第9話 ジェズ、イラーガ、ハンナ
「お、嬢ちゃんやっと起きたのか。あんまり寝てばっかいると乳が育たねーぞ」
「ちょっとジェズ!あんたは・・・もうちょっと女の子に対する言葉使いってものを考えなさいっていつも言ってるでしょ!」
「へいへい、失敬失敬」
今度はおっきな盾を持った無精ひげのおじさんがさっきアンって呼ばれていた子と同じ方向からやってきた。
顔の頬におっきな傷跡があって筋肉も凄い。なんか映画に出てくる外国の軍人みたいな感じ。
「うちのジェスが失礼したねぇ。こいつは女心ってぇのに鈍感でねぇ」
「あんたも大概だけどね。イラーガ」
「ハンナは顔にみあってきっついねぇ」
「そういうとこだっつーの」
ジェズって人は普通の人間だけど、彼と反対側から来たイラーガって男の人は大きな耳が頭の上にあってフワフワの大きな尻尾も生えてる・・・顔や体は普通の人間なのに、なんか変な感じ。
一緒に来たハンナっていう女性も同じように頭の上に耳があるんだけど、イラーガさんの大きな三角形と違ってこっちの人はかなり丸くて少し小さ目な感じ。
イラーガさんが犬の様な形でハンナさんは・・・虎っぽい?
たしか動物園でみた虎があんな感じだった・・・と思う。
「それにしても嬢ちゃんはなんだってあんな馬車に乗り合わせていたんだ?」
「この子も奴隷として働きに行くところだったみたいよ」
ジェズさんの疑問をカデナさんが変わりに答えてくれた。
「へぇ~、そんなぁ服を着ているからどこぞの貴族様ぁかと思ったんだけどねぇ」
おっきな耳のイラーガさんは話し方が特徴的だなぁ。
声も温厚そうな柔らかな感じで語尾を伸ばすから彼からはのんびりとした雰囲気が感じられる。
「お嬢様っぽいのにねぇ。あたしゃてっきり奴隷たちの主人なのかと思ってたよ」
「この子にも色々事情ってものがあるんでしょ。あ、そういえば自己紹介がまだだったわね。私はエルフのカデナよ。一応このパーティーの責任者をやらせてもらっているわ」
やっぱりカデナさんはエルフだったんだ。そうじゃないかと思ってたけど、違っていたら失礼かと思って言えなかったんだよね。
「アタイはドワーフのアン。斧使いだ」
たぶんアンさんが幼く見えるのはドワーフの特徴だったのかな。話し方から察するに子供ってわけでもなさそうだから、たぶんそうなんだと思う。
持ってる斧も
「オイラはイラーガ。見てぇの通り狐人族だぁ」
「いや、人族からしたら狐人族とその他の亜人族の区別は中々難しいと思うぞ。俺はジェズ。この中で唯一の人族だ」
イラーガさんは犬じゃなくて狐だったのね。たしかに尻尾はフワフワだし、そうと分かればそう見えるかも。ただ、ジェズさんの言っていたように自己紹介なしにそうと分かるのは難しいかもしれない。
ジェズさんは・・・うん、眉毛の太い無精ひげのおじさん・・・かな?
「私はハンナ。虎人族だよ。よろしくね」
ハンナさんはやっぱり虎であってたみたい。よく見ると黄色髪の毛にも黒い部分が混ざっているし、虎っぽいかも。
「私は千石勇希です。あ、人族です」
「センゴクユウキ・・・。もしかして大和の人?」
「そ、そうです」
やっぱり嘘を吐くのはちょっと苦手だなぁ。つい同様しちゃう。これからも大和の国出身っていうのは色んな所で言わなきゃいけないだろうし、慣れないとね。
「それじゃ、センゴクユウキは全部名前じゃなくてひょっとして名字もあるのかい?」
「あ、はい。千石が名字で勇希が名前です」
「やっぱりか」
「そうなんだー。ただ長い変な名前なのかと思ってた。アンは大和に詳しいね」
「昔馴染みが大和の出身でね。そいつから色々話だけ聞いていたんだよ」
「へー。初めて聞いた」
大和の国がどんなのかは気になるけど、そこ出身と言っている私が知らないのはさすがに変だから私からは聞けないや。
やっぱり日本と似ているのかなぁー。
「たしか大和は名前に図字を使う変わった習慣を持っているのよね。名前と名字も他の国と順番が逆だし。変わった国よね」
「そうだね。ユウキも図字で書くんじゃないか?」
そんなこと聞かれても・・・図字って何?・・・あ、もしかして漢字のことかな?
違ってたらどうしよう。
「そ、そうですね。一、十、百、千の千に石って書いて千石で、勇者の勇に希望の希で勇希です」
「希望の勇者か・・・。いい名前だね」
「あ、ありがとうございます・・・」
子供の頃はよく男の子に間違えられたから自分の名前はあまり好きじゃなかったんだけど、褒められるとやっぱり嬉しいものなんだなぁ。
「・・・それで、嬢ちゃんのこれからについてはどうするんだ?」
「そうねぇ・・・」
「あ、あの・・・!あつかましいとは思いますが、よかったら皆さんと一緒に居させてもらうことはできないでしょうか!?運動なら自信があるます!一応剣士ですので、きっと役に立って見せます!」
正直戦うというのはあまり自信がないのだけど、ここで生きていくためには自分で出来る事はやらないと・・・。
私の脳裏にさっき馬車から飛び出し、狼に襲われた女の人の姿が浮かび、その姿が自分に成り代わる。
そう、私が助かったのはたまたま運が良かっただけ・・・。
あの人のようになるのは自分かも知れなかったんだ。
「残念ながらそれは出来ないわ」
このパーティーのリーダー的立ち位置のカデナさんに私のお願いは断られてしまった。
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