ミーシャ

上白糖 赤飯

執行人エレーナ

 ミーシャは光の銃を罪人へ向けていた。罪人は酷く怯え、顔を隠している。そしてミーシャの隣にはエレーナがいた。


「ミーシャ、少し待って」

「なんですか?」


 エレーナは光の銃を軽く上から押さえた。しかしミーシャは銃口を下げない。さらにはエレーナの顔を見ずに言葉を返した。冷たいまなざしは罪人へと向け続ける。


「酌量の余地はあると思うの。違和感もあるし、ね?」


 ミーシャが銃口を下げた。チラリとエレーナを見て答える。


「はぁ、いつも通りですね。好きにしてください」

「ありがとう、ミーシャ」


 エレーナは怯え切った罪人の元へ向かった。優しい表情で罪人へと語りかける。


「大丈夫よ。殺しはしないわ。今回の事件は不可抗力の可能性があるの。そしたら、あなたは少しの罰だけで済む。信じて」


 エレーナがかがんで罪人へ手を伸ばす。しかし、ミーシャの視点からでは、エレーナが壁となり罪人の姿が見えない。そういう理由もあって、ミーシャは周囲を警戒していた。


「うわぁ!」


 静寂の間を破ったのは猛々しい声を荒げた罪人。ミーシャは視線を戻すが、エレーナは動かない。そして妙に鉄の匂いがした。


「エレーナ?」


 返事がない。エレーナも罪人も動かない。ミーシャは少し横へずれて、事態を理解した。


 エレーナが刺されていた。罪人によって。そして血がぽたぽたと落ちているのが見えた。転瞬の間、執行人ミーシャは光の銃を構え、エレーナごと罪人を打ち抜いた。


 小鳥の首を締めたかのような銃声が鳴る。エレーナには胸の中心辺りがぽっかりと空けられ、罪人は頭部を失くしていた。


「…………はぁ、甘えるからそうなる」


  二つの死体を放置し、ミーシャはまたどこかへと消えた。

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