私の造った化け物

ぽぽ

第1話

 二本足で立っている。

 眼窩が真っ黒。

 口腔が真っ黒。

 顎が外れて胸まで伸びている。

 歯は一本もない。

 黒い短髪。額が禿げている。

 服を着ていない。性器はない。

 膨れた腹に幾輪も花が咲いている。柱頭ではなく眼球。

 足の指が十本。両足で二十本。

 腕が肘から縦にさけ、四本になっている。

 私が作った怪物。我ながら傑作だ。

 どこから湧き出しているのか分からない、ゾワゾワとした恐怖が全身を占める。

 今度作るゲームのために作った、ホラー演出用のキャラクター。

 アニメーションはうまく動くだろうか。少し動かしてみよう。

 まず、手を上下に。裂けた腕がプラプラと揺れて、血が脂肪と骨髄と共に流れ出る。よくできている。

 次は歩かせてみよう。十本の指が、親指から順に地面に地面に着いていく。ひたひたという足音がよく似合う。

 花は自然に動くだろうか。不規則にゆらゆらと動いている。眼球がぎょろぎょろとあちこちを向いている。時折こちらを凝視することもある。

 喋らせてみよう。

「ああ、ああうあえあういいああ。あ、ああ、う、あ、お」

 子供の声を低く歪めたような声。母音しか発声できないようにしている。

 うん、やはりこのデザインは良い。これならホラーシーンもばっちり演出できるだろう。

 花がこちらを向いた。

 おかしい。今こいつは動かしていないはずだ。

 歩いてきた。こちらに向かって。二十本の指をひたひたと鳴らしながら。

 プログラムを停止しても止まらない。

 裂けた腕から血と脂肪と骨髄が流れ出る。それが指を伝って滴っている。この演出はまだプログラムに組んでいないはずだ。

「あうあああおうええあうおえうあ」

 でたらめな音声を発している。低く歪んだ子供の声。意味の無い音。

 動けない。脳が命令しても動けない。

 近づいてくる。真っ黒な眼窩を、口腔を、外れた顎を。こちらを向いている。

 恐怖。私が造ったはずのものに対する恐怖。近づいてくる。

 画面越しにそいつと対面する。空っぽの眼窩が私を見ている。

 四つの腕を伸ばしてくる。それは私の眼前にまでせまりそしてあたまをつかまれ

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私の造った化け物 ぽぽ @popoinu

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