最強のVRMMOプレイヤーは、ウチの飼い猫でした ~ボクだけペットの言葉がわかる~

椎名富比路@ツクールゲーム原案コン大賞

第一章 飼い猫とVRMMOをしていたら、うちのコがしゃべりだした

第1話 飼い猫とMMO

 * * ペットといっしょに冒険しよう! * * 


 世界初「ペットを連れて歩ける、VR・MMO・RPG」、『ペット・ラン・ファクトリー』にお越しいただき、ありがとうございます!


 PペットRランFファクトリーは、RPGをペットといっしょに楽しめるよう、我が社が開発しました。

 これで思う存分、ゲームに夢中できます。

 もう、ペットちゃんを現実世界でお留守番させる必要はありません!

 ペットちゃんも、さみしい気持ちにさせませんよ!


 ちなみに本ゲームは、【セミダイブ】式です。

 

 フルダイブとは違って、ペットちゃんのことを気にしながら冒険ができます。

 異世界と現実を、いつでも行き来できますよ。

 これで、ゲームに熱中しすぎてペットちゃんたちのお食事やおトイレの心配しなくても大丈夫!

 お世話をしつつ、異世界の冒険を楽しんでください!


 ペットのアバターも、キャラメイクできますよ!


 * *  ◆ ◆ ◆ * *  


 

 ついに買ったぞ、PRF!


 四畳半の狭小アパートに、癒し空間ができ上がった。


 愛猫ビビも、心なしか喜んでいるっぽい。


 ビビは最近うちにお迎えした、保護猫だ。

 灰色サビ猫で、美人さんだから、ビビと名付けた。

 サビ猫って不人気って聞くけど、めちゃかわいいじゃないか。性格もおとなしく、飼いやすい。

 前の飼い主は「汚らしい」といって、すぐに保健所送りにしちゃったらしい。


 なんだそりゃ。そんな性格の人に、猫を飼う資格はないよ。


 ここにお迎えしたときも、すぐに馴染んだ。今でも一緒に寝ている。


「よーし、ビビ。首輪をつけてやるぞー」


 ボクはビビの首輪を、PRF用のものに取り替える。


 PRFは、ペット専用首輪のセンサーと、飼い主専用のヘッドギアが連動している。

 どういう原理かわからないけど、動物と人間で同じ異世界の光景を目にすることができるらしい。

 

 

 ビビといっしょに、ゲームの中にダイブする。


 なにもない空間に、「キャラメイクをしてください」との文字が浮かぶ。

 

「ボクの名前は、ケント、と」


 ありふれた名前だ。しかしボクは田益たます 健人けんとっていうんだから仕方がない。どこにでもある名前だから、リアル割れの心配もないだろう。


 続いて種族を選ぶ。


 まずは標準的な【ヒューマン】族。能力でなんでもできるが器用貧乏だ。


【エルフ】は、魔法に長けた種族である。

 ダークエルフになると、魔法攻撃の火力にボーナスが付くが、回復魔法の効果は半分に。

 

【ドワーフ】は、筋肉に物を言わせる種族だ。信仰心の高い種族で、回復職も得意だ。

 しかしダーク属性を付与すると、聖なる恩恵をほとんど受けられなくなる。そのかわり、筋力は二倍に。


 ペット限定で、【獣人】族というのがある。他の種族の属性を少し付与して、見た目は二足歩行の動物になる。

「自分自身が動物になりたい」という、ケモナーもいるらしい。が、収集がつかなくなるからと、ペット限定になった。

 

「ボクの種族は、ヒューマンで」


 今のボクには、ゲーム仲間なんていない。


 リアルやバーチャルにいた友だちは、みんな結婚してしまった。


 ボクはよく言えば独身貴族、悪く言えばぼっちの三〇代一人暮らしだ。


 だから、ビビのような不人気のコに惹かれたんだろうなと、ボクは自己分析している。


「何が起きるかわからないから、尖った属性にはしないでおこう」


 職種もオーソドックスに、戦士タイプにした。いざとなったら回復職も取って、回復寄りの聖騎士になろう。


「さて、ビビのキャラメイクを、と……ええええええええ!?」


 なんか、ソッコーでキャラができ上がってるんですけど!?


 ビビが選んだのは、魔法特化型の獣人である。ガンガン魔法攻撃を撃って、前線を上げていくタイプだ。


 このゲームのコンセプトは比較的ユルく、ガチガチの攻略は求められていない。どちらかというと、「ペットと異世界を散歩することにシフトしている。農業や鍛冶、素材の採集などがメインだ。

 モンスター退治だって、そこまでガッツリ強くする必要はない。


 なのにビビが選んだ種族は、ダークエルフ混血獣人である。


「強さを求める、ガッツリ戦闘職かー」


 これでレイピアでも装備していたら、『長靴をはいた猫』そのものだ。


「魔法剣士で、名前も『ビビ』のまま。すごいな」


 アバターのデザインも、完璧じゃないか。いくらゲーム内コンソールがお触り自由だからって、ここまで美人さんのアバターを作り上げるなんて。本能でやっているのかな?


 うちのコが、こんなに天才児だったとは。


 ゲーム内コンソールにある決定ボタンを押して、ボクとビビのアバターが完成した。


 ボクはやや細マッチョな、戦士タイプである。防御面を重視したデザインのキャラに。初期装備は、剣と盾がメインとなる。


 ビビの方は、魔法特化型アバターである。種族は獣人とダークエルフの混血で、魔法の火力が高いが回復系は弱い。

 全身が灰色の毛並を持った、ちっこい二足歩行ネコ族だ。サビが味わい深くて、いい感じにかっこいい! サビネコって、少しの調節次第でみすぼらしくなるのに、ここまで美人さんに作り上げた。


「ステータスは」


【筋力】:物理攻撃・防御力に影響が出る。

【魔力】:魔法効果に影響が出る。攻撃・回復・補助すべて。

【精神力】:回復効果に影響が出る。デバフ耐性などにも。

【敏捷性】:命中、回避率に影響が出る。

 


 ボクは筋力と精神力をメインに振った。


 ビビは、魔力と敏捷性に。


「ボクのメインスキルは、【カバーリング】か」


 盾を構えて、味方への攻撃を引き受ける。


「で、ビビのメインスキルは……すごい。【ライトニングスピア】か」


 雷の槍で、素早く相手を攻撃する、雷属性の上位魔法だ。枝分かれして、敵を追尾する効果もある。

 

 魔法特化系だから、上位のスキルをもらえたみたい。殺意が高いな、ビビは。


「よし、じゃ、異世界へ行こう!」


 ペットといっしょに、冒険へ向かう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る