第26話
いそいそと脱がされかけたスラックスをお尻まで持ち上げる。
「ほんっとうるせーなキャンキャン吠えんなよ…」
私だって好きで吠えているわけではない!頭痛い!
男は盛大な溜息を吐いたかと思いきや、本当はストッキングからちゃんと履き直したいのを我慢して兎に角パンツが見えないようにしていた私に再びのしかかってきた。
「ひ」
「今度俺様の耳元で何か吠えようものなら尻でも突っ込む」
何を言っているのだこの男は。道徳という概念が備わってないのか。
続いて鈍痛響く頭が抱き寄せられた。
体格差の所為で胸元に抱かれる。
「あの…もしかして精気吸い取ってますか…お腹いっぱいになりますか」
「黙れ湯たんぽ」
湯たんぽ…?
「…おまえさっきからあつい…」
それは鼻が詰まっていても判るくらいの良い匂いが目の前に迫っているからでは。
目を開けても閉じても芳しいとは…難があるのは性格と言動だけか。
だけではないか、大事なことだよね。
と思ったが、それを言ってお尻にナニか入れられたらと想像したら大人しく湯たんぽになる以外なかった。どういうわけか、全てこの男の思い通りになってしまっている気がしてならない。私は自由でいたいのに。着替えたい。
こいつ自分はすっかりスウェットで寛ぎやがってぇぇ。
うっかり最後の余力を鼻息を荒くすることに使ってしまった私は、スウェットを纏った相変わらず名前も知らない男の胸元を見つめながらいつの間にか眠りに落ちていた。
「…んと隙だらけだなこいつ…。“隙”作んなっつっただろーが…」
男の言葉は、高い天井へと消えた。
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