日常

1day

第1話

SIDE kai。


「痛っ」



ピリッとした痛みの直後、指先に出来た傷から少し血が出てしまったのが見えた。



「カイさん!大丈夫?」


「大丈夫だよ青山ノア。これくらい痛くないよ」



放課後の部室。練習前の時間、青山の近くでスコアを整理していた俺は紙で切れてしまった指先を心配してくれる青山に苦笑した。


「あたし絆創膏持ってるから、指出して下さい」


ピンク色の可愛らしいポーチから、何やら可愛らしい絆創膏を出す青山。


「いや、大丈夫だよこれくらい」


なんだか照れ臭くなり髪をかこうとした手を取られ小さな手が俺の指先に絆創膏を巻いてくれた。


「ありがとな」


気恥ずかしさもあり短くお礼を言った俺に、青山ノアはいつも通りの人懐こい笑みを浮かべた。



そんな俺は、ギラギラと光る三つの視線を背中に感じて苦笑した。




「おい」

「ノア」

「青山」




一斉に口を開く3名。


さっきまでギターを触ったりお菓子を食べたり携帯をいじったり好き放題していたくせに、


どうしてそういった嗅覚ばかりは効くのだろうと俺は呆れる。

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