第44話 風雲の道 -美濃への旅路-
尾張大隅の庇護のもと、しばらくの間、安堵を得た大海人皇子と鸕野讃良皇女。桑名の町では、地元の民も二人を温かく迎え入れ、束の間の平穏が流れていた。しかし、彼らの胸中には、嵐の前の静けさがどっしりと重くのしかかっていた。
夜が更けた頃、大海人皇子は尾張大隅の屋敷の一室で鸕野と向き合っていた。「讃良、そろそろ美濃に向けて出立の準備を整えようと思う。これ以上ここに留まれば、私たちの存在が敵に知られる危険が増してしまう」
鸕野は一瞬不安げに彼を見つめたが、すぐにその瞳には決意が宿った。「そうですね、大海人様。私たちがここで留まっていては、進むべき未来への道が閉ざされてしまいます。私も共に参ります」
「お前がいてくれることが、どれほど心強いか…」大海人は優しく鸕野の手を握り、二人はその場で静かに誓いを交わした。
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翌朝、出発の準備を整えた二人は、草壁皇子と忍壁皇子を馬車に乗せ、美濃国への道をひた走ることに決めた。その道中、様々な困難が彼らを待ち受けていた。急な山道や渓谷、そして暗殺者の影すらもちらつく中、彼らは互いを支え合いながら、目的地へと歩を進めた。
ある夜、宿営地で火を焚きながら鸕野はふと口を開いた。「この旅がどれほど長く険しくても、私は決して引き返すつもりはありません。大海人様、あなたと共に戦い抜きます」
大海人は彼女の言葉に深く頷いた。「私たちが共にある限り、どんな困難も乗り越えられるだろう。讃良、私たちは必ずこの国を変える。新たな未来を切り開こう」
その言葉は、まるで未来を予見するかのように力強く響き、二人の間にさらなる決意と絆が生まれた。
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美濃国にたどり着いた彼らは、現地の豪族たちと連携を深め、いよいよ決起の機運を高めていった。大海人皇子の志に共鳴する者たちは次第に増え、彼らの力は着実に膨らんでいった。
「我々の戦いは始まったばかりだ」大海人皇子は新たな仲間たちに向かって力強く宣言した。「この国を、次の世代のために守るため、我々は共に立ち上がるのだ」
鸕野も彼の隣で静かに立ち、周囲に集う者たちに微笑みを向けた。彼女のその姿には、強さと優しさが溢れ、集まった人々の心に希望の光が差し込んだ。
この瞬間から、彼らの運命は大きく動き出す。歴史に残る戦いの幕が切って落とされたのだった。
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