第3話
「ゴールデンウィークありがとう」
新居の天井を仰いでまず休日に感謝。
何かと出費は痛いけれども背に腹はかえられぬとはこのこと。
心の中で呟いて、「確かにな」と玄関へ向かう同期の背中を追いかける。
「ぎっちゃん手伝ってくれてありがとう、本当に助かりました」
「俺帰省もないし、全然。何かあったらいつでもお呼び」
引越し業者に加えて手伝ってくれていた心優しい同期はちょっと眠そうだ。今度焼肉でも何でも奢ると約束して見送った。
「一応、落ち着いたか…」
総務部のお姉様に未だ見ぬ社宅の件を(若干)問いただしに行った日から今日まで早かった。否正確にはその日の夜一度面倒くささにやっぱり引っ越しはやめようかなぁ〜もうちょっと我慢できるかもしれないしなぁ〜引っ越したばかりだしなぁ〜などと大の字でうだうだしかけたがその数秒後に隣室から響きだした例の謎の胡瓜音によって決意は揺らぎないものとなった。
胡瓜が背中を押してくれたのだ。
そうしてワンルームだった前の家から越してきて、いきなり間取り2LDKに。
何だこれ。
家賃が安くなってこれだ。本当に社宅って単身者にもここまで贅沢なの…?ぎっちゃんちお金持ちだからか何も突っ込まれなかったな。
不審に思いながらも広いに越したことはないかぁ、と新居を見渡し、呑気にも寂しいから家具買い足そう〜なんて唯一の柔らかいものだったクッションへとふらふら近付く。
煎餅布団はこれを機に買い替えようと捨ててしまった。
めいっぱい抱きしめ、目紛しいなぁ…と最後の独り言を口にした後睡魔に誘われた。
・・・
ふー、と鼻から息を吐き出して目を覚ます。
幅が足りてなかったカーテンの隙間から消えかかった夕陽を感じて、眠ってしまっていたことを察した。
今何時だ?
何度か寝返りをうった後、やっと起き上がり携帯を探す。
カウンターの上に見つけてロック画面を立ち上がらせると
時刻は18:19だった。
「ごはんか...」
掠れた声で食欲を訴え、その指でマップを立ち上げた。
近くのスーパーを検索してみる。
「ん?」
何度検索してみても、最寄りのスーパーはこのマンションの位置を示す。
えっ...マンションの中にスーパーがあるの。
記憶を辿って今日入って来た時のことを思い出したが、確か家具を運んだのは裏口からだった為何の役にも立たなかった。
取り敢えず洗面所に行ってくしゃくしゃになった髪を整えて、財布と携帯だけ持って玄関を出る。
凄い。だとしたら何という便利!
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