巨大生物と背中に住む人間と共に過ごす日常
のんびりした緑
巨大生物の日常
夜明けの光が徐々に巨大生物の背中を染める。
背中に住む生物が静かに目を覚ます時間。
そして私もまた光に反応し、目を覚ます。
今日もまた、共に生きる一日が始まる。
と言っても、すぐに起きる訳じゃなく、このまましばらく待つ。長く生きた事によって得た知識や知恵がある。それによって行きついた行動として、今はまだ起き上がらない。
これにはちゃんと理由がある。背中に住む生物を考えてだ。
振り払えば良いのではと思うものはほぼいない。なぜなら背中に住む生物は私に益をもたらすからである。長い年月を共に過ごしてきてる相棒と言っても良い。
背中に住まわせるのを良しとしてる理由だが、私が小さい頃に地表に出た際、そのまま背中に住んでた生物を持ち上げてしまったのがある。
それなら振り払えば良いが、当時地表に出た私は弱かったが故に、色々と私を狙う存在に襲われた過去がある。しかし背中に持ち上げてしまった生物が私を狙う存在と戦い、守ってくれた。それによって動かなくなった個体がいるにも関わらずに、背中に住む存在は私を守り続けてくれた。だから背中に住む生物を無下にしない。
起き上がらない理由についてだが、そろそろ背中に住む生物が私のご飯を用意してくれる。と、思っていたら用意ができたのか、宙に浮かぶものにご飯を乗せてもってきてくれた。口元の近くに置くのを終わるまで待ち、宙に戻るのを確認した後、私はそれをありがたくいただく。これが日々の活力になるからだ。
しかし、このご飯はどうやって毎回用意できてるのか少し気になる。私の背中に居続ける以上、何かしらしてるのだろうと思う。たまに背中痛いし。とはいえ、日々私のご飯を用意してくれてる。たまに背中が痛いぐらいなら許してるというのは間違いない。
食べ終えた事で私はゆっくりと背中が平行を維持しながら立ち上がる。これはかつて考え無しに起き上がった事で、背中にいる生物が落ちていくのが見えたからだ。何かを広げて着地していたようだが。
だがそれ以来、私は平行にゆっくりと立ち上がる様にした。背中の生物を失うのは惜しい。
そして今日は暑くなる時期に備えて、水浴び場に向けてゆっくりと歩を進める。私の一歩は周りの物を薙ぎ払う。小さい頃、私を襲った存在も、今では踏み潰せる程には成長している。
ふいに背中から音が聞こえた。これは長年一緒にいた事で分かる。止まってほしいそうだ。何かあったのだろうか?
しかし背中にいる生物が止まって欲しいのなら止まろう。聞こえる音にも違いがあり、これは立ったまま止まってほしい音だ。
立ったままというのは存外疲れる。だが次の音が出るまでは待とう。
そう思って立ち続けていたら、また音がなった。今度は歩いても大丈夫という音だ。
ならば私は歩を進めよう。
光が上になった辺りでまた音が鳴る。この音はご飯だから座って待って欲しい音だ。
ならばゆっくりと、背中を平行に維持しながら座り込む。
そして待っていたら宙に浮かぶものでご飯を用意してくれた。それをありがたくいただく。
歩を進めると周りに広がる物体が目に入るが、それが何かは分からない。ただ、背中に住む生物が音を鳴らすので、私は立ち止まり、その物体たちをしばらく見つめた。私にはわからないが、それらが背中に住む生物にとっては重要そうだ。彼らのために立ち止まることは、私の日常の一部になっている。とはいえ、何度も止まるのは鬱陶しいので、たまに無視することもあるが、それも私の日常の一部だ。
再び音が鳴ったので歩み始める。暑さに備えて。
しかし光が弱くなってきた事で再び音が鳴る。ご飯の音と、ここで寝る音だ。
たしかに光がどんどん弱くなっているので少し視界が悪い。その中を歩くのは好ましくない。ならご飯を食べるのは容易ではないのではと思うが、そこは背中に住む生物が光を照らす。さすがにその光は弱いが、ご飯を食べる分には問題ない。
ちなみに興味本位で光ってる物を口に入れて痛い思いをしたので口にしない。背中にいた生物も予想外だったのか混乱していたし。
さて寝る場合、普通なら周囲を警戒して安眠等早々にできないが、私の場合は背中にいる生物が私の周囲に点々と光を展開して見張っている。明るくされるが、淡い光ならむしろ眠気を誘う。
なので私は寝る。後は任せたぞ、背中にいる生物。
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