俸給戦隊$ガッシンジャー
野志浪
プロローグ
茶番戦争の幕開け
21xx年。
地球防衛軍は定期的に飛来してくる宇宙人とエリア151で戦いを繰り広げていた…。
「隊長、ホントにやるんですか…?」
一人の部下が司令室に置かれたテーブルに両手をついて不安そうに尋ねる。
「…上からの命令だ。やるしかない。」
私は次々と地上に降り立ってくるやつらを、モニター越しに眺めて言い放った。
「でも…!もしこれが本格的な宣戦布告と取られたら、どうなるか分かりませんよ!エリア外の侵略に踏み込まれたら、民間人にも被害が出ます!」
「宣戦布告など、はじめからこちらが受けているのと同じだ。やつらが地球に飛来してきてから、もう軍人にも負傷者が出ている。ここで一度、人類の恐ろしさを見せつけてやらねばならん。もう白兵戦では埒が明かない。」
そう。対話の機会さえあれば、こんな手段を選ばずに済んだ。しかし、やつらとはまともな交渉が成立しないのだ。
地球まで飛んで来られる能力があるにも関わらず、意外と知能が低いのかなんだかよく知らないが、とにかく言語によるコミュニケーションが難しい。基地局の担当者がUFOから発せられる音声信号をキャッチしてメッセージを読み解くも、オカメインコぐらいの語彙力しか持っていないため、高度なやりとりが不可能なのだ。
ファーストコンタクトの際、どうやら自分たちの住む星の名前を言ったらしいのが、担当者には「テラワロス」と聴こえたようなので、とりあえずみんなで「テラワロス星人」と呼ぶことにした。そういう感じだ。
「くそっ!やつらの目的さえ分かれば、共存の道があるかもしれないというのに…!」
部下は歯がゆさを隠し切れず、両手の拳を握りしめる。
「宇宙人との共存か…。儚い夢だったな。叶えば未知の科学力が手に入ったかもしれん。だが、既に我々地球人には、オカメインコの知能など遥かに超える十分な科学力がある。…十分すぎるほどのな。」
ザー…ザー…。
無線に連絡が入る。
「こちら基地局。発射準備完了。隊長の指示で実行可能です。これより最大5分間待機可能です。どうぞ。」
私はモニター画面を凝視したまま声を上げた。
「もう撃つ。実行してくれ。」
「…了解。」
ブツッ、と無線が切れると、すぐにモニターから見えるエリア151が眩しい光に包まれた。
そして……。
ドォーン!!
という凄まじい轟音が鳴り響き、辺り一体の空気が震える。モニターは5,6回点滅を繰り返した後、暗転して何も見えなくなった。
「………。」
私と部下は言葉もなく、司令室の窓から巻きあがる爆煙を見上げる。
…見よ、これが人類だ。
もはや科学によって自らの星を滅ぼせる領域まで到達してしまった我々にとって、宇宙人など恐れるに足らず。
逆上して襲ってくるというのなら、やってみるがいい。民間人に被害が出る前に、全て空中でUFOごと木っ端微塵にしてやる。
ザー…ザー…。
再び無線が入る。
「こちら基地局。エリア内…着陸した個体…全て…殲滅確認。作戦終了です。」
「…よくやった。」
私は窓際で固まっている部下をそのままに、テーブルに戻って飲みかけのコーヒーに口をつけた。
しかしその途端、またすぐに連絡が入る。
ザザ…。
「…隊長、上空…UFOから……ッセージを受信しまし……」
爆発の影響か、無線が不安定になっている。
「何?メッセージか?『覚えてろ』とでも言ってきたか?」
私は冷たい薄笑みを浮かべて椅子に腰掛ける。
「…いえ、…ットソウ…ハナシ……」
「すまん、聴こえない。メールで送ってもらえるか?」
数秒後、ポーンと音がして、担当者からメールが送られてきた。
そこには、たった一行、こう書かれていた。
『チョット、ソウイウノハ、ナシデ。』
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