異世界でも俺TUEEEEEE幼馴染みを全力で引き立てます

ぽんぽん

第1話 幼馴染みと異世界

「まぁ! あの不死竜の討伐に成功されたんですか!?」

 ギルドの受付のお姉さんの驚きはすぐさまギルド内に広がり、どよめきはいつの間にか歓声の声に変わっていた。それも当然だろう。数いる長命種の中でもその生命力回復力の凄まじさから、理論上は倒せるはずなのに討伐の見込みが限りなく0に近いため不死の名を冠することになったドラゴンの討伐を、たった二人のパーティーで成し遂げてしまったのだから。

「へぇ、あのドラゴンそんなにすごいやつなんですか」

 俺がそっけなく聞いてみると、お姉さんは机をバンと叩いて身を乗り出してきた。

「す、すごいなんてものじゃありませんよ! 不死竜の討伐難易度はSランク、通常は王国騎士団が連隊を率いて退治に臨むレベルなんですから!」

 目を輝かせて言うお姉さん。どうやらとんでもない偉業らしい。

「だってさ、ユウキ。さすがは俺の幼馴染み、俺も鼻が高いなぁ」

 俺はたった一人のパーティーメンバーで幼馴染みのユウキに笑いかけた。すると途端に頬を赤く染めたりなんかする。

「そ、そんな! えっと、あの竜を倒せたのはハルのおかげ、だよ」

「何言ってんだよ。ヒーラーの俺が一度も治癒しない間に倒し切ったくせに。ほら、さっさと褒賞金貰って祝勝会と洒落こもうぜ!」

 「う、うん……」

 ギルドの冒険者たちの視線に耳まで赤くしている幼馴染みの背を押して、俺たちは歩き出した――


   ✕   ✕   ✕


 どうして異世界に転生したのかははっきりと覚えていない。夜食を買いにコンビニへ行ったのが最後の記憶でそこから先はあやふや、気が付いたら石畳の上に放り出されていた――幼馴染みのユウキと共に。

 身体の芯を震わすような衝撃をやり過ごしてから、俺はゆっくりと辺りを見回した。

 すると、隣には顔面蒼白の幼馴染みの姿があった。自分の腕で肩を抱いてぶるぶると震えていて、眼はどこにも焦点が合っていない。

 当然この時点じゃ異世界に転生してしまったことなんかまるで理解していなかったし、頭の中はぐるぐるこんがらがっていたけれど、それらの全てがどうでもよくなるぐらいその姿は衝撃的だった。

 昔からユウキは何でも得意で何でも一番の奴だった。小学校の頃から男子にも負けないぐらい足が早くて、夏休みの宿題の読書感想文はコンクールで入賞して、中学校でも陸上部で全国大会で一位になって、高校でも……。

 そんなユウキをずっと隣で見てきた俺は、あいつが正直羨ましかった。でも妬ましくはこれっぽっちもなかった。高校であいつの陰口を言っていた奴らは知らない、幼馴染みの俺だけが知っている。あいつは誰も知らないところで信じられないぐらいの努力をやっている奴だってことを。

 ユウキは弱音を吐かない。辛いことがあっても滅多に表情に出さない。

 そのユウキの、憔悴しきった姿を目にするのは、俺が交通事故にあって一週間振りに目を覚ました時以来だった。

 とかく、ユウキは人に弱っているところを見せないで見せたがらないやつだから、俺はこの先どうしていくのかをこの時に覚悟したんだと思う。

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