おいロリガキ、ふざけんな!
ひま☆やん
第1話『ふざけんな!』
「アンタを私のお婿さんにしてあげる」
桜の花びらが風に舞い踊る、のどかな春の日。唐突に見知らぬ女の子からそう言われてしまったけど、俺は愛想笑いを返すしかなかった。
何故なら、相手はまだ小さい子供。どう見ても幼稚園児ぐらいの女の子だったからだ。
「ありがとうな。気持ちだけもらっておくよ」
そう、軽く受け流すような返事をした。高校一年生の俺が真面目に相手をする必要は無いだろうし、この子も俺のことなんかすぐ忘れて、明日になれば普通に、同じ年頃の子供達と一緒に遊んでいるだろう。
事の発端は、道端で迷子らしき女の子を見かけたことにある。その子は外人なのかハーフなのか、金髪に青い瞳、ロリータファッションに身を包んでいて、まるでフランス人形みたいな容姿をしていた。
周りに保護者らしき人もいなかったし、辺りをキョロキョロしていて、たぶん迷子だろうと思った。
見ず知らずの赤の他人とはいえ、さすがに放ってはおけないし、声をかけて交番まで連れて行くことにする。幸い、普通に日本語を話せるみたいでホッとした。
近くの交番に到着すると、何か執事みたいな爺さんがいて、焦った感じでお巡りさんと話していたけど、俺が連れて来た女の子を見た瞬間「お嬢様!」なんて大声で言ったのでビックリした。
とりあえず保護者らしき人に引き渡したところへ、さっきのセリフだ。こんなことで一々プロポーズしていたら、この子は一体どれだけの男と婚約するのだろうか。
まぁ、そういう将来の一大事を考えられない程にガキなのだろう。だから俺も、この時は軽く受け流すだけだった。まさか後々、死ぬほどクソ面倒な話に発展するなんて思わなかったし、マジでふざけんなよと。
「
何をどうしたらこうなったのか? 理解に苦しむのだけど、この前助けてあげたロリガキ(ロリータファッションのガキ)が俺のクラスに編入して来た。
イヤ、何で? あのロリガキがウチの高校に編入して来るとか、意味不明なんだけど? 義務教育すっ飛ばして俺と同じ高一の教室に入るなんて、明らかにおかしいだろ?
「え〜っと、豪天寺さんはまだ5才ですが、とても優秀な方でして、既に海外の大学を卒業しているそうです。学力的に問題無いということなので、特別に我が校への編入が認められました。ちなみに、編入試験も全教科満点を取っています」
先生はそう説明したんだけど、それマジなのか? あり得ねぇだろ? あんなロリガキが、既に大卒なのかよ!?
教室内は一気にザワついた。みんな信じがたい話にビックリしているし、何人かは「かわいい〜」なんてのん気なことを言っている。
まぁ、見た目は確かに可愛いのかもしれないけど、まだガキだぞ? 5才のガキが高校に編入して来たというインパクトの方が、俺には途轍もない違和感なんだけど。
「優司、エスコートしてちょうだい」
そう名指しで言われたけど知らんわ。変に目立つようなことはやりたくないし、俺はお前の面倒を見る保護者じゃないんだよ。
聞こえないフリをしていたんだけど、教壇の方からしつこく「優司、優司」と名前を呼ばれている。何で俺がお前の面倒を見てやらなくちゃいけないんだよ? 頼むから、俺を変な騒動に巻き込まないでくれないか。
「優司殿、華蓮お嬢様がお呼びになられていますぞ! 紳士たる者、淑女をエスコートするのは当然のマナーで御座いますぞ!」
いつの間にか執事の爺さん……、
渋々ロリガキを迎えに行ってやるが、教壇から席に移動するわずかな時間、同級生からの視線が突き刺さるように痛い。まぁ注目されるのは当然だろうけど、全然納得いかない。何で俺がこんな目に遭わなくちゃいけないのか……。
あのロリガキを交番へ連れて行ってあげた次の日、突拍子も無い展開にビックリした。どこから情報を得たのか知らんけど、ロリガキの父親がわざわざ俺の家まで礼を言いに来たのだ。
俺の家は全く人気の無いラーメン屋。地元のわずかな常連客だけが頼りの、いつ潰れてもおかしくない、ショボい店を細々と経営している。
そんなショボい店には似合わない、見るからに住んでいる世界が違うであろう上流階級の人がやって来たのだ。娘を助けてくれてありがとうだとさ。
「それで優司君……、華蓮とどうだろうか?」
そう聞かれたけど、何のことだか分からず返事に困ってしまった。どうだろうかって、何がどういう話なんだろう?って。
「華蓮は既に、決心しているようでね。私も父親として嬉しい限りだよ、ハッハッハッハッ」
そう、最後には笑い飛ばされたけど、決心って何の話だよ……って、まさか、アレのことか!?
「それって……、ひょっとしたら、お婿さんにっていう……?」
そんな馬鹿なと思った。こんな小さい子供の言ったことを真に受けるなんてあり得ないし、そもそも昨日、迷子になっていたのを交番まで案内してやっただけだぞ!?
「無論、その話だよ。華蓮の婚約者として、君を迎え入れたい」
はぁ~!? このオッサン、頭イカレてるのか!? 庶民である俺にとっての常識が、上流階級の人間に根底から否定され、粉々に打ち砕かれたような衝撃を受けた。何でそういうヘヴィーな話を笑顔で言えるんだよ!?
突拍子も無い話に衝撃を受けて
「優司、これは運命の出会いなのよ。アンタには私のお婿さんになってもらうから。覚悟を決めてちょうだい」
そう、ヘヴィーなことをサラッと言われたけど、何で受け入れる前提の話をしているんだよ!? お前ら、一家揃って頭イカレてるのか!?
おいロリガキ、ふざけんな! ひま☆やん @himayan
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