第24話 友情のカタチ
王立魔法学校の広大な中庭は、柔らかな午後の日差しを浴びて、どこか穏やかな雰囲気に包まれていた。
芝生の上では学生たちが談笑し、魔法の練習をしている。
そんな中、カルヴァン、リリス、イザベル、ガイル、アイリスの五人は、それぞれ思い思いにくつろぎながら会話を楽しんでいた。
「この学校で、みんなはどんな目標を持ってるの?」
カルヴァンがふと問いかけると、ガイルが真っ先に答えた。
「俺は筋力強化魔法で、この国一の魔法戦士になるのが目標だ。どんな魔法使いだろうが剣士だろうが、俺には敵わないってくらいに強くなって、みんなを守るんだ!」
ガイルは力強く拳を握りしめ、まるでその夢を今ここで実現しようとしているかのようだった。
「ボクは…」
イザベルが少し恥ずかしそうにしながらも、しっかりと続ける。
「ボクは風魔法と召喚魔法を極めて、みんなをサポートできる魔法使いになりたいんだ。もっと強い妖精を召喚できるようになれば、きっとみんなの役に立てるから。」
「私は、フォーレン家を支える立派な魔法使いになりたいわ。」
アイリスが静かに微笑みながら、自信に満ちた声で言う。
「いつか、父や母が安心して家を任せられるような、誇り高い存在にならなければならないの。」
「みんなすごいね。」
カルヴァンは感心した様子で頷きつつ、隣にいるリリスをちらりと見た。
彼女は少しだけ黙り込んだ後、肩をすくめるようにして答える。
「私は…カルヴァンと一緒に、もっと強くなりたいわね。」
それ以上の詳細は語らなかったが、その目には何か複雑な感情が宿っているように見えた。
その日の昼食時、いつもの食堂で五人は楽しく食事をしていた。
しかし、その中でリリスだけがどこか浮かない顔をしていた。
「リリス、どうしたの?」
カルヴァンが心配そうに声をかける。
「別に。ただ…なんであんた、あんな奴に何も言わないのよ。」
リリスはフォークを置き、鋭い視線でカルヴァンを見つめた。
「あんな奴って、誰のこと?」
カルヴァンが首をかしげると、リリスは少し苛立ったように眉を寄せた。
「ハラーガよ!あの嫌味ったらしい態度、あんたも気づいてるでしょ?力を持ってるなら、それを見せつけてやればいいのに。」
その言葉には、リリスがカルヴァンの代わりに怒っている気持ちが滲み出ていた。
カルヴァンは困ったように笑いながら答える。
「やり返すことだけが正解じゃないよ。それに、僕があんなことで力を使ったら、周りの人たちがどう思うか考えたことある?」
「…わからないわ。悪魔界では、力を見せなければ、ただの餌でしかないのに。」
リリスは視線を落とし、まるで自分の中で答えを探そうとしているようだった。
夕方、彼らは中庭に再び集まっていた。
仲間たちがそれぞれ新たな目標に向けて意気込みを語る中、リリスだけが沈黙を守っていた。
しかし、ガイルがその空気を一変させた。
「おいおい、リリスも元気出せよ!この学校にいるんだ、仲間と一緒に楽しくやるのが一番だろ!」
ガイルが明るく笑いながらリリスの肩を叩く。
イザベルもすかさずフォローを入れる。
「ボクたち、もう仲間だもんね。これからも一緒に頑張ろう!」
アイリスは静かに微笑みながら、リリスに声をかけた。
「リリス、あなたが何か悩んでいるなら、みんなで助けるわ。私たち、仲間でしょう?」
リリスは少し驚いた表情を浮かべ、やがて小さく笑った。
「そうね…あんたたちがそう言うなら、私ももう少し考えてみるわ。」
その夜、リリスとカルヴァンは夜空を見上げながら、二人だけの時間を過ごしていた。
リリスは、沈黙を保ったまま、じっと夜空を見つめている。
「リリス、君が何を思っているのか、なんとなく分かる気がする。」
カルヴァンがゆっくりと口を開いた。
彼の声には、穏やかさと真剣さが混じっている。
「分かるわけないわよ!あんな奴らになんで何もしないのよ!」
リリスはわずかに感情をあらわにしながら答える。
カルヴァンは一瞬言葉を選び、そして静かに続けた。
「僕は力を使うことがすべてじゃないって思ってる。でも、それが君には納得できないんだろうね。」
リリスは目を伏せながら、小さくうなずく。
「悪魔界では、力を示せなければ、ただの餌でしかない。それが私の常識なのよ。」
「そうだね、君が生きてきた世界と僕が知っている世界は違う。君に教えてほしいんだ。その力の意味とか、君が考える“強さ”ってなんなのかさ!そうすればお互いもっと分かり合えるかなって思うんだ。」
カルヴァンの声には、リリスを理解したいという真摯な思いが滲んでいた。
リリスは驚いたように顔を上げた。
そして、カルヴァンを見つめる瞳には、ほんのわずかな戸惑いが浮かんでいた。
「…なんで、そんなに優しいのよ。あんた、もっと自分の力に自信を持てばいいのに。」
彼女の声には、ほんの少しの苛立ちと、そして優しさが混じっていた。
「僕が自信を持てるのは、君やみんながいてくれるからだよ。リリスがいてくれるから、僕は強くなれるんだ。」
カルヴァンのその言葉に、リリスは一瞬驚き、そして静かに微笑んだ。
「ったく…変なやつね。でも、あんたのそういうところが、嫌いじゃないわ。」
リリスの声はいつもより柔らかく、どこか心が解けたような響きを帯びていた。
夜空には満天の星が輝き、二人を静かに見守っていた。
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