第四章 オフ会のお誘い

第24話 鉱石堀り

 今日は、鉱石を掘るミッションに挑む。


 せっかくもらったボス報酬を、ここで使うぞ。


「さて、【幸福のツルハシ】の効果は……」


 鉱山ダンジョンの壁に、ツルハシを突き立てた。


「説明のとおりだ。時間がかかるなあ」


 ウサギの足をかたどったというだけあって、思っていたように掘りにくい。


 とはいえ、レアアイテム率が上がるなら、仕方ないか。


「出てきたよ、ビビ」


『大量ニャー』 


 さっそく【赤い鉄】を手に入れた。結構な数が必要だって聞いていたけど、想定量の倍以上は取れてしまったか?


「あとは【黒曜石】だけど……」


 黒曜石が採れるポイントは、もっと下の階である。

 

『ケントご主人、スケルトンだニャー』


 地下二階へ降りると、ガイコツ集団、【スケルトン】が現れた。それぞれ剣や斧、弓矢などで武装している。


 スケルトンってたしか本来は、ドラゴンの爪とか歯を土に埋めると生まれてくる怪物だったっけ。人間がベースではないんだよなあ。


 大トカゲといい、すべて【ワイバーン】の手先なんだろう。


 しかし、運営が調整にミスって、ゲームバランスが崩れたらしい。

 そのため、今までスケルトンはダンジョン内に出てこなかった。


 ようやく、調整がうまくいったようだね。


「スケルトン、強いね」

 

『斬っても斬っても、ワラワラ出てくるニャー』


【ライトニング・スピア】で連続斬りをしても、続々とガイコツたちが群れをなしてくる。

 

【スケルトンの灰】は、必要以上に採れるからいいけど。


『多分、親玉がいて、そいつがスケルトンを復活させているニャー』


「よし、ボクがザコモンスターの注意を引き付けるから、ビビはボスをお願い」


『OKニャー』


 本来なら、立場が逆なんだろう。


 おそらく、ペットにスケルトンとじゃれてもらって、飼い主が親玉にとどめを刺すといった感じで。

 愛犬とかだったら、スケルトンの骨にしゃぶりついていることだろう。


 でも、ボクたちパーティの主役は、ビビである。

 

 ボクたちがここまで連携できるのは、【以心伝心】のアビリティがあるからだ。

 

「いくぞ、スケルトン軍団。【ヘイトコントロール】!」


 ヘイト……つまり敵対心を煽って、ボクに注意を向けさせるスキルである。

 闘牛士の持っている、赤いマントみたいなものかな?

 

 スケルトンたちが、ボクを敵視し始めた。


「おりゃー」


【シールドプレス】で、ある程度のスケルトンを壁に押し付けて、やっつける。


 別のスケルトン集団が、ビビを狙っていた。

 

「こっちにも。シールドプレス!」

 

 壁にスケルトンの群れを押し込んで、そのままダメージを与える。

 

「よし。ビビ、そっちは大丈夫?」


『見つけたニャ!』


 群れの一番後ろに、魔導書を持ったスケルトンが。スケルトンの魔法使いだろうか。


 魔法使いが、ビビに氷の矢を放つ。


「【ソニック・カバー】!」


 相手の攻撃に合わせて、ボクはビビを瞬時にかばう。


 ソニック・カバーは、瞬間移動して対象をかばうスキルだ。かなりの魔力を消費するため、連発はできない。ここぞというときのために使う。


 氷の矢を、盾で受け止めた。しかし、ボクはなんともない。やはり、トワさんの手で強化されたシールドと、エンブレム【騎士団の証】の効果だろう。ギルドからもらった魔法防御アップのエンブレムが、もう役に立つとは。


『ありゃ。勝っちゃったニャー』


「え、どうしたの?」


 魔導書に、氷の矢が突き刺さっている。

 

 そのせいで、スケルトンは倒されたのか。


「シールドが魔法を跳ね返すなんて、書いてないけど?」


『これも、お試し効果かニャー?』


 ギルドが気を利かせて、多少の魔法反射効果を持たせてくれたのかな?


 でも、ありがたい。


【スケルトンの灰】も、手に入った。


「あとは、【黒曜石】だね」


しかし、どこを掘っても黒曜石は見当たらない。全部、赤い鉄だ。

 幸福のツルハシ効果でも、ゲットできないなんて。

 

『……ケントご主人、【ここ掘れニャンニャン】ニャー」


 暗闇に引き込まれるように、ビビがダンジョンの奥へ進んでいく。

 

 久々に、ビビのユニークスキルが発動したようだ。


 ボス部屋の真裏に、到着する。


「ここを掘ればいいの?」


『そうみたいニャー』


 ビビが言うなら、信じよう。


 ツルハシを使って、壁を掘る。


「出た! 黒曜石だ!」


 ボス部屋の真後ろのスペースが、黒曜石のポイントだったのか。


「これで、トワさんの商業レベルも上がるね」


 鍛冶屋であるトワさんは、特定のミッションをクリアすることで、発展させることができる。


「今日はトワさん、ログインしていないから、ボクたちも落ちよう」


『ケントご主人、おやすみニャー』


 トワさんにミッションアイテムを渡すのは、明日ということで。


『待つニャー。ケントご主人』


 ログアウトの直前、ビビがボクを呼び止めた。


「どうしたの、ビビ?」


 慌てて、ログアウトの表示を消す。


『例の話、対策はしなくていいのかニャー?』


 ビビから指摘されて、ボクはこの間あった出来事を思い出す。


 見知らぬ女性がビビの存在を知っていたことを、ボクはビビに話していた。

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