第27話 涙

彼女の幸せを祈っていた。

だからこそ私は...涙が止まらなかった。

家に帰っても号泣していた。


これで龍磨の同じ様に死んじゃったらどうしよう。

そう思うと涙が幾ら拭っても止まらなかった。

勉強に全く集中出来ない。

とても...悲しい。


「どうして...」


私はそう呟きながら涙を流す。

それから私は首を振った。

そして顔を上げる。

こうして悲しんでいてもどうしようも無い。

考えながら私は居るとスマホが丁度良いタイミングで鳴った。


「...由希子?」


画面に映されている名前に慌てて私は出る。

すると由希子が出た。

「星羅」と優しく言ってくる由希子。

私はまたそれに驚きながら涙が浮かぶ。

そして涙声になる私。


「...どうしたのかな...由希子」

「...また泣いているの?」

「そうだね...その。複雑に...思っているから」

「大丈夫だよ。星羅。...私は...」

「でも...」

「うん。まあ星羅が泣いてくれるのがとても嬉しい。だけど涙は絶対に貴方に似合わないよ」

「...どうして貴方はそんなに強いの?」


そう言うと由希子は「あくまで私は強い訳じゃない」と否定をした。

それから「彼に全てを託したから...安心感の方が強いかな。それで意味不明に心から強くなっただけ」と答える。

私はその言葉に驚く。


「...え?その...じゃあ...彼に。和馬くんに会ったの?」

「うん。在里に会った」

「...和馬くん...何か言っていた?」

「...彼は気にかけてくれる本当に良い人だね。...私が最低な真似をしていた癖に」

「彼はとても良い人だよ。私が惹かれるぐらいに」

「もし私が女性ばかり好きにならなかったら。病気がなかったら多分、私も好きになっていたよ。在里を」

「...」


私はその言葉に涙がまた出てくる。

止まらなくなる。

由希子は「泣かないでって」と言ってくる。


私にとって由希子は。

幼馴染の様な存在だから。

そんな非情な事は出来ない。

そう思いながら私は涙を拭う。


「...星羅...」

「由希子。涙はあくまで大切なんだよ。由希子。...誰かの為に泣くっていうのは...大切な事なんだよ」

「...大切な事...」

「そう。...由希子はその。悲しすぎて知らないかもしれないけど」

「...」


由希子はその事に苦笑する様な感じを見せる。

私はその事に「私、貴方から脳腫瘍の告白を受けて良かった」と言う。

すると由希子は数秒間沈黙した。

それから言葉を発する。


「在里の言っている通りだね」

「言っていた通り?」

「...在里のお母さんの事は聞いたかな」

「...聞いたけど...」

「彼の母親は自殺をしたんだけど...その事で彼は私をずっと力強く説得したんだ」

「...和馬くん、説得したんだね。由希子を」


そう言うと由希子は少しだけ間が空いてから「そう。彼は自らの経験を活かして私に教えてくれたんだ」と言ってくる。

その言葉に私は「...そうなんだ。やっぱり凄いな。私の好きな人は」と笑顔になる。


「そうだね。...確かにその通りだと思うよ。...私は...少なくとも」


その声に私はハッとした。

それから「由希子...?」と聞く。

すると由希子は「...うん」と返事をする。

泣いている様だった。


「私はカス野郎だと思う。だけど...その分。私は...」

「...」

「...私は何の為に生まれてきたんだろうかって思う。嫌な事も言うし」

「由希子...」


私は言葉に...複雑な顔をしながら由希子の声を必死に拾う。

由希子は涙声になっていた。

私はその事に「...」となって同じ様に涙を浮かべたが。

ぐしぐしと拭ってから由希子に話しかける。


「ねえ。由希子」

「...何。星羅」

「私...一緒に写真撮ったよね」

「...うん」

「コスプレしてさ。私...初めての事だったよ」

「...え?」

「私、貴方と一緒だったから生まれて初めてコスプレ写真を撮ったんだ。本当に人生で初めてだったよ」

「...!」


私は由希子に必死に語りかける。

由希子は無言でその言葉を聞いていた。

すると由希子がその話を最後まで聞いてから言ってきた。


「星羅。...私ね」

「うん」

「...貴方に本当に出会えて良かった。貴方に出会わなかったら在里にも出会わなかったよ。本当に」

「私も貴方に会えて良かったと思っているよ。...私も貴方の事は本当に愛おしいって思っているから」

「...」


声を詰まらせてから泣き始めた由希子。

私はその声を無言で頷きながら聞いていた。

そして暫く啜り泣いて由希子はグスッと言ってから改めて言葉を発した。

拳を握って開いてから、だ。


「何で私と一緒にコスプレの写真を撮ってくれたの?星羅」

「それは私が好きだったから。そういう事をしたいって思っていたから。だけど...私、一歩を踏み出すのがなかなか勇気が無くて」

「...」

「その時に居たのが貴方だった。だから私、貴方と一緒に大切な写真を撮った。...和馬くんにも...たっちゃんにも。ましてや私の友人にもした事が無いよ」

「...そうだったんだね」


由希子はそう返事をする。

私はその言葉に「うん」と返事をする。

そして私は暖かい気持ちを感じた。

それから私は少しだけ考えてからゆっくり由希子に聞いてみた。


「だからさ。生まれてきても意味無かったって言わないで。由希子の言っている事、何も間違ってないしね」

「...アイツにも言われたよ。在里にも...言われたよ」

「...そうなんだね」

「在里...アイツは今まで出会った事の無い良い意味で最悪な野郎だよ。意味不明だし...その。本当に優しいし...」

「そうだね。私が心からとても大好きになった人だしね。心から信頼している」


それから私は赤面する。

由希子はその言葉に苦笑する様な反応を見せた。

そして由希子は少しだけ言葉を選びながら私にこう言ってきた。


「...在里。...まあその。星羅が在里を好きになった理由が何となく分かった気がしたよ。今回の事でね」

「...そ、そう?」

「...そうだね」


落ち着いた感じでだが。

由希子は笑みを浮かべながらな感じで私に反応してくれた。

私はその事に頬を掻きつつ恥じらいながら反応する。

それから私は鼻をかんでから由希子に言った。

意を決意する様に。


「ねえ。由希子」

「...何?星羅」

「...私...貴方とまた何処かに行きたいな」

「...うん。そうだね」


そして私は由希子と他愛ない話をする。

それから私は由希子との絆を深めてからそのまま電話を切った。

由希子にまた会いたい。

とても今直ぐでも大切な人に会いたかった。

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