第3話 自宅玄関前での野宿は辛い
「ふゃっくしょん!」
3月の夜風は誠に身に染みるものでございます。
今私は自宅の玄関のドアの前で膝を抱え
今夜は満月か。月の光がこれほどまぶしいものであるとは今まで感じたことはなかった。
さて、何故私事俺がこうして自宅玄関前で野宿を慣行しているのかと言えば、己の家の中に入ることが出来ないでいるからだ。なんのことはない、玄関の鍵をなくしてしまったのだ。
鍵がないなら大家さんに連絡してスペアキーで開けてもらえばいいのではと思われるだろうが、それは出来ない。なぜなら
「うぅ……寒いよぉ……お腹すいたよぉ……」
現在深夜12時を回ってしまっているのだ。こんな時間に大家さんに連絡は迷惑がかかってしまうだろう? だからこうして私は今自宅玄関前で野宿をしているわけだ。それにしても、自宅の前の通路で寝ると言うのは中々にスリリングな経験だ。
寝込みを襲われたらたまったものではないな。
「うにゅぅ……もう無理ぃ……寒いぃ……」
俺は今、自宅の前の通路で寝転んでいる。この寒い中こんな所で寝て風邪でも引いてしまったらたまったものではない。しかし、大家さんに連絡してスペアキーで開けてもらうと言うのは……やはり迷惑がかかるか。
しかし……このままだと俺は路頭に迷ってしまうだろう。一刻も早くなんとかしないとな。
「あぁ、いい月だ」
俺がそう呟いたのは満月が本当に美しかったからだ。
月明かりがあまりにまぶしかったせいか、俺は瞼をとじた。
「うにゅぅ……寒いよぉ……」
そんな俺の耳にそんな声が聞こえてきた。どうやらこの声は俺以外の誰かの声のようだ。
「うぅ……お腹すいたよぉ……」
その声の主はどうやら女性のようだ。しかしこんな夜更けに女性が一人で出歩くとは不用心なものだ。まぁ、俺も人のことは言えないがな。しかし、このまま放っておくのも気が引けるというものだ。俺は重い瞼をなんとか開くと声のする方に視線を向けた。
「うにゅぅ……寒いよぉ……」
どうやら声の主は女性のようだが、一体どなたなのだろうか? しかし、よく見ると彼女はとても美しく可愛らしい少女だった。その髪は月の光に反射してキラキラと光っていた。そして雪のように白い肌は寒さで少し紅潮しているようにも見えた。
あぁ……なんて美しい人なんだ。こんな人今まで見たことがないぞ?
「うにゅぅ……お腹すいたよぉ……」
しかし、その美しい少女はどうやら空腹で動けないようだ。
これはいけないな。こんな美しい少女をこのままにしておくのは気が引けるというものだ。俺は重い瞼をなんとか開き、彼女に声をかけようとした。
「うにゅぅ……寒いよぉ……」
「あの……大丈夫ですか?」
俺が彼女にそう声をかけた瞬間、彼女は俺の声に反応してこちらに視線を向けた。その目は紅くとても綺麗な目をしていた。そして彼女のその瞳は驚きで大きく見開いていた。
「あれ! ……おじさん……おにいさん」
彼女はそう言うとふらつきながらこちらに歩いてこようとする。どうやら彼女は極度の空腹で意識がもうろうとしているようだ。俺は慌てて立ち上がるとふらふらしている彼女の元に駆け寄った。
「あ……お兄さん、いいにおい」
彼女はそう呟くと俺に抱きついてきた。そしてそのまま俺の胸に顔をすりよせて深呼吸をし始めた。
「すーはーすーはー、あぁいい匂い」
「え? あ……あの?」
俺は突然の彼女の行動に驚いてしまったが、彼女のその行動はとても……異常だ。
「どうしたんだ?」
「わたし、お腹ペコペコでもう歩けないの。ねぇ、お兄さん……何か食べさせて?」
「え?」
彼女はそう言うと顔をあげた。そして俺の目をその紅い瞳でじっとみつめてきた。俺はその彼女の瞳に吸い込まれそうになってしまったが、すぐに正気に戻ると彼女に言った。
「すまない、俺も今何も持っていないんだ。」
て、言うか、目の前の家に入りたいが入ることが出来ないでいるのだ。
しかしほんの数時間前に出会ったあの女子高生にまた出会うとは……。
俺は空腹で抱きついている女子高生を、自宅の玄関前で抱きつかせながらそんなことを考えていた。
「あの……いい加減離れてくれないかな?」
彼女は俺から離れるどころか、さらに強く抱きついてくる始末だ。しかも、お腹を空かせているせいか中々に力が強い。それになんかやわらかいものが俺の腹のあたりでその形を変えて押し付けられて非常にまずい状況になっている。これは一体どうしたものか? しかしこのままでは俺の理性が……持たない……訳ではないが。
「腹が減っているのは分かった。そ、それじゃ何か買いにコンビニに行こう」
俺もこのままここでボーとしているのもなんだしこの有り余る時間の消化になるのならと彼女と一緒に行くことにした。
「あのぉ、おじ……おにいさんはどうしてあんなところにいたんですか? もしかしてあの後私をつけてきたとか?」
「……いや、そんなことはない! 俺はそんなことはしないぞ! あそこは俺の家の前なんだ」
「ええ、そうなんですか! それじゃぁちょうど帰宅されたところに私が出てきたんですね。でもこんな偶然てあるんですね。私のお隣さんだったなんて」
「ああ、びっくりしたよ。ほんとこんな偶然もあるんだな」
「ほんとですね」
彼女はにっこりとほほ笑んだ。その顔がまた可愛い。
本当に見れば見るほど俺好みのゲームの美少女キャラにそっくりだ。
現実に3次元でもいるんだな。
もしかしてあのゲームの少女キャラは彼女がモデルじゃないのか? と思えるほどだ。
「ところであれから大分時間が経っていますけど、どこかに行かれていたんですか? まだ顔の腫れひいていないようですけど」
「いやなんだまぁそのなんだ」
言える訳ねぇだろ自宅玄関前で野宿をしていたなんて。
「実はそのぉ、いろいろあってね」
「そうなんですかぁ? やっぱり病院にでも行ったのかと思いましたあ。そうだ! まだお名前聞いていませんでしたよね?」
「ん? ああ、俺は山田……
「私は
彼女はそう言うとニコッと笑った。その笑顔もまた可愛かった。
それにしても
俺たちは自宅玄関前で、改めて挨拶を交わしたあと、二人で近くのコンビニに向かっていた。
「本当はね、あの時私食べ物買いにスーパーに行こうとしてたんです。お惣菜値引きになったのあるといいなぁて。そうしたら公園の前であの二人組に絡まれちゃって……。本当に助かりました。今更なんですけどありがとうございました」
「いやなんでもねぇよ」
「ふぅーん、そうなんだ」
彼女は少しつんとした表情をしながら。
「山田さんて喧嘩弱いんですね」
「な、なにを……俺は平和主義者なんだ喧嘩なんてしたことねぇんだ」
「そうなんだ。それなのに私を助けてくれたんだ。そうかそうか」
今度はにんまりとした顔になり。
「そっかぁ喧嘩弱いのに私を助けてくれたお礼しないとね。……山田さん」
「お礼? そんなのいいよ」
「ふぅーん。ねぇ山田さん、キスしようか。現役女子高生との生キス。どうかな?」
「えっ!」
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あなたの部屋に私のパンツ干してもいいですか?Fine「あなパン切り抜き版」 さかき原枝都は(さかきはらえつは) @etukonyan
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