第7話 S級ダンジョンへの挑戦

俺はあたらしく発見されたS級ダンジョンの入り口前に来ている。

第2S級ダンジョンの名前が付けられていた。

入り口の上の壁にはご丁寧にSと特Sの文字が掘られていた。自動的に彫られていたみたいだった。門番は居ない。入場条件に満たない者は物理的に弾かれる。力量の低い物は入れないので、S級収集人はダンジョン内での生命維持は自己管理が義務化されている。つまり国が責任を負う事は無いのだ。

で、特Sになったばかりの俺もすんなりと入場することが出来た。


第1階層は死霊系だった。毎度おなじみのスケルトンが出迎えてくれた。たかがスケルトンと侮るなかれ、S級ダンジョンでは最弱モンスターでもC級ダンジョンの1階層主並みの実力が有る。


その筈なのだが俺の浄化スキルが発動すると俺に近付くだけで勝手に消滅していくのだ。俺の本拠地【ポイズンダンジョン】で生活していただけで大きく能力がアップしていたみたいだ。

ドロップ品の魔石とスケルトンの剣がどんどん収納されていく。

スケルトンの剣は銅剣からミスリル剣まで色んな金属使われている。恐らく他のダンジョンに挑戦して散って行った者達の遺品であろうと言われている。つまり、ダンジョン間は何らかの方法で繋がっているのだと考えられている。


2階層はこれもお馴染ゾンビの登場だ。ホラーが苦手な女性にとっては正にS級ダンジョンだ。臭くてグロくて、倒しても倒しても起き上がって来る終わりの見えない恐怖。精神的ダメージ。

だがそれでも俺には何のダメージを与える事は無い。

俺の浄化スキルで成仏していくゾンビ達は最期の瞬間に俺に感謝するような表情を見せて消えて行った。

因みにゾンビのドロップ品は魔石だが、怨霊退散怨念浄化の力が有るとされていて、全国の寺院、神社、キリスト教教会に売れているそうだ。

 そして2階層の主は【ゾンビドラゴン】だった。

 2階層からこんな強力なモンスターが現れるなんて流石S級ダンジョンだ。

 ゾンビドラゴンの大きな武器は口から吐き出す腐蝕液だ。それと腐った体全体から湧き出す瘴気が人間の精神を蝕んで、戦闘不能に陥れる。

俺は瘴気を防ぐためにドラゴンの身体全体を結界で覆う。次にその結界の中に浄化魔法を送り込む。苦しんではいるが倒れるまではいかない。なので魔力量を100倍に増やしてみる。

苦しさが増して暴れ回る。魔力量1000倍に増やす。結界内が激しく光ったり暗くなったりしていたがやがて【ゾンビドラゴン】は消え去った。

ドロップ品は大きな魔石と【腐食液の素】と書かれた大きなガラス瓶に入った紫色の液体だった。20ℓ分は有るだろう。

腐食液では無いだ。

これをどうすればよいのか、今はまだ判らない。その内判るだろう。


3階層に入る。そこは漆黒の闇空間だった。

真っ暗で何も見えない。感覚を研ぎ澄ます。

突如右横から何かが突き出された気がして紙一重でそれを躱すと同時にそれを掴もうとするがサッとひっこめられた。

「聖なる光!」

生活魔法の【ライト】に浄化魔法を乗っけた俺独自の対死霊系モンスターの攻撃魔法を放って敵を特定して倒す。

灯りに照らされたそいつは全身真っ黒な槍を持った兵士だった。

暗黒幽霊騎士と呼ばれるモンスターだ。そいつは槍と魔石を残して消えた。再び闇に包まれると今度は俺の周囲に大勢の暗黒幽霊騎士の気配が現れて槍やら剣やらの攻撃を加えて来た。

「【聖なるホーリーライト100倍」

俺を中心に半径100mを照らすと俺の周囲に居たそいつらは次々消え去って大量の魔石や剣と槍が残された。


今度は遠くから矢が飛んで来た。真っ暗なのに良く俺が見えるものだなと感心する。

飛んで来る矢を掴んだり払ったりしているうちに俺の目も暗闇に慣れてきてハッキリと見える様になった。

『【暗黒視スキル】を獲得しました』との声が聞こえた。


弓の射手は5人居た。俺はそいつらに指向性の強い【聖なる光】を放って倒す。


そこの階層主は【エンペラーデュラハン】だった。馬に乗って暗黒魔法剣を持った首無し騎士だ。

暗黒魔法剣は振るだけで地獄への転送魔法を撃てると聞く。

まずはその剣を何とかしなければならないな!

俺は頭をフル回転させる。


『金属腐蝕液を作りますか?』と天の声。『はい』と答えると俺のストレージの中で色々と動いている。まるで姿の見えない妖精たちが働いてくれているように思える。


【ゾンビドラゴン】のドロップ品の【腐蝕液の素】に【炎竜ダンジョン】で入手した【新種の薬草】の搾り出した液を混合しているようだ。


それが完成するまで俺はデュラハンの攻撃を躱し続ける。

何度も剣から放たれた転送魔法を避けているうちに今度も【絶対防御スキル】を獲得した。このダンジョンはスキルを獲得しやすいのだろうか?

試しに魔法剣から放たれた転送魔法を【絶対防御】のスキルを発動すると、弾き返すことが出来た。

弾いた転送魔法がデュラハンが抱えていた首にあたって消失した。奴は慌てふためいている。首だけ地獄に行ってしまったのだろうか?

『金属腐食液が完成しました。何処に取り出しますか?』と訊いて来たので

『デュラハンの持っている魔法剣』と答えると

紫色の液体が狙い通りにデュラハンの魔法剣に降り注いで忽ち腐食して朽ちて行った。

『【調薬スキル】と【転送スキル】を獲得しました』

今日はスキルのバーゲンセールか?思わず突っ込んでしまった。


今度はこっちの攻撃の番だ。

デュラハンを浄化結界で囲み【浄化魔法1.000倍で弱らせる。

首を失ったデュラハンは力が出せないのか呆気なく消え去ったのであった。

ドロップ品は魔石と新品の剣だった。その剣は魔法剣ではなく、オリハルコンの剣だった。

剣術を使えない俺には無用の長物かも知れないが切れ味はミスリルをも切裂くと聞いているので大事に持っておこう。

『【剣術スキルC】を獲得しました』

俺の嘆きに反応したのか【剣術スキル】を入手してしまった。

C級だと中堅剣士位の腕前だろうか?有難いことだ。

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