第13話 みんなで仲良し

 「じゃ、寝取られのベテランってことですね。最近珍しいですよ、そんなカップル」


 さっき知り合ったばかりのS君は笑顔のまま反応する。恐らくこの店の常連なのだろう。落ち着いていてガツガツしていないし、場の空気に馴染んでいるように見える。


「珍しいって、他のカップルさんはどんな感じなんですか?」


「見せつけるというか……自分の彼女がどんな風に見られるのかを試しに見てみたいっていう感じの人が多いかな」


「へ〜、そうなんだ」


 亮介もこういう店の雰囲気にも慣れてきて、だんだん勘が働くようにもなった。


 会話している男性が綾乃興味を持っているかどうか、綾乃がどの男性をだと思っているのか、あるいは、他の男女のそれぞれの思惑、入店直後の客への様々な視線の意味……。そうした中で経験を重ねてきた亮介だったが、第三者とのチームプレーをやってみようと思いついたのだった。

 


 

「ところで、S君は複数とか経験ありますか?」


「はい、ありますよ。もししたかったら言ってくれれば全然協力しますよ」


 さすが、こなれている雰囲気は伊達じゃなかった。話が早い。


「ありがたいです。めちゃくちゃ嬉しい……。じゃ、確認しますんでちょっと待っててください」



 

 反対側の左隣に座る綾乃に耳打ちする。


「俺の右にいるS君ならだよね?」


 微笑んで無言で頷く綾乃。


「やっぱりね。じゃ次に、綾乃の隣にいる人と、俺の前にいるメガネの人、今ちょっとトイレかなんかでいないけどさっき会話したかわいい顔の人、この3人の中でNGな人いる?」



「全員大丈夫だよ」



 返事を聞いた瞬間にS君に振り返る亮介。

 

「S君を含めた今この席にいる4人と綾乃が楽しむのを見せてもらいたいんです。どうしたらいいですかね? もちろん綾乃のOKはもらってます」

 


 

 S君は返事代わりに呼びかけた。


「みんな〜、綾乃ちゃんがみんなと仲良くしたいんだって。行けるよね? はい、こっちこっち」


「え!? そ、そんなあたし……え〜〜〜! え〜〜〜?」


(どうしよ、亮介。恥ずかしい。これじゃあたしすごくH大好きな人みたいじゃん……)


  あまりの急展開に飛び出しそうなぐらい目を丸くした綾乃が小声で言う。亮介は嬉しくてたまらない。


「みんな、綾乃のこと淫乱欲しがり女って目で見てくれるかもね」


 いつの間にか、男性陣が綾乃を取り囲むように立っていた。


 


(すごい……一瞬で)



 

「はい、綾乃ちゃん準備完了したよ〜」

  

「きゃ〜、うそ〜。こんなの……ほんとに……ほんとに……?」


 綾乃の戸惑いは嘘じゃない。そして、こんなに嬉しそうな表情の綾乃を見るのは久しぶりだ。

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