第2話 黒単の恐怖! 驚異の0ターンキル!
「レイちゃん、大変!」
「昨日の今日でどうしたの、アオイちゃん?」
「実はあの後ショップにくる子供たちの間でタイプ0が流行り出しちゃって…」
「そんな!? あの禁断のフォーマットが!?」
2人が店につくと子供たちは不毛な遊びをしていた… 。
「じゃんけんポン! はい勝ち~~~~」
「いったい何が起こっているの?」
レイの問いにアオイが答える。
「
「でもあれは私が倒し方のお手本を見せたはず…!」
「それがショップにはナメクジ対策の《不動の力線》の在庫がなくて……先攻を取れるかをじゃんけんで決めるだけのゲームになるか、そうでなければ、なめくじをもってなくて負けるかしかないっていう惨状なの!」
「どうして…? せっかく
「ふうん、この店ね。斜九寺を倒した子がいるっていうのは」
カードショップに似つかわしくないゴスロリを着た少女が店に入ってきた。
「なんだお前、見かけない顔だな。この店は初めてか?」
ミドリがショップに入ってきたゴスロリ少女に話しかける。
「ええ。わたくしはタイプ0が遊べると聞いて来ましたの」
「ならアタシが相手になってやるよ…!」
決闘!
「まずは先手後手の決定。じゃんけんでいいか?」
「お好きにどうぞ」
じゃんけん ポン !
「アタシの先攻な! マリガンチェック…当然キープ」
「わたくしも当然キープですわ」
「それじゃあ先攻の私のター…「お待ちなさい!」
「なに!?」
「第1ターンの前、ゲーム開始時に! わたくしは手札からカードを公開しますわ」
「あっ! あれは《ドロスの大長》アルか!? 」
「知っているのか、ミンメイ!?」
《ドロスの大長》
あなたはあなたのゲーム開始時の手札にあるこのカードを公開してもよい。
そうした場合、最初のアップキープの開始時に、各対戦相手は3点のライフを失い、その後、あなたはこれにより失われたライフの総量に等しい点数のライフを得る。
「最初のアップキープ。つまり先攻であるあなたのターンの初めに……3点のライフを奪い、わたくしのものにしますわ」
「そんな! アタシはじゃんけんに勝って先攻になったはずだ!? それよりも早くだと…!」
大長の公開でギャラリーがざわつく。
「ライフを3点回復されたら相手のライフは23点…」
「7体のナメクジじゃあワンキルできない!」
「でも待てよ。なめくじのコストは次のターン終了時までに払えばいい…。」
「つまり次のターンの戦闘でもなめくじで攻撃すれば…」
「そうか! まだミドリちゃんにも勝ち目はある!」
「がんばれー! ミドリちゃん!」
「何を勘違いしていますの?」
ゴスロリの少女はぴしゃりと言い放った。
「まだ、わたくしの『ゲーム開始時』は終了していませんわ。わたくしの残りの手札を全て公開!」
「初期手札7枚、全て同じカードだと…!?」
「えっと3点のライフドレインが7枚だから…21点…!?」
「それってつまり…初期ライフ20点よりも…!」
「なめくじで攻撃する暇もなく、これでアタシの敗けだと…?」
「レイちゃん、あれ…」
「あれこそまさにタイプ0におけるメタゲームの一角を担っていた最強候補デッキのひとつ。60枚の《ドロスの大長》」
「あなたが
「タイプ0での戦いを振られて応じないなんて私にはできない…! 受けて立つよ!」
決闘!
「先手後手はダイス目の大きい方が選択でいい?」
「よろしくてよ」
コロコロ… コロコロ…
「ダイスは私の勝ちね。後攻を選ぶわ」
「後攻…?」
クロミは怪訝そうに眉を挙げた。
「まあいいですの。ですがあなたのターンは訪れませんわ…。マリガンチェック…当然キープ」
「ゲームはやってみないと…わからないよ! マリガンチェック…マリガンで…」
「ふん、得意の《不動の力線》を探しても無駄ですのよ。あれは場に並べるカードを制限するだけのカードですもの。場に出ることなく手札から効果を使える《ドロスの大長》には関係ありませんわ」
「マリガン…よしっ! 3枚でキープ!」
「それでは始めましょうか。ゲーム開始時に…《ドロスの大長》を7枚公開! これで終わりですの!」
「それに対応して私もゲーム開始時に! 手札からこのカードを公開する!」
(白いカード枠…まさか白の力線カード…?)
「ふっ。たしかに白の力線、《神聖の力線》はプレイヤーを対象に取る直接ダメージを妨害するための常套手段ですわ。しかし《ドロスの大長》によるライフ吸収は、対象に取らない効果。その妨害をルール上かいくぐれる…残念ですわね。わたくしの勝ちですわ!」
「私が公開するのは白力線じゃないよ。公開するのは《神の導き》!」
「なんですの、そのカード!? 初めて見るカードですわ!?」
「このカードは私の初期ライフを26点にしてゲームを始める…!」
「26点…!」
「あのゴスロリのコンボは合計で21点のライフを奪う。つまりレイのライフが5点残るってことか……!」
「でもライフは5点だけ……《ドロスの大長》を場に出して1回でも攻撃されたらレイちゃんの敗け…」
「いいえ、それはできませんわ……わたくしのデッキは《ドロスの大長》だけを60枚入れたデッキ…《ドロスの大長》を普通に場に出すための基本土地すらありませんの…」
「ええ!? なんでそんな偏った構築を!?」
「いや、でもあの子はそうするしかないんだ! もしデッキに《ドロスの大長》以外のカードを入れて、それを最初に引いてしまうと手札の大長は6枚…18点吸収ではゲームに勝てない。オールインするしかないんだ」
「このまま続ける?」
レイの問いかけにクロミは首を横に振る。
「いいえ、わたくしの負けは明らかですわね…。ここで投了します。このわたくしが負けるなんて……」
「ハラハラする楽しい決闘だったよ。でもこんどはあなたと普通にマジックが遊びたいな…」
「…よくってよ! 次は わたくしのメインデッキ【ノワール】でお相手しますわ!」
~~~
「まさかクロミまで負けるとはな…」
「四天王も残り2人だけか…」
「次は俺が行かせてもらう。お前が行くとすべてが終わっちまうからな…」
「いいだろう…」
(レイ…はたして おまえは…いつまでタイプ0を楽しめるかな…?)
~~~
次回予告
60枚のドロスの大長の使い手も攻略したレイ!
しかし四天王はまだ2人いる。
果たしてレイはいつまでタイプ0を「楽しむ」ことができるのか…
終わりの時は確実に迫ってきている。
そしてついにデッキ全てが同じカードではないプレイヤーが…!
次回、超高速MTG対戦TYPE/Zero
第三話 「うねる右腕!3分の1の類人猿」
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