第7話 爆速赤ずきん

 『A・Z』は爆速で『G・M』の居住地を目指していた。迅速に『お見舞い』をG・Mの許に移送するのが今回のミッションであったが、空気の中に何かを感じ取り、ふと足を停めた。

「どうやら『寄り道』する必要がありそうね」

A・Zはそう呟き、手早く『お花』を準備した。

 ほどなくG・Mに到着すると同時に、A・Zは異変を察知した。やれやれ、何の面白みもないほどに、予想通りだ。


 『お花』を携えたA・Zが事態を制圧するのには、6秒も必要なかった。言うまでもなく『お花』とはマシンガンの隠語である。それ自身が花なのではなく、標的の肉体に花を咲かせる。

「あぁ怖かった」呟きが聞こえ、床下からG・Mが顔を覗かせる。

「無事だったわね。まぁ心配してないけど」

「ちょっとは心配しなさいよ、私ももうトシなんだから」

「どの口が(笑)相変わらずのビッグマウス」

「『お見舞い』は?」

「傷一つついていない筈だけど、一応確認する?」

「その必要も無さそうね」

G・Mは『お見舞い』を無造作に小脇に抱え、A・Zを一瞥すると速やかに現地を後にした。


「『ハンター』! 見てるんでしょ」

「やれやれ、全部お見通しかよ」ライフルを持った男が、のっそりと入ってくる。

「ちょっとは手伝いなさいよね」

「『お花』持ったアンタにそんなん必要ねぇだろ。それにそれは俺の仕事じゃねぇ」

「ったく、じゃ、あとは任せたわよ」

「承知」


 ハンターと呼ばれた男は、手慣れた手つきで犠牲者の腹を裂き、そこに石を詰め込むと、再び縫い合わせた。

「これで水に浮いてくることもねぇ。全身くまなくお魚さんのゴハンさ」

「ったく、よくそんな残酷なこと考えつくわね?」

「アンタに言われたかねぇや」


「ねえ」珍しく、ミッション完了後も現地を去ろうとしないA・Zが、ハンターに問いかけた。「私が最近こんなキャラになりがちなのって、やっぱ『ヴァンパイア』シリーズのせいなのかな?」

「さぁな。ただ、物語なんてのは語り手の都合で、どんどん変容してくモンだ。聞いたところによるとアンタ、元々はその頭巾だって被ってなかったそうじゃねぇか」

「へー、そうなんだ」大した興味もなさげにA・Zは応じる。

「そこに【寄り道は良くない】とか【男は狼みたいなもの】とか、教訓じみたメッセージが絡まって、なおさら変容を……っととと」

話しながらハンターが顔を挙げると、A・Zは目の前に佇んでいた。全裸で。

「あらら、そんなとこだけ『原作通り』なのかよ(笑)」

「しょうがないじゃん。テーマが【爆速】なんだから。急がなきゃ」

「なるほどね」



このあと滅茶苦茶セックスした。



後ほどG・Mがその痕跡を認め、自分ももう少し残っときゃよかった……と地団駄を踏むことになるのだが、それはまた別の話。

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