転生猫、異世界を歩く 名前はまだない
みさと
始まり―ミドルアスについて―
1.目を覚ますと、そこは知らない森だった。
爽やかな青空。
みずみずしい木々。
鼻孔をくすぐる草木の青臭さ。
……
…………
………………
ふむ。
全く知らない景色だ。
こういう時、どうするのが正解なのだろう。
驚く?
怖がる?
やっぱり、泣く?
ああ、違う。
私の場合は『鳴く』が正解か。
猫だから――
さて、そろそろ落ち着こう。
混乱はここまで。
状況を整理しないと――
そもそも、なんでこんなところにいるのだろう。
私は確か、いつも通り玄関で寝ていたはず。
…………
まさか、夢の中だったり?
ハハ、だとしたら合点が行くな。
『残念ながら、夢ではありませんよ』
…………
うん?
『はい?』
誰か人がいるのか?
『人はどこにもいませんよ?』
では、この声はなんだ?
私がおかしくなったのか?
『ご安心下さい。これは私の声です』
『私』とは誰のことだ?
『私ですよ、私』
と、言われてもな……
『貴方の真上にいるじゃないですか』
そう言われ、顔を上げてみると、石像があった。
ベールを被り、杖を携えた、女性の像。
体中に蔦が這い、苔が生い茂っている。
長い事、放置されているのだろうか。
…………
……………………
まさか、この石像が喋っているのか?
『そうですよ?』
ハハ、あり得ない。
『何故ですか?』
石像は喋らない。
『どうしてですか?』
どうしてって……それが世界の常識だからだ。
『なるほど』
『では――違う世界だった場合、その常識はどうなりますか?』
…………
……………………
うん?
『貴方が知っている世界と、この世界が違う場合、その常識は正しいですか?』
話が飛躍しすぎている。
『飛躍なんてしていませんよ』
いやいや、飛躍している。
だって、この世界は――
『全く知らない景色――なんですよね?』
…………
そうだ、全く知らない景色だ。
しかも、自分の記憶と一致しない場所。
私は確かに玄関で寝ていたはず。
そこで待っていたはず。
いつも通り――
だが、いくらなんでも――
だからといって、違う世界にいるなんてことは――
『ありえますよ』
どうしてそう言える。
『だって、貴方は転生したのですから』
『この魔法と混沌の世界、ミドルアスに――』
…………
『ご理解頂けましたか?』
全然。
まず、一つ一つ聞かせてくれ。
『はい』
転生というのは、私が考えている転生で合っているかな?
『はい、生まれ変わるという意味の転生です』
なるほど。
そして、ここはミドルアスという世界。
『はい』
魔法と混沌の世界――
魔法というのが存在していて、混沌というのは……
『まぁ、戦乱が続いていると考えて下さい』
補足をありがとう。
『いえいえ』
なるほどなるほど
つまり――
私は死んだというのか!?
『そうかもですね』
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