第26話 桃源郷ステージ
俺達はそれからもただひたすら頂上を目指して進む。標高10,000mで様相が一変した。
広い平らな土地が広がっている。下界の植物が生い茂っているし、温度も空気も下界の状態だった。
(本当にここは標高10,000mなのか?)
「それで私達はここからどうすれば良いのでしょうか?」
「そうだな、どうやらここには希少な果実が自生しているようだから鑑定しながら有用な物を収集していこう」
「そだね、あたしら収集人なんだよね。戦闘狂じゃなかったよね。忘れてたけど」
「忘れてたのかよ!」
「第1果実発見」
恵が見つけたのは【不老の桃】だった。
不死ではない。首を刎ねられたら死ぬし、心臓を剣で刺し貫かれたら死ぬ。
「最初からとんでもない物を見つけてしまったな」世界中の権力者が欲しがるヤバイ代物だな。
「でも世界中の女性もが欲しがる逸品ですぜ、旦那」
「メアリー、なんだその悪徳商人みたいなセリフは」
「えへへ、おっとこっちには禿梨(禿無し)がいっぱい有りまっせ、旦那、中高年男性憧れの逸品でさあ」
「確かに最近抜け毛が増えたようなって、何言わせるんだ!」
こっちにはミカンそっくりのポクリの実。
食べると最期の瞬間を苦しまずに痛みも無く逝けるのだがその最期の時期は誰にも判らない。
老人達が欲しがると思われる果実だ。
俺達は次々見つかる不思議な効能の果物を収集していく。
「ここって昔話に出てくる【桃源郷】か?【マヨヒガ】か?」
こんな果樹園がどこまで続いているんだろう?とちょっと上空に飛んでみると、さっき取り尽くしたはずの果樹がもう前のようにたわわに実を付けている。
ずーっと遠くに人の住んで居そうな小屋というか
「少しずつ飛んで移動してむこうの建物に向うぞ」
「らじゃ」「はい」
歩くよりわずかに速い速度で横1列になって自動収集しながら目的地に向かう。
途中で移動を止めてしまった。
【収集人御用達の果実】を見つけてしまったからだ。
1本の小枝に様々な色のチェリーみたいな小果樹が生っている。
赤の実は
1粒食べると【生命力回復】もう1粒食べると【保有生命力量増加プラス10】
試しに食べてみると甘くて美味しい。
(同じ色の実につき【1日1房】のみ食べることが出来る。それ以上は身体が受け付けない)以下同様。
ピンクは
【魔力量回復、保有可能な魔力量プラス10】
黄色は
【スタミナ回復、スタミナ増加プラス10】
オレンジは
【俊敏性増加プラス10】
緑色は
【力プラス10】
紫色は
【攻撃の威力プラス10】
白色は
【聖魔法を覚える、元々使える者は威力プラス10】
黒色は
【闇魔法を覚える元々使える者は威力がプラス10】
以上どの色の実も1日に1房(2粒)食用可能
だった。
とうとう俺も治癒魔法も呪い魔法も使えるようになった。後は毎日各色1房ずつ食べて威力を上げることにする。
果たしてどこまで威力を上げることが出来るか自分で人体実験することにする。
そうこうしているうちに目的の庵に着いた。
「御免ください、どなたかいらっしゃいますか?」
外から声をかけてみる。呼鈴のボタンが見当たらなかったからだ。
「どーれー」
時代劇の道場破りの道場主みたいな返事が帰って来た。
「随分と礼儀正しい道場破りじゃのう」
白髪白髭の老人が出て来た。まるで仙人のようだ。
「ささ、狭い所じゃが遠慮せずに、入られよ」
言われるがままに入るとそこは板敷の道場のようだった。外観からは考えられないほどの広さだ。例えるなら高校の体育館の広さだ。
「ほほう、そなたは日本刀を使われるようじゃな、ならばこの木刀が良かろう」
「そこの実目麗しい女子にはこの仙人の杖が良かろう。そちらの活発そうな美少女には西洋型の木剣が良いじゃろうな」
美少女と言われたメアリーはニコニコしている。
『えへへ美少女だって!あたしもう20歳だけど』
そうだったのか俺は女性の年齢は鑑定していなかったからまだ10代かと思っていたホントだよ鑑定で盗み見なんかしていないからな。
「さあそこの強者殿からかかって参られよ」
知らぬ間に剣術の教えを乞う形になっていた。
強い!最近やっと【剣術S】を手に入れたばかりの俺では敵わない強さだ。
それでも持ち前のスタミナと俊敏性のおかげでなんとか戦えている。戦っているうちに【いなし】とか【フェイント】とか和洋入り混じった技を習得していった。
最終的にはスタミナと力押しで1本とることが出来た。
恵は杖術を極めていってるようだ。メアリーも盾を持たされて片手剣を学んで行った。
「いやあ御見事、御見事で御座った。皆さんそれぞれに短時間でご自分の得意な技を会得なされたようじゃのう。良きかな良きかな」
仙人風の老人はそう言って消えた残された俺達はダンジョン入り口に転送されていた。
みんなの手首には入り口から桃源郷迄の転移装置が嵌っていた。どうやらステージクリアしたようだった。
面白い。このダンジョンはまだまだ色んなステージが有るんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます