第9話 魅惑の部長雨宮マリナと関わりたい女子高生 ACT1
思わず頭を抱えてしまった。部長と俺のプロジェクトだと? しかしだ、なんかうやむやにするとまずいと思った俺は聞き返したのである。
「で、その愛を築き上げる……っていったいなんですか?」
「うんうん、さすが山田君だわ! やっぱり私の目に狂いはなかったわ」と一人で納得してらっしゃる。
「で、部長……その愛ってなんですか?」と俺は再度聞いた。
「うん! 私と山田君のプロジェクトはね……」とそこまで言ったところで俺は思わず口を挟んだのである。
「あのぅ部長……俺まだ何も言ってませんけど」
すると部長は急に真顔のような声になり、こう言い返したのだ。
「あ、ごめんごめん! もう私の頭の中ではあなたとの愛の結晶が宿っているのよ!」と。
なぬ? 俺と雨宮部長との間に子供が出来ているだと? いやいやまてよ、 まぁそれはどうでもいい、でその子供の父親はいったい誰なんだ!?
「あのぅ、部長」
「なに?」
「……俺達の間には子供はいませんよね?」と俺は聞いたのである。すると雨宮部長はこう答えたのだった。
「ええいるわよぉ子供!」と……っておいっ! 冗談だろ? 俺をからかってるのか?
「部長……俺を騙そうとしてますね」と俺は言ってやった。しかし、雨宮部長はこう言い返してきたのである。
「山田君、私はね冗談でこんなこと言わないのよ! だってあなた私の運命の人なんだもん!」と。
「はぁ?」と思わず聞き返してしまったが、そんな俺にお構いなしの雨宮部長はこう続けたのだ。
「だからぁ! 私とあなたは運命の赤い糸で結ばれているのよ!!」と。
おいおい、この人大丈夫か?
「部長……あの、俺もう行きますから。それに仕事の話ならメールでお願いします」と俺は言ってやった。
すると雨宮部長は急に真顔声になりこう言い返してきたのだ。
「山田君、私はね冗談でこんなこと言わないのよ! だってあなた私の運命の人なんだもん!」と……っておいっ! 冗談だろ? 俺をからかってるのか?
「はぁ?」と思わず聞き返してしまったが、そんな俺にお構いなしの雨宮部長はこう続けたのである。
「だからぁ! 私とあなたは運命の赤い糸で結ばれているのよ!!」と……っておいっ! 冗談だろ? 俺をからかってるのか?
と、その時だった。
あの壊れていた仕切り版がいきなり倒れ込んできたのだ。
「えっ!」
仕切り版は見事に俺の頭にぶつかり、俺は思わずスマホを落としてしまった。
「あ、あれ……私……あ、あのぉ」
倒れてきた仕切り版の向こう側には、繭が茫然として立っていた。
「いててて」
「あ、あのぉ大丈夫ですか! ちょっと押したらいきなり倒れちゃったんです……山田さん」
俺も驚いたが、繭も驚いていた。
「だ、大丈夫だ」
「良かったです」
繭のホットした顔が見えたが、結構痛かった。あああ、まじいてぇ。
「ごめんなさいまさか外れるなんて思ってもいなかったんです」
「いやいや、この仕切り版外れていたんだ元から。もっと早く大家に行って直しておいてもらえばよかったな」
「そ、そうなんですか。本当にびっくりしました。でも本当に大丈夫ですか? 怪我していませんか?」
「おう、ちょっとまだ頭いてぇが大丈夫だ」
「本当にごめんなさい」
「いやいや、そっちが悪いわけじゃねぇし。早くに直してもらわなかった俺も悪い。早速今日大家に連絡しておく」
やっぱりこう言うのは放置していちゃいかんな。
そう言うと繭はもじもじとしながら「あのぉやっぱり直さないとダメですか?」と言ってきた。
ん、それはどういうことなんだ?
