第4話 ~江戸っ子娘は勝負する~
「さて、あそこが奴らのアジトの一つ目よ。そこに奴がいるかは知らないけれど、部下なら情報を持っているはず、なるべく見つからないように進むわよ」
「今回は錦さんの予知のサポートがありません、いつもより慎重に行きましょう」
「せやな、まぁヤバかったらわしの能力で文字通り一旦
一方錦は鈴男のバイクで予知の内容を伝えようと、高速道路を走らせているところであった。
「もうすぐですね」
「えぇ、怪しいほど順調だわ」
「見張りもあんまおらへんし、快適やな」
「そうやって油断してると―――敵だわ」
三人がアジトへ向かって歩いていると、コンテナ置き場の影からセーラー服を着た一人の少女が現れた。
「てえへんだてえへんだぁ!どうやらあーしのてりとりぃに姑息なバケモンが入り込んだみてぇだ!」
「嬢ちゃん、ここはちょいとばかし穏便に行こうや」
「あーしも可愛い子犬ちゃんたちなら穏便に行ってたって話だぜ。 だろ ~けど 見て見りゃそいつぁ そいつぁ 恐ろしいバケモンばかりとくりゃあ、おっぱじめんのは鬼退治のみよ!」
「物騒な小娘ね」
「ほほっお前さんエキドナの子だなぁ?」
少女は腰の刀を奈々に接近しながら抜き斬ったが、奈々はそれを華麗に避けた。
「危ないですよ!」
「こっちは吸血鬼、銀の何かを持って
「うぉっ!」
そして次なる標的とばかりに横薙ぎを放つと、ジョンソンは間一髪で避けたが、続けざまに鈴男に刀が当たる、だが斬られた箇所から煙が出るのみで、ダメージには至らなかった。
「ニヤリ。あーしの刀が当たったね?煙々羅……ゲットだぜ」
少女がそう言い放つと、鈴男は意識を失ったかのようにその場に倒れた。
「鈴男!……アンタ今、何をした?」
「なーに、ちっと 眠ってもらった だけなんだなぁ~このかまいたちの
やはり少女の足の速さと剣捌きを警戒して、二人は中々近づけずにいると少女は話し終わり満足したのか再度戦闘態勢に入る。
「中々やっかいですね」
「ジョンソン、鈴男を運んでもらえるかしら?私少しムカつきまして、ここはひとつ任せてもらえる?」
少女の飄々とした態度が癪に障ったのか、奈々はジョンソンに鈴男を安全なところに運ぶ指示を出すと、すぐに背中に翼を生やし少女に向かって羽ばたいた。
地面スレスレを滑空して少女の足を掬おうとする奈々の魂胆に反して、少女はコンテナの上に飛びあがってそれを回避すると、持っていた剣を逆手に持つと何かを唱えた。
「これは!鈴男の能力?」
「そうそう、視界不良の中で先のように鷹のように鋭く飛べるかい?」
少女の剣から止めどなく溢れる白く濃淡な煙は、瞬く間に港を包み込んだ。
「あまり舐めないでちょうだい!」
奈々は背中に生えた大きな翼を使い煙を吹き飛ばすが、それを凌駕するほどの煙の密度のせいで奈々が作り出した煙の密室は更なる煙で塞がり、即座に壁となって奈々の視界を阻んだ。
「さ、あーしの剣の力とくと思い知るがいい !アンタの翼の持久力と、あーしの妖力、どっちが上か勝負だ!」
奈々は少女の提案した勝負には乗らずに、この煙の領域から出ようと上へ羽ばたいた。
その音を聞き、少女は先程のようにニヤリと口角を上げると、煙を出すのを止めた。
煙は既に天空にまで届いており、風の影響で少しは視界が晴れているが、依然として上下左右も分からないほどに煙が満ちていた。
「この煙、一体どこまで続いているの?」
そして空へ飛びあがったのが裏目に出たのか、奈々は自分がどの方向に飛んでいるのかが分からなくなり、煙の鳥かごの中でグルグルと旋回しているのに気付いていなかった。
「なははっあのエキドナの子、上手いことあーしの術中にはまってらぁ」
そして少女はと言うと、コンテナの淵に座り奈々が飛ぶ様子を下から眺めていた。
一方ジョンソンは鈴男を安全な場所まで移動させ、素早くコンテナまで戻ると、モクモクと立ち上る煙を見て少し入るのを迷うが、吸血鬼は赤外線をも見通す目を有しているため、それに集中していればジョンソンにとっては煙は無いも同然だった。
「けどよ、このサーマルスコープってのは煙の中でも良く見えるなぁ、そいであーしはとことんツイてるぜ。煙々羅の能力を
「外した!?」
「あーしの山勘舐めたらあかん!てんから影討ちとは卑怯なり、いやこの場合
ジョンソンは目を使い少女の傍まで静かに這い寄り鋭い手刀を繰り出すが、少女の山勘によって間一髪避けられてしまった。
「そうかいそうかい、そういえば吸血鬼もコイツみたいな能力持ってたのをすぅっかり忘れてた。てんから、ツイてるのはあーしだけじゃなかったってわけか」
「次は私が相手だ、江戸っ子娘!」
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