第5話 制作陣出てこい!

「いやぁ、父上がすまなかったね」

「いえ……」



 あのあと、何とか皆さんに頭を上げてもらうことに成功した。もう二度としないでほしい。

 今は挨拶やらなんやらが終わって、ノワールたちはそれぞれ用意されたお部屋で休憩中ですね。少し休んだら夕食かな。


 で、俺はというとフェルトーリ家の嫡男ルイスさんにお礼をしたいと言われて、応接室でお話し中ですね。特に欲しいものもないから遠慮しようと思ったんだけど、家のメンツが立たないとか言われちゃったら断るわけにもいかず……。

 せっかくだから何か装備品を貰おうってことで、伯爵家所蔵の品の目録を見せてもらっているところ。


 ただまぁ、この人は割と平民の心も分かる人みたいで助かったよ。結構フランクに話してくれるから、そこまで緊張せずに済むし。

 商人たちとの交渉とかもやってるみたいだから、平民と触れ合う機会が多いのかもね。



「つまり装飾品のような物がいいということかな?」

「そうですね。まだ背も伸びるでしょうから、長く使えるものの方がいいかと思いまして」



 武器は魔力槍があるから必要ないし、防具も数年のうちには着れなくなりそうだからね。中にはサイズ調整のエンチャントがついたものもあるけど、それだとエンチャントの枠がもったいなく感じちゃうし……。

 その点、ネックレスとかなら大人になってもそのまま使えるからね。あ、ピアスはパスで。怖いから。



「なるほどね。それじゃあこの辺りかな」



 そう言って渡された目録にはズラーッと装備品の名前と鑑定結果が並んでいた。とにかく数が凄い。さすが水運で儲けてるだけあるな。



「装飾品は嵩張らないし、宝石がついたものも少なくないからね。ちょっとした取引なんかにも使えて便利なんだよ」

「なるほど」

「この辺りのならどれでも好きなだけ持っていっていいからね」

「いや、それは……」



 冗談なのか本気なのか判断が付かない。そういうのでこっちを試すのやめてもらってもいいですかねぇ……?

 いや、試してるのかどうかも分かんないけどさ。


 まぁ、気にしてもしょうがないから、チェックしていくか。






「あれ、これって……」

「うん?気になるものでもあったかい?」



 三十分ほどかけてめぼしいものを絞り込んでいると、非常に気になるものを見つけてしまった。



「吸魔の指輪、ですか?」

「あぁ、それかい?以前摘発した商会から押収したものなんだけど、使い道がなくてね」



 吸魔の指輪――その名の通り装備者の魔力を吸う指輪だ。と言っても、魔力を一気に奪い尽くすわけではなく、本当にじわじわと装備者の魔力が減っていくだけのアイテム。


 プレイヤーの間でも長いことネタアイテムとして扱われていたんだけど、あるプレイヤーの発見がこのアイテムの評価を一変させた。

 なんとこのアイテム、ずっと装備してたら魔力が増えるんだよね。


 おそらく迷人族と同様に、魔力の消費と回復を繰り返すことで魔力が増えていくんだろうね。主人公ブランも魔法メインで使ってたら魔力の伸びが良かったし。


 この発見はプレイヤーたちを大いに喜ばせた。この方法が見つかるまでは、魔力を上げるにはレベルを上げるか、魔力増加のエンチャントがついた装備を身に着けるしかなかったからね。

 ブランを魔法型で育成していれば多少伸びが良かったとはいえ、それでも物理型の四割増し程度。レベルを最大まで上げてもメテオ二発に届かなかった。

 だけど、序盤でこの吸魔の指輪を入手できればメテオ三連発も夢ではないのだ。


 問題は入手のしにくさ。このアイテムの入手方法は一つだけ。稀に出現する行商人が低確率で販売しているものを購入すること。どういうわけかダンジョンの宝箱からは出現しないんだよね。

 そのせいでクリアするまで一度も見かけない、なんてこともザラにあった。まさかここで巡り合えるとはなぁ……。



「それではこの指輪をいただけますか?」

「……それは構わないが、本当にそれでいいのかい?たしかに珍しいアイテムだけど、珍しいという以外は何の価値もないアイテムだよ?」

「はい。こういう珍しいものが好きなので」

「ふむ……。それならもう一つあるからそれも譲ろう」

「え……?」



 二個もあるの?原作では複数手に入ったなんて報告はなかったはずだけど……。



「それと他にもいくつか選んでくれるかな?母と妹の恩人への礼がこれだけだと、私が父に叱られてしまうからね」



 俺としては吸魔の指輪だけでも十分なんだけど、そこまで言われたら断れない。魔力の消費を減らすネックレスと魔法の発動が少しだけ早くなる腕輪を選んでお礼の品選びは終了。