「直さねぇとアブねぇし、それにそのなんだプライバシーていうかなんだベランダとは言えこうして繋がってしまうからな」
「私は別に構わないんですけど……こうして繋がっていても」
「いやいやそれはまずいだろう」
「ううん、こうして繋がっていると山田さんのお部屋と行き来が出来るじゃないですか。そっちに行ってもいいですか?」
「ああ、別に構わないが」
「やったぁ! 山田さんのお部屋に行けちゃう!」
繭はルンとしながら俺の部屋の方にやってきた。
「うわぁ―、やっぱり私の部屋よりかなり広いんですねぇ。ほんと私のお部屋は狭く感じちゃいますよ」
確かに繭の部屋はほんと狭かった。
「へぇ―でも意外と……という訳でもないか。あっ! ナニナニこれフィギュアたくさんあるじゃないですか。ああああ! これ18禁のゲームじゃないですか! それもこんなに積み込んで。もしかして山田さんて……」
「ああそうだ。俺はオタクだ! オタクで何が悪い!」
「ふぅーん。そう開き直るところを見ると相当のオタクさんみたいですねぇ。まぁ私は別に構わないんですけど……でももう少しさぁ片付けとか何とかならないんですか?」
そう言いながらきょろきょろしながら繭は台所の方に行き。
「うわぁ―大きい冷蔵庫あるんですねぇ。しかも真っ赤です。ちょっと年季入っているところがなんか味が会っていいですねぇ」
と言いながら遠慮なしに冷蔵庫の扉を開けていく。
「おいおい、勝手に開けんなよ!」
「別にいいじゃないですか……て、あのぉ、こんなに大きな冷蔵庫あるのに中には何にも入っていないんですねぇ。目立つのはビール缶でしたよ」
「別にいいだろ……あんまし料理なんかしねぇから」
「そうなんですか。ご飯てもしかしてほとんど外食なんですか?」
「まぁ外食もあるがまぁなんだほとんど弁当だな。まぁ腹が膨れればそれでいいっていう感じだしな」
「はぁ―、それってほんとよくないですよ! こんな立派な冷蔵庫あるんですもんちゃんと自炊しないと。体にもよくないですよ」
そんなこと言われてもなぁこれが男27歳独身の生活感と言うものだ。
まぁ別に誇れることじゃねぇけど。
「そうだ! ねぇねぇ山田さん。私から提案があるんですけど」
「提案?」
「うん、あのね。私冷蔵庫とコンロ無いんだよね。これから買おうかなって思っていたんだけど……まぁ正直結構お金かかるものじゃない。今すぐには買えないんだよねぇ……お金厳しんだよ実際。それにあの部屋だよ。冷蔵庫なんて置けないじゃない」
まぁ確かにあの部屋の広さじゃ、小さめの冷蔵庫でも結構幅きかせそうだな。
「だからさぁ、私冷蔵庫買わないで山田さんのこの冷蔵庫使わせてもらえないかなって」
「へっ?」
「ねぇ、いいでしょ。でね、その代わりと言うかなんと言うかさぁ、私山田さんにご飯作ってあげる。お部屋の掃除もしてあげる。だから冷蔵庫使わせてくれない?」
「はぁ? なんだ、それって飯の支度してくれるって言うことなのか?」
「うん、そうだよ。へへへ、私料理結構得意なんだよこう見えても。今までていうかさ小さいころからご飯なんか作っていたし、料理するの好きだし。美味しいもの食べさせてあげるよ」
もう繭はノリノリの状態で話がどんどん進んでいく。
「だからいいでしょ」
「はぁ」
やったぁ! 商談成立。
美味しいもの一杯食べさせてあげるね……旦那様!
おい! それは違うだろ!
その後、ベランダに落ちていたスマホを見つけ手に取ると……案の定部長からの通話は切れていた。
繭との会話。聞かれちまったかもしれねぇ。
いらぬ誤解をしてもらいたくない願いがわき上がる。
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