「日本のアメリカに対する第二次無条件降伏」 日米統合という新秩序へ向けての長い道のり
向出博
第1話
プロローグ
2030年、日本は経済停滞と急速な人口減少により危機に瀕していた。
国際的な影響力が低下し、国内でも希望を失った若者たちが増え世相は乱れつつあった。
一方、アメリカは何とか世界のリーダーシップを握り続けていたが、内政問題をはじめ、中国やグローバルサウスの台頭による国際的孤立化の兆しが見えていた。
第1章: 統合の決断
絶望的な状況の中、日本政府は国家の存続と国民の生活を守るため、驚くべき決断を下した。
それは、アメリカに日本統合を申し入れるというものだった。
この決断は国民にも国際社会にも衝撃を与えたが、現実的な選択として支持を得ることに成功した。
第2章: 難航する交渉
最初の交渉段階では、日本は一定の自治権を保ちつつ、アメリカ合衆国に統合されることを希望していた。
しかし、アメリカ国内では、この申し入れに対して強い反発が起こった。
多くのアメリカ人が、日本の文化的、政治的違いを理由に統合を拒絶し、議会でも反対意見が多数を占めた。
第3章: 国際的な圧力
この交渉の難航を見て、中国、北朝鮮、ロシアなどの周辺国は、日本の統合に対して強い警戒感を示した。
特に中国は、極東でのアメリカの影響力の拡大を恐れ、グローバルサウスに働きかけ、国際的に圧力を強めた。
北朝鮮は統合の動きを「帝国主義的な拡大」と非難し、ミサイル実験を強行するなど緊張が高まった。
ロシアもまた、極東地域での軍事活動を活発化させ、日本とアメリカの統合を牽制した。
第4章: 大幅な譲歩
これらの国際的な圧力とアメリカ国内の反発を受け、日本政府は大幅な譲歩を提案した。
日本は無条件でアメリカに統合され、完全にアメリカ合衆国の一部となるというものだった。
統合に向け、公用語は英語に変更され、教育制度や行政機関もアメリカの基準に合わせて改革が進められた。
日本の提案は、要するに日本を捨てアメリカになるという、譲歩というよりはむしろ無条件降伏だった。
第5章: 言語の壁と社会文化闘争
英語が公用語となることに対して、日本国内では尋常ではない反発が起こった。
特に日本語しかできない高齢者やインテリ層からは、生きていくことができなくなるとして暴動が頻発した。
街頭では抗議デモが絶えず、メディアでは連日この問題が報道された。
政界官界、法曹界、経済界や学界などあらゆる分野で英語ができる人間による下克上が始まり、これまでの権威が崩壊していった。
日本のトップも州知事となることから、英語が堪能な政治家が選ばれることになった。
第6章: 通貨統合の試練
統合に伴い、円をドルに統合する過程で大きな問題が発生した。
日本側は1ドル=100円というレートを提案したが、アメリカはこの提案を一蹴し、1ドル=160円というレートを強硬に押し付けた。
この決定により、日本国内ではインフレが発生し、生活コストが急上昇し、多くの人々が生活苦に直面し、経済的な不安が広がった。
第7章: 財政健全化の条件と隠されたミッション
日本の財政赤字は統合後の深刻な問題であった。
このためアメリカ政府は日本州に対して10年以内に財政健全化を達成することを第一優先条件に設定した。
もし目標を達成できない場合、日本州は大統領選挙の選挙人を出す権利を持つことができないとされた。
しかし、この条件は表向きの理由に過ぎなかった。
実際には、アメリカは日本州から未来永劫大統領を出させないことを最大のミッションとしており、財政健全化の条件は隠れ蓑に過ぎなかった。
第8章: 統合の実現と抵抗運動
統合が正式に承認され、日本は「日本州」としてアメリカ合衆国の一部となった。
しかし、多くの日本人は新しい生活に戸惑い、アメリカ国内でも日本州に対する差別や反発が広がった。
街頭では「日本人は帰れ」という差別的なスローガンが掲げられ、日本州からの労働者に対する暴力事件も多発した。
第9章: テロと対立
日本州とアメリカ本土では、統合反対の運動が激化していった。
アメリカ本土では「アメリカ第一主義」を掲げる過激派がテロを起こし、日本州の施設や人々を狙った攻撃が続いた。
一方、日本州でも「独立回復」を求めるグループが地下活動を展開し、統合賛成派の政治家や企業を標的にしたテロが頻発した。
第10章: 経済再生と技術革新
統合によってアメリカ本土からの投資が増え、日本経済は急速に再生した。
技術革新も進み、新たな産業が次々と生まれた。
特に、AIや再生可能エネルギーの分野での発展は目覚ましく、日本州はアメリカ全体の経済成長を牽引する存在となっていった。
第11章: 政治的復権
統合から10年後、日本州は初めて大統領選挙の選挙人を出すことを認められた。
10年間、財政健全化の目標を達成するために日本人は多大な努力が払い、それが結実したのだ。
財政改革が成功し、日本州は大統領選挙に参加する権利を獲得した。
しかし、日本人の大統領誕生への道は閉ざされたままだった。
そもそも、大統領選挙の被選挙権は、「アメリカ合衆国憲法第2条第1節」の規定により「35歳以上かつアメリカ合衆国国内における在留期間が14年以上で、出生によるアメリカ合衆国市民権保持者」とされていたからだ。
そればかりか、アメリカは統合後も日本州からの大統領誕生を防ぐための様々な障害を設けていた。
エピローグ
それでも、統合から20年後、日本州はアメリカ合衆国の重要な一部として確固たる地位を築いた。
さらに、合衆国憲法改正等の制度改正により日本州からの初の大統領が誕生した。
かつての独立国家としての日本は消滅した。
しかし、新たな形での繁栄と発展が実現した。
日本人もアメリカ人も統合という困難を乗り越え、新しい未来を切り開く力を得たのだ。
「日本のアメリカに対する第二次無条件降伏」 日米統合という新秩序へ向けての長い道のり 向出博 @HiroshiMukaide
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