第12話 秋葉式【エリクサー】調薬法

 所有している【調薬スキル】のおかげで調薬の手順が判る。

 ダンジョン庁に報告する際に、実際に作って見せなければいけないかも知れないので練習しておこうと、やってみた。

 何度か繰り返して最も効率的に出来る方法を習得した。

 そのせいか【調薬スキル】もSになっていた。

 明日はダンジョン庁東京本部に行ってこれまで収集してきた素材を売ってこよう。桜に電話を入れて、鑑定人にも同席してくれるように手配を依頼した。桜にも無事に自動人形オートマタを手に入れたことは報告して、紫苑の写真も送ってある。

 桜から紫苑の為に服をプレゼントしてくれると言うので年齢18歳、身長165㎝、であることと、靴のサイズ、3サイズを教えておいた。紫苑いわく、バストはDカップだと言う。体重は秘密だと言うことだった。


 翌日俺はダンジョン庁東京本部に居た。受付で自分の名前を告げると、直ぐに桜が来てくれた。なんと、長官の坂本さんもいる。

 挨拶を交わす。坂本長官とは何度も会って会話もしている。60代の気さくな人だ。御自分も収集人としてダンジョンに潜ったことも有るらしく、話が合う。収集人の苦労も良く判っている人だ。

 もう1人作業服を着た女性が居る。40代と思われる眼鏡美人さんだ。

「本日鑑定を担当させていただきます、西村と申します。秋葉さんとは初めてですが。お会いできて光栄です。よろしくお願いいたします」

「始めまして秋葉と申します。本日はよろしくお願いいたします」

 その他にも5名素材買い受け担当者の人たちが控えていた。

 俺達はまず先にエリクサーの調薬を見てもらって鑑定して頂く事にした。


 作業台の周りに集まって貰い、説明しながら作業していくのだ。


 「ここに毒竜の毒とヒュドラの毒があります。これに第1S級ダンジョンで収集した、薬効反転草のしぼり汁を加えますと毒竜毒の解毒薬と、ヒュドラ毒の解毒薬が出来ます。西村さん鑑定お願いいたします」

「はい、確かに2種類の解毒薬が出来ています」

「では次に、これも第1S級ダンジョンで見付かった完治草と氷竜ダンジョンに生えていた薬苔【エリクサーの素その1】と第1S級ダンジョンで入手した【エリクサーの素その2】と【エリクサーの素その3】を加えてしばらく置いておきます。


その間に【呪い草】のしぼり汁に【薬効反転草】のしぼり汁を加えて【解呪薬】を作っておきます。これと先程混ぜて置いた【エリクサーの素】混合液にヒュドラからドロップした【再生液】を加えて、俺の水魔法の水を投入して温度60度~80度の温水で10分間静かにかき混ぜます」俺はコンロの火加減を調整しながら沸騰させないようにしてかき混ぜて行く。


 そして10分経ったところで西村さんに鑑定して頂く。

「確かに【エリクサー下級】と出ています。これで完成でしょうか?」

「いいえこれに【添加草】のしぼり汁を加えて一煮立させて濾過フィルターでろ過して常温になるまで冷ましたら完成です。もう1度鑑定をお願いします」

「はい今度は【エリクサー特級】となっています。どうしてでしょうか?」

「それはこの【添加草】のお陰です。これ自体に薬効は有りませんが、調薬の際に用いますと

作りたい薬の効能を大幅に増幅させる効能が有るのです。

 これのしぼり汁を加えると中級になりますが最後に一煮立ちさせてろ過して不純物を取り除くことによって特級になるのです。


「これなら何年も前に手足を無くした方でも再生できるはずです。その他どんな病気に効いて、どんな病気には効果が無いとか効果が薄いとかは専門期間で臨床試験していただかないとダメだと思います」

「そうですね。ではこの調薬法は【秋葉式エリクサー調薬法】としてダンジョン庁に登録しておきます。試験結果が出たらお知らせしますね」

「いえ、出来れば秋葉式ではなく、日本のダンジョン庁式でお願いします」

「なんでだねこのレシピを売れば大儲けできるだろうに」と、坂本長官。

「いいえ、世界中の製薬会社やその後ろにいる権力者に眼を付けられて面倒事に巻き込まれたら嫌ですよ。俺だけなら身を守る自信は有りますが、家族や友人、大切な人達を人質に取られたら大変です」

「うむ、人の命など屁とも思わぬ国家が少なからず有るからなあ、判った。俺の一存で日本ダンジョン庁で登録して置く。危険が無いと確信できた時には秋葉式に戻すぞそれでいいな。ここに居る皆もそう心得てくれ、絶対に秋葉君が関わっていることは洩らさないようにな」長官の坂本さんの一言でそう決まった。

「「「「「承知致しました」」」」」


「それはそうと紫苑ちゃんに会わせて欲しいんだけど」

 桜が言った。そうだ。紫苑の洋服をプレゼントしてくれると言っていたな。

「今召喚するのでその辺空けて下さい」


 ブレスレットを操作して紫苑を呼び出す。

「まあ、可愛い。美人さんね」

「実に人間そっくりだな。メイド服は秋葉君の趣味かな?」

「とんでもない!この子を開発した大賢者の趣味だったようです。多分ですがその大賢者は元日本人だったのではないかと推測しています。転生者とか、召喚された人物とかの」

俺は全力でメイド服は俺の趣味では無いと否定した。

「成る程、大いにあり得るな」


「どれどれ肌の感触はどんなものかな?」

 とインテリそうな男が紫苑の腕や胸を触ろうと手を伸ばした。

「駄目だ!やめろ!」俺は叫んだ。

「この無礼者!」

 紫苑が叱咤して男の手を軽く払った。

「痛えー!!!腕が折れたー!!痛い痛い痛いー」

 男が泣き叫ぶ。どうやら骨折したようだ。

「私に触れて良いのは御主人様の秋葉様と、秋葉様に許された女性だけよ。あんたみたいな礼儀知らずなゲスな男に私に触れる権利は無いわ!そんな弱っちい腕なんかエリクサーを1滴飲んでおけばすぐに治るはずです」

 紫苑の言う通り、スポイトで1滴飲ませるとたちどころに折れた腕は完全に治った。

 流石エリクサーだ。

 それにつけても軽く払っただけで簡単に男性の腕が折れてしまうなんて今後は充分に気を付けて貰わねばなあ。手加減を覚えさせよう。


 1滴で完治するのであれば魔法水で希釈出来ないかな?上級ポーション並みの効能を持つエリクサーよりも安価な特効薬が作れそうだ。

 そう言うと坂本長官が頷いて庁の職員に実験させてみると約束してくれた。


 その後、桜と西村さんによる、紫苑の着せ替え人形と言うかファッションショーの時間になった事は言うまでもない。

 やっと落ち着いたら収集して来た素材を売ろう。

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