変人VS変人ラブコメ

鋼音 鉄@高校生

友人編

第1話 クソ教祖とJK

「皆様、ミニスカートは最高です!スカートの下から見える太もも。生でもタイツでも関係ありません。スカートの下に見えている多さ、それが一番大切なのです。皆様は少し叡智に見えてしまったり、見えてしまうかもしれない危うさが気になっているのかもしれません。しかし、私たちはそれを含めて愛しましょう!」


「うわぁ…」


意味の分からない言葉を口から綴る圧倒的不審者の前に引く女性が一人。その人の名前は金城由実かねしろゆみ。高校生であり、同級生の言動に引いている人でもある。

そして、引かれている張本人の教祖は雨宮祐二あまみやゆうじ。所属している高校の中でもトップレベルの変人である。


「ぁ……どうも、金城さん」


「はい、お久しぶりです雨宮さん。最近は湿度も多くなり、体が重くなる時もありますが、いかがお調子でしょうか」


「やめてください。そんな敬語口調で軽蔑した目をするのは」


それを言える立場ではない事を祐二は知らない。この軽蔑されて当然なクソ宗教を畳む事をして、ようやく言える立場へと舞い戻るのだ。


「はぁ…気色悪い」


言葉の一挙手一投足が心に突き刺さるのを感じつつも、祐二は弁解をしようとして口を開く。

まあ、出す言葉がないのに気がついてすぐさま口を閉じたのだが。


祐二はここでようやく実感した。己が立ち上げた宗教は割とクソなのではないか、と。

遅すぎである。


「真面目だと思ってた。でも、とんだ変人だった。私の気持ちを五十字以内で答えてくれます?」


「あの、はい。言い返す言葉もございません」


ため息まじりの言葉でさえ、祐二には反論できない。

その状況、ジリジリと追い詰められているような感覚が襲う現在。とてつもなく後悔をしていた。宗教を作った事に後悔していたのだ。


しかし、自分のミニスカート魂に嘘はない。自分の心の底から好きだと感じたミニスカートに嘘はないのだ。

故に、祐二は考えた。由実にミニスカートの良さを知ってもらえれば良いのでは、と。


雨宮祐二という人間は真性のバカである。


「別に私、人の趣味をどうこう言うつもりはないよ。でも、それを公に出してまで宣言するってのは違うと思うの。雨宮くん、あなたは違う?」


「いえ……全くもってその通りでございます」


結果は完全論破。誰もが見えていた結果であり、裕二だけが見えていなかった結果である。

またまた論破されて気づく。自分のした事はバカが過ぎていたのではないか、と。

非難を寄せていた人に後押しとしてミニスカートの説明をするのは、頭の足りていない人がする事。


その思考が裕二に作られれば、頭の上で行われる行為は一つである。

そう、一人反省会だ。


「いや、あの、本当にすみません」


「まあ、反省してくれたなら良いよ。というかさ、そんなに反省できるなら、どうしてミニスカートを布教するの。雨宮くんなら他人に迷惑がかかるって予想できそうだけど。それにさ、他に楽しい事とかもあるでしょ?」


「友達、いない、から」


「作りなよ。雨宮くんの周り、結構人がいるでしょ」


「うぅ!怖いものは怖いんですぅ!」


「宗教を作る事できて、誘う事できるのに」


確かに裕二にその能力はある。コミュニケーションを交わし、友好関係を結び、居心地の良い関係を演じる能力は。

しかし、能力があるからと言って友達が作れるは別の話になってくるのである。

そんな仮初の面で作った友達、それは自分が危ない時に支えてくれるのか。そして、素の自分じゃない自分が作った友を信じれるのか。


要約すると、雨宮裕二という人間は拗らせているのだ。交友関係という一部に。

ゆえに、裕二が友達と遊んで楽しむ事などは不可能。


「雨宮くん、あなたが変な人間だというのは察した」


「変な宗教やってる時点で察して」


「喧しい。話の腰をおらないの。要はあなた、友達が信じられないんでしょ。だから、これ」


もう、と苦笑いをしつつ、由美は某コミュニケーションツールアプリ、LIN◯を開いてから裕二に差し出した。

その光景、その行動、裕二は信じられなかった。人の話聞かなかったのかこのアホ、と暴言を心の中で吐くぐらいには信じられなかった。

自分では失礼と理性で分かっていても、長年培ってきたマイナス思考は凌駕する。


由美の行動に引き、後ろへ下がれば、不可思議という切手を渡してきた女子おなごは頬を膨らませてスマホで殴打をする。

由美は知っているのだろうか。スマホとは金属でできているという事を。

それで殴打されるのは普通に痛い。いや、普通どころではない。最近で受けた中では一番痛い。


スマホをさっさと出せという事なのだろうか。

なんでも出すので、これ以上のスマホ殴打は辞めていただきたいものである。

それ以上やられてしまえば、あざとなってしまう。


「これで交換したね、LIN◯。さっきまでの話じゃあ友達と遊ぶ楽しさを知らないでしょ。自分の全てを知らないからって遠ざけてるし。でも、私はある程度だけど知っている。楽しませてあげる、遊ばせてあげる。仮の友達だけどね!」


「俺が変わってると言うけどさ、金城さんも変わってるでしょ」


そんな軽口を口にしながら、裕二は笑みを浮かべる。中々浮かべれない、満面の笑みを。

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