第15話 妻晒し

「綾乃ちゃん……したい体位ってある?」


 ベッドに滑り込んだS君がひじをつきながら綾乃をのぞき込む。綾乃は朦朧もうろうとしながら答える。

 

「……え……あ……上に乗りたい……かも」


 ぐったりしている綾乃を抱きかかえるS君。


「膝立ちできるかな……? うん、うん、よくできたね」


 そのまま仁王立ちしながら綾乃の後ろ髪を大きく掴む。


「今からちょっとだけ酷いことするよ? 頑張ろうね?」


 甘い声と裏腹に言動とS君の行為。そんなギャップに綾乃は目を潤ませる。


 部屋の照明が、綾乃の顔周りをスポットライトのように明るく照らしている。薄暗いその周囲にはZ君、Jさん、E君、そして亮介の4人の男がそれを見ている。


 あるのは高揚感ばかり。自分の異常性は今始まったことではないが、とんでもないところにまで来たものだ、と亮介は思った。



(いい女だよね、綾乃ちゃん)


 Jさんが隣にいる亮介に小声で言う。


(ありがとうございます)亮介が言うとJさんは無言で微笑んだ。



 S君が綾乃をしつける声が響く。反応して、くぐもってはいるが高い綾乃の声が聞こえる。


「そろそろかな」


 綾乃の返事を待たずに独り言のように言うと、S君は綾乃の体を亮介の方に向けた。


(いったい、なんて表情をしているんだ――)


 刺激的な言葉で責められて魂を震わされる綾乃。

 振り返らされると、男性たちに囲まれて見られていることに気づく。そして、今からされることがわかっていく――。


「みんなに綾乃ちゃんをよく見てもらおうね」


「あ……恥ずかしい……」


「もっと恥ずかしいこと、はじまるから」


 S君の両手が綾乃の両手首をつかみ、後ろへと引っ張り拘束する。

 後ろに引っ張られた腕と引き換えになったのは張り出す胸だ。


「綾乃ちゃん、もうどこにも逃げられない。みんなに見られてるよ」


「!!」


 目を必死につぶって髪を左右に揺らす綾乃。一心不乱。ただただ快楽の海で溺れている。

 そうとは知らず亮介が声をかけてしまう。


「大丈夫……? 綾乃、大丈……夫?」


 なんとか目を開け、亮介を見ながら頷く綾乃。

 

 亮介はまた綾乃の新しい一面を知ったと同時に、自分の未熟さをも知らされたのだった。夫として、そして寝取られの主としての矜持きょうじの未熟さ、そして覚悟の足りなさ。


 そんな亮介を叱咤しったするかのように、綾乃の声はたちまち絶叫に変わっていく。

 両腕を掴まれたまま身体の自由は腰だけという状態。骨の髄から湧き上がるマグマのようなエネルギーは、その張り裂けそうな声と腰の動きへと転換されているかのようだった。

 

 背骨が折れるんじゃないか――?


 そんな心配をしてしまうぐらいの反動で背中を一瞬で丸めさせ、脱力する綾乃。S君の足元へと顔を埋めると、肩で大きく息をする。


 亮介は、自分がいつからなのかわからないが、呼吸を止めてしまっていたことに気づくのだった。

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綾乃と亮介 / three, four or five[改稿版] 宿羽屋 仁 (すくわや じん) @jsrm

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