第12話 女子高生新妻? 半同棲生活がこれから始まる ACT2
ニマリとする悪戯っぽい顔。
此奴完全に俺をおちょくっているな。
もしかして繭にすべてを任せたら飛んでもねぇことになるんじゃねのか?
……それは俺が今後落ち着かねぇ生活に突入するていうことになる予感がする。
ある程度は俺も意見は行った方が……。
「ああ、ほんとこのハート型のお皿可愛んだけど、山田さんには不釣り合いだよね。やっぱりこっちの普通のにしよ」
お、諦めてくれたか。助かった。うんうん、食器なんて言うのはシンプルなのが一番いい。
「ええっとあとはカップとお茶碗と……お箸も必要だよねぇ」
繭は一人であれこれと棚の商品をきょろきょろ見ながら買い進んでいく。
その後を俺はまるで金魚のフンごとくついていくだけだ。
だいたいのものが買いそろったようだ。
「ん―とあとは食材だね」俺の顔を見つめながら「山田さんって嫌いなものとか苦手なものってあるの?」
「……うーーん。嫌いなものかぁ……特にないな。ゲテモノ以外なら大体隊は好き嫌いはないけどな」
「ゲテモノ?」
正直まだ此奴の料理なんて食っていねぇし、どんなもんが出されるのかもわかっちゃいない。意外な特質的な感覚の食いもん出されて「さぁ―どうぞ召し上がれ」とおぞましいものたちが並ばないとも限らないかいらな……と、それは考えすぎか。
「そうか好き嫌いは無いんだ。それは助かるなぁ」
食料品の売り場を一回りしてみたが繭はこれと言って何かを買おうとはしなかった。
「食材は買わねぇのか? うち何にもねぇぞ」
「うん、それは知っている。でもさぁなんか違うんだよねぇ」
「違うって?」
「なんていうかさぁー。ねぇ、商店街て言うのはないの? 八百屋さんとか魚屋さんなんかがある商店街」
「ああ、駅の反対側にあるなぁ。いわゆるアーケード街だな」
「うんうん、じゃぁさぁ食材はそっちで買おっかぁ。私こういうところよりも商店街で買う方が好きなんだぁ」
「そうなのか? なんか意外だな」
「そうなんだよねぇ。自分でもそう思うんだけどね、私ってやっぱりどこかずれているのかな?」
「……まぁそうかもしんねぇなぁ……」
「そうなのかなぁ。でもさぁ、いつもお買い物はうちの近くの商店街だったからなんかそっちの方がしっくりとくるんだよねぇ」
繭と俺は買い物を終えて一旦自宅に戻ることにしたのである。荷物もあるしな。それに今後も二人で一緒に買いもの行くことを考えると商店街で買った方が楽だと思うしな。
それにしても意外とかさばる物ばかりだ。大きめの袋に鍋とフライパンまで入っているからな。
これを持ちながら食材までと言うのは無理だろう。
一旦荷物を置きに帰宅するのは正解だと思う。
ショッピングモールを出て直結する駅の通路を渡り南口へと出る。
モールにつながるこの通路はさすが土曜の休日と言うのもあって意外と人の通りは多い。
ちょうど改札出口と合流するあたりで、キャリーを引きずり大きなショルダーバックを肩にかけた女性と繭はぶつかり床にしりもちをついた。
「きゃぁ」と、声を上げ後ろにいた繭の方に目を向けるとぺたんと床に座り込んでいる。
ぶつかった女性が床に座り込む繭に「大丈夫ですか? ごめんなさい」とすぐに駆け寄り声をかけた。
「大丈夫です。私もボーと視点で……ごめんなさい」
「怪我としてない?」
「うんただ転んだだけですから。大丈夫ですよ」
その光景を目にして「おい大丈夫が繭」と声をかけた。
その俺の声に反応すかのように、その女性は顔を上げ俺の方に向けると。
「あっ……せ、先輩」と言うのだ。
「え?」と俺はその女性の顔を見て驚いた。
「せ、先輩」と俺の目を見て言うのだ……。
「お、お前……」と俺は言葉を失う。
「せ、先輩ですよね」と言う彼女。
見覚えのある顔にその声。会社にいる時とは違う装いと雰囲気だが、間違いなくその女性は……
「水瀬!」
水瀬愛理、会社の同僚と言うか俺の後輩。入社1年目のまだ新人だ。俺の部下と言うよりは教育係だ。
「どうしたんだ水瀬そんな大きな荷物持って……もしかして夜逃げ? いや昼逃げか?」
水瀬は長い髪を横に揺らし「先輩、何言ってるんですか。私はそんな人じゃないですよ」と笑いながら答えたのだ。
「いや……だってその大荷物はどう見ても……」
「ああ、これはお泊りセットです」
「……え?」
「だからお泊りセットです」
「はぁ? お泊りってお前……なんで?」
俺は何が何だか訳が分からない。水瀬は会社で見る時とはどこか違う雰囲気だ。そしてどこか少し顔が赤いようにも見える。
「だって……先輩……」と言って俺に近づいてくると俺の袖を掴んで顔を伏せた。
その仕草が会社では見せない恥じらいと言うか、何というか女らしさをかもし出していてちょっとドキッとする。
「わ、私……お、温泉に泊りがけで……行こうと」
「温泉? 旅行か?」
「ま、まぁそんなところですけど……」
なんか歯切れの悪いような返答の仕方だったがまぁ、休日の過ごし方まで俺が関与することはない訳で。
「そうか。まぁ温泉はいいよな。ゆっくりできるし」
「はい……でも……」と水瀬は少し言いにくそうにして、そして少し間を置いてからこう続けたのである。
「あのぉ……先輩……その子は?」
ん? その子と言うのは、……だよなぁ。絶対そうだよなぁ。……繭のことだよなぁ。
で、俺はとっさにこう答えたのである。
「ああ、この子はだなぁ。なんて言うかそのなんだ……従妹だ」
「従妹? さんですか?」
「……うんそうなんだ従妹なんだ」足らりと冷や汗みたいなものが額から流れてきているのが分かる様なそんな感覚がある様なないような。
「ふぅーん。そうなんですか」
と、言いながら俺が持つ荷物に視線を落とす水瀬。明らかに日用品雑貨ものがこの袋に入っているのは察しがつく。従妹と一緒に日用品雑貨を買い出しに来ている? ……水瀬って外見は童顔天然そうに見えても結構鋭い奴だ。何か詮索してないといいんだけどなぁ。
まさかさぁ昨日の夜に出会ったお隣の女子高生なんですとは口が裂けても言えねぇよなぁ。
従妹と言う事で納得してくれ……水瀬。
「お買い物ですか?」
「ま、まぁそうなんだが……」
「そうですか。……先輩」
「なんだ」
「先輩目、泳いでますよ! それにいつもの癖出てますけど。あ、私もういかないと……それじゃまた会社で」
そそくさと水瀬もなんか俺にこれ以上詮索されるのが困るかのように立ち去って行った。
はぁー、なんかどっと疲れが出てきた。まさかこんなところで水瀬と出会うとは思ってもみなかったからだ。何とかごまかせたのか?
でも気になる彼奴のあの言葉。……俺の癖って? いったい何なんだ?
人込みに紛れ消えゆく水瀬の後姿を目で追いながらドキドキしているのを感じている。
「ねぇ山田さん……大丈夫?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます