青春の教科書
ゆきな
第1話
青春が終わった。
私、渋野うたのはつい昨日2年と3ヶ月お世話になった高校を中退した。
原因はうつ病になって学校に行けなくなったことだ。
うつといえば、なにか辛いことがあったのではないかと思われがちだが、特にそんなことはない。
1つあげるとすれば、バイト先のクレーマーに怒鳴られたことぐらいだ。
私の学校生活はそこそこ充実していた。
楽しかった遠足に体育大会、文化祭。
友達も人並みにいたし、放課後に遊ぶ友達もたくさんいた。
部活動にも入っていて、県大会にでるくらいの実力だった。
それなのに…中退だ。
青春の日々は早くも16歳で終わってしまったのだ。
不登校になって2ヶ月。
いろいろあって結局退学となってしまった。
来月からは通信制の高校に通おうかなんて母に言われたけど、到底やる気は出ない。
部活に必死になった青春。
テスト勉強を仲良しグループでした青春。
それらはもう帰ってこないのだと思うとため息が漏れる。
ベッドで仰向けになり天井を見つめる。
不思議な柄をしていた。
最近やっていることといえば、パソコンで接客しなくていい職業をしらべることぐらいだ。
外出は近所のスーパーに行くことくらいしかしていなかったが、今日は電車に乗ってメンタルクリニックに行こうと思う。
1週間前に自力で予約したのだ。
未成年は保護者同伴じゃないとだめらしかったので、母もついてくる。
今日はお気に入りのワンピースを着ていこう。
先週もうやめたバイトの給料で買ったものだ。
母が鍵を閉める音を合図に私たちは駅に向かって歩き出した。
電車にガタゴト揺られて、2駅先にあるメンタルクリニックについた。
窓口で名前を告げ、待つ。
その時対応してくれた看護師さんがひどく優しくて、私は感動してしまった。
優しい笑顔だった。
それに患者さんたちも静かだけど、優しさが滲み出ていた。
詰めて座っていたり。
もちろん看護師さんにブチギレている人なんていなかった。
私は診察を受け、薬をもらって帰った。
(あそこで働きたい!!!)
私の心が叫んでいた。
優しい人ばかりのあそこで働きたい!
私は必死にあの病院に就職する方法を調べた。
また、看護師になる方法も調べた。
看護師になれる大学も調べた。
高校生のうちにできる勉強も調べた。
夢中になったいた。
そして私は気づいていたのだ。
夢中になっている、今こそが青春なのだと。
楽しかった。
何も知らないから、必死になっている自分がかわいかった。
青かった。
きっと、青春に正解なんてない。
青春の教科書 ゆきな @tamagosann
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