモンじゃねェぞ」



唸るように呟かれたにもかかわらず、確かに聞こえたその声と。



物足りない。満たされたい。



「何か」を渇望する、深い闇色の瞳。


ほんの数分にも満たない時間だったのに。







──その日からずっと、貴方が灼き付いて離れない。

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