第12話 各々の感情
☆
たまたまだったのだけど歩いていたら...彼。
在里くんがとても可愛らしい女子と歩いていたのを見て...つい...つい。
声をかけてしまった。
横に居る四角い眼鏡をかけている優しげな顔の進藤夏帆(しんどうかほ)と。
凛とした顔の真面目系の有馬凪羅(ありまなぎら)。
目をパチクリしながら私に「え?」となる。
ギョッとした様な顔をする。
他学校の友人だけど...在里くんの事を知っているみたいな反応だ。
「え、えっと...乙武さん?ど、どうしてここに?」
「うん。実はね。遊びに行く途中だったの。在里くんは?」
「え、えっと...」
すると在里くんの横に居たお人形の様な可愛さのある女の子が私を見てから「すいませんが」と言う。
それから私達を見てから「今、忙しいので...また今度にして下さい」とまるで在里くんを代弁する様に話す。
私はその態度に少しムッとしながらも優しく聞いてみる。
「貴方は...在里くんの妹さん?」
「そうです。私は在里葉月と言います。以後お見知りおきを。では失礼します」
それから在里くんを無理に向こう側に連れて行こうとする。
私はその姿を見てから更にムッとしていると在里くんが「葉月。失礼だよ」と話した。
そして私達に向いてくる。
「不躾な態度。ゴメンね。乙武さん」
「うん。...だけど私もゴメンね。葉月さんには不愉快だったみたいだから」
葉月さんに向いた在里くん。
それから「どうしたんだ。葉月。何だか焦っている様に見えるから」と聞く。
すると葉月さんは私達を見てから「それは無い、けど」と言い淀む。
「...」
「...」
沈黙が流れる。
すると奥に居た夏帆が「あの」と声を発した。
それから夏帆は在里くんを見る。
警戒とかではなく何か疑問符を浮かべる様に、だが。
私は「?」を浮かべ夏帆を見る。
「私、貴方の事...噂が噂だったので良いイメージが湧かない様な感じがしてました。だけど今日、貴方に会えて。貴方のイメージが異なる気がしました、で、だから...」
その言葉に横に居る凪羅が「...私はまだイメージが良い方に湧かない」と言った。
葉月さんが「はい?」と苛立つ様に話す。
何故初対面でそんな事を言われなくてはならないのか、という感じで、だ。
険悪な雰囲気になりそうだったので私は慌てて「ど、どうして?」と凪羅に聞いてみる。
「...私は...星羅。貴方の幸せを祈っているから。だからこそ...見極めたい。友人としてこの人は知り合いで良いのかなって。だから今はイメージが悪い方にしか浮かばない。認めない」
「...凪羅...」
私はその言葉に目線を逸らす。
それから凪羅を見ていると葉月さんが「お兄ちゃんの事を悪く言わないで下さい」と激しく怒った。
そして凪羅を睨む葉月さん。
「...貴方はお兄ちゃんの事を...過去を何も知らない癖に」
過去...。
葉月さんは何かを思いながらそう吐き捨てた。
私はその険悪なムードに堪らず。
「葉月さん。ごめんなさい。私の...友人は貴方達を悪いイメージで捉えている訳じゃないの」
と本当の気持ちを話した。
私達は顔を見合わせてから最後にチラッと在里くんを見る。
在里くんは私を見た。
それから私は彼に頭を下げてから話す。
「アハハ...また出直すね。在里くん。ごめん」
それから私は一歩離れてから踵を返す。
そして離れようとした時。
在里くんが私を呼んだ。
そして私を見てくる。
「有難う」
その一言だけで彼は「じゃあ」と葉月さんと去って行った。
たった一言だったが私はその言葉に大きく救われた気がした。
それから涙を浮かべてからそのまま気が付かれない様に歩いた。
☆
私は...嫌な女の子だなって思う。
そう考えながら私は列車に揺られていた。
だけど多少のわがままぐらい許してほしい。
私はお兄ちゃんを取られたく無い。
お兄ちゃんは心に決めた人だから、だ。
「葉月。有難う」
そう言われて私はお兄ちゃんを見上げた。
お兄ちゃんは私を見ながら「?」を浮かべる。
それから話してくる。
「俺...の事。サポートしてくれて助かった」
「お兄ちゃん...」
「俺の為に怒ってくれたんだよ。...それは本当に嬉しかった」
「当たり前の事だよ。...だって私、お兄ちゃんの義妹だし」
「義妹だから嬉しかった」
「...うん...」
本当はねお兄ちゃん。
私は義妹という立場が嫌いになっている。
貴方の...傍で一生を。
この一生を捧げたいって思っている。
だからこそ義妹という立場が嫌いなんだ。
「彼女に嫌な思いをさせてしまったかな。俺は」
「...そんな事無いよ。私だよ。寧ろそれは」
「...葉月...」
「私が嫌な思いをさせてしまったかもだから」
「...」
お兄ちゃんは私の頭に手を添える。
それからニコッとした。
私はお兄ちゃんを見てから「?」を浮かべる。
「...今回の件は仕方が無いから...大丈夫だ」
「だけど...」
「...気にしない」
「...」
私の頭を撫でるお兄ちゃん。
髪の毛をすうっと触っている感覚に。
お兄ちゃんについ寄り添った。
そしてされるがままの猫の様になる。
「お、おい。葉月...」
「今日はお兄ちゃんは愛人だよ」
「...は?」
「パートナーだよ。...私の。貸切」
「な」
「...他の女の子に目移りしたらやーよ?お兄ちゃん」
そして私はお兄ちゃんの手に私の手を絡ませて握る。
この安心感。
私は噛み締めながら窓から外を見る。
それから私は外の景色を見る。
もうすぐ着く。
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