海辺ノート

倉木元貴

プロローグ

 まだ肌寒さが残る3月。埋立地の港に造られた、自然生物の保護を目的とした人工海岸で、犬の散歩をしている人物がいた。

 三好七海だ。

 七海は、飼っている柴犬の三太の散歩のついでにこの場所に毎日寄っている。理由は特にない。何となく海が見たいからだ。

 さざなみの音に、砂浜を走り抜ける風。全てが心地よくて、お気に入りの場所だ。

 自然動物の保護用の砂浜だってこともあり、海水浴はできず、水に入触ることさえ禁止されている。入れる場所も決められているため、散歩に訪れる人は少ない。それもお気に入りの理由だ。

 そんな砂浜で突然三太が砂浜を掘り始めた。七海は、必死に三太を止めようとするが、犬の力には到底及ばず、三太は砂浜を荒らす。そこに1冊のノートが顔を出した。誰かの忘れ物だろうかと、ペラペラとノートを捲るが、中には何も書かれていなかった。最後のページまで捲ると、突然裏表紙の内側に文字が浮かび上がってきたのだった。その文字を見た七海は、ノートを海に投げ捨てるのだった。

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