 やっぱり魔法が発動するまでのラグはできるだけなくしたいからね。


 それにしてもこっちでは吸魔の指輪の有用性は知られてないんだな。

 あー、でもまぁそうか。ステータスが確認できないんだから、多少魔力が増えたところで気付く人なんてそうそういないだろうし。






「おぉ~、魔力が吸われていく……」

「……それは大丈夫なのか?」

「大丈夫ですって。そういうものですからね」


 

 お礼の品を受け取ってノワールと合流し、今はいただいたアイテムを紹介しているところ。目玉として最後に吸魔の指輪を紹介したんだけど、手のひらに置いているだけでもごく僅かに魔力を吸われてる感覚がある。

 ほんとに手に入れられるとはなぁ……。


 見た目は赤いラインが入った黒い指輪。厨二感が溢れていて嫌いじゃない。むしろ好き。



「それじゃあもう一個の――」



 もう一つの吸魔の指輪を取り出そうと二つ目のケースの蓋を開けると……。



「え……?」

「ん?どうした?」

「なにこれ……?」

「ほぉ……。こっちはデザインが違うんだな」

「なにこれ……?」



 そこにあったのは。なにこれ?パチモン?



「あ、でも魔力は吸ってるわ」



 手のひらに置くと、もう一つの指輪と同様に魔力を吸われている。鑑定書にもちゃんと吸魔の指輪って書いてあるし、まがい物ってわけではなさそう。

 ルイスさんも価値はないって言ってたから偽装する意味もないはずだしな。


 ってことは、吸魔の指輪は二種類あるってこと?いや、もしかしたら他にもあるのかもな……。聞いてないぞ、制作陣出てこい!



「若様、一個使ってみます?」

「……いや、遠慮しておこう」



 まぁ、こんな得体のしれないものを身に付けるのは抵抗があるよね。俺も吸魔の指輪の効果を知らなかったらたぶん付けないだろうし。

 これ、何個もあるんなら公爵家の人たちや魔術師の皆さんに支給した方がいいのでは?公爵家なら何個も集められそうだし。

 自分でも分かるレベルで魔力が増えたら提案してみようかな。



「それじゃあ早速…………おぉっ」



 黒い方の指輪を右手の小指にはめると、さっきよりも魔力を吸われている感覚が強くなった。とはいえ、これくらいなら寝る前に外すようにすれば、魔力が枯渇することはないかな。

 さすがに移動するときやダンジョンに潜るときは外しておくけどね。何があるか分かんないし。魔力が増えれば、そのうち魔力の回復量が指輪の吸収量を上回るはず。そうなれば二つ目も装備できるようになる。その時が楽しみだ。


 そうそう。原作で装備できた指輪の数は右手に一つ、左手に一つの計二つ。リアルなら全部の指に二つずつとかもできるのでは?と思ってやってみたけど、効果があったのは両手ともに最後に付けた一つだけ。そう都合よくはいかないみたい。残念。






「で、若様の方はどうだったんですか?」

「……うん?」

「ちゃんとリオネラ嬢にプレゼントは渡せたんですか?」

「……あ、あぁ」



 実はノワールくん、リオネラ嬢との最初の顔合わせで相当失礼な態度をとっていたみたいでね。そのお詫びをしたいということで相談を受けたわけ。

 だけど、モノによっては特別な意味を持ってたりするじゃん?その辺の知識は俺もノワールもさっぱり。万が一、ネガティブな意味合いのものを贈ってしまったら目も当てられない。


 ということで、エルミーヌさんやシーラさんからアドバイスをもらって、フクロウをあしらったブローチを用意したわけだ。二人でヤンクールの店を何軒もはしごしてね。

 フクロウを選んだのは、フェルトーリ家の紋章にフクロウが使われているから。



「どうでした?喜んでもらえましたか?」

「……と、思う」

「おぉ!」



 シーラさんも頷いているから本当に喜んでもらえたっぽい。ノワールくん、よく頑張りました。

 アルメリアをはじめ、他のヒロインたちと今後どうなるかは分からないけど、正妻を蔑ろにしたら丸く収まるものも収まらないからね。この調子で頑張ってくれたまえ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る