第15話 採卵受精そして孵化
いよいよ【オーロラトラウトサーモン】の採卵、人工受精の日がやって来た。室内の孵化槽を浄化して水を流しておいた。サケマス卵は太陽光を嫌い、動かしても死にやすい。孵化してもお腹の
別のやり方として池の底に砂利を敷き詰めておいて、卵に眼が発生したら(発眼という)少しぐらい動かしても死ななくなるので砂利池に散布して池に蓋をしておく。1日1回は蓋を開けて卵が大量に死んでいないか確認する。そして仔魚が浮上したら蓋を開けっ放しにして丈夫な稚魚に育てるのである。勿論餌やりも開始する。
孵化槽や池の排水口には孵化した仔魚が逃げないように目の細かい網を張っている。負荷が始まると、卵の殻が流れてきて網の目が詰まってしまうのでしょっちゅう掃除しなければならない。
なので排水溝付近に清掃魔法を組み込んだ魔石を設置して置く。
魔法を使えるお陰で大分楽させてもらっている。
さて人工採卵開始だ。
ストレージから取り出した採卵可能な雌魚の尾鰭の元を掴んで腹側を右にして(俺が右利きなので)右手に持ったナイフで腹を裂く。ナイフを置いて右手で卵をかき出して洗面器に入れる。1尾から約3,000粒3尾から採卵したら雄2尾を用意して誰かに頭を持っていてもらって洗面器の卵に雄の腹を掴んで精液を回しかける。雄は1尾だけでも十分なのだが受精能力の無い個体が居ることを見越してもう1尾の精液を回しかける。それから綺麗な淡水をいれて鳥の羽で優しくかき混ぜる。この水を入れた瞬間に受精が完了するのだ。(卵に精液を掛けただけでは受精しないのである)
この受精卵を卵が通り抜けない幅の間隔約5㎜長さ2㎝の長方形の金属製の網を木枠に取り付けたアトキンス式孵化器に静かに移して孵化槽に設置する。卵から孵化した仔魚は網の目をすり抜けて下に落ちるのだ。そこに砂利を敷いて置けば仔魚は砂利の隙間に潜り込んでじっとしていて、浮上する時を待つのだ。採卵受精を繰り返して10尾分約3万粒を人工受精した。だが、全部が成魚になることは無い。約70%が成魚に成れれば良い方だ。
約2万尾を売り物に出来れば良いだろう。
だが、念の為に雌親魚5尾、雄親魚3尾をストレージに収納しておいた。
ところで、この孵化器には黒のエナメル塗料を塗布して有る。金属の網が錆びないように、木枠が腐らないようにだ。
地上では真夏の暑くて、風が吹いている日に作業を行う。シンナーの匂いでやられるからだ。暑い日を選ぶのは早く乾かす為である。毎年100枚以上塗らなければならないのだから。サッサと作業を終わらせたいのだ。
ダンジョン内では四季が無いので火魔法と風魔法を使っているので何時でも作業可能だ。色が黒なのはオレンジ色の卵が見やすいからだ。
普通鮭が孵化するまで積算水温480度で孵化する。北海道では水温8度で60日で孵化するそうだ。つまり平均水温10度なら48日で孵化するのだ。
ところで【オーロラトラウトサーモン】は積算約400度で孵化する。
ここの地下水の水温は平均10度だ。
発眼迄20日、孵化まで40日。
孵化槽の注水口に浄化と酸素供給の魔石を設置しておいた。
発眼したら動かしても構わないので死卵の除去作業を行う。
死卵の数を数えておく。死卵は白く硬くなっているが無精卵は半透明のままだ。それも除去する。やはり雄の1尾は受精能力がなかったようで無精卵が多かった。だがまあ想定内だ。それを見越しての採卵数だったからだ。
やがて仔魚は浮上して餌を食べる様になった。
養魚の餌は鮭用と鱒用の2種類を試してみたが浮上直後の餌は小さな稚魚なので鱒用を使って大きくなるにしたがって鮭用のペレット餌を使た方が効率が良くなる事が解かっっている。
魚体が100gくらいになったころからB級ダンジョンの100階層に棲むエビに良く似た【エビモドキ】を餌に混ぜて食べさせると身の色が赤みを増して来る。大量に発生するので大量に捕獲して乾燥させても良く食べるので便利に使っている。ここのダンジョンでも発生しないか試しているが今のところ成功していない。水質が良すぎる為かも知れない。なので年に2回はB級ダンジョンに【エビモドキ】を捕獲しに行っている。
オキアミを買うよりも魚肉の色上がりも良く経済的にも安く済んでいる。
最近【転移スキル】を手に入れたので簡単に行き来出来る。その内に紫苑も連れて行って捕獲を覚えて貰おうと、思っている。
養魚場の敷地を結界で覆っているので落ち葉やゴミが飛んできて池に入ることもない。
時々魚体を測定して、1池に入れておく適正数になるように管理しなければならない。
池をあと4面増やした方が良さそうだな。最近は4年魚、5年魚の注文が増えているので水深の深い広めの池を作っておきたいところだ。
最近は紫苑1人で問題無く管理出来るようになった。次はお得意様の配達も出来るように教えて置きたい。その時はまた留守番スタッフを頼むことも考えておこう。
採卵に使用した魚はいつもお世話になっているお店や個人にプレゼントしている。高価過ぎて買いにくい【オーロラトラウトサーモン】を食べれるとあって、皆さんに喜ばれている。売り物の魚よりも多少味は落ちるが、これはこれで又美味しいと人気が有る。
流石に高級レストランや料亭ではお店に出すことは無い。賄い料理で食べられているらしい。
そんな時3番目のS級ダンジョンが発見されたので俺に入って調査して欲しいとの連絡が桜から有った。
桜にはいつもお世話になっているので断わる選択肢は無い。
紗耶香と相棒の女の子に連絡して、紫苑と一緒に留守番をしてもらう事にした。
